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2014年12月15日20:42

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「馬々と人間たち」 「グッバイ・アンド・ハロー」

7日は「馬々と人間たち」
    「グッバイ・アンド・ハロー」を観に行きました。





「馬々と人間たち」 ’13 (アイスランド,独,ノルウェー)


監督・脚本:ベネディクト・エルリングソン
製作:フリズリク・ソール・フリズリクソン
m:イングヴァル・E・シグルズソン
f :シャーロッテ・ボーヴィング

’13 サンセバスチャン国際映画祭 ニューディレクターズ部門 最優秀作品賞
’13 東京国際映画祭 最優秀監督賞
’13 タリン・ブラックナイツ映画祭 最優秀作品賞,撮影賞,国際批評家連盟賞


予告編に遭遇しなかったし チラシも直前にしか出なかったし…で
何の予備知識もなく観たら…あー 驚いた!
ものすごく面白くて上等な映画じゃないか!
何語で喋っているのか判らないから どこの国なのかもピンと来ないまま
画面を見つめるしかないのだけれど、
イノセントな馬の瞳が眺め渡す人間たちの営みが綴られると
性や生や死を経巡る人間たちのエピソードは
愚かで 滑稽で 恥ずかしくて だから愛しくて、
かの国で演出家・俳優として活躍する人であるらしい
ベネディクト・エルリングソン監督は
小型で穏やかで美しく愛らしいアイスランド馬を愛でるのと全く同じに
人間を見つめていて、
容赦ない、しかし茶目っ気溢れる観察眼が切り取る人間たちの営みに
惜しみなく拍手を送りたくなるのだ。
まずもって俳優たちが老若男女を問わず乗馬が達者である―だけでなく
馬の世話や扱いに熟練している―ように見えるのに驚くのだが、
アイスランドでは都市部の人間でも馬を所有し
休日には乗馬を楽しむのが当たり前で、それは贅沢でも何でもない―
との監督の言になるほど〜と納得したり。
映画の登場人物にしても監督にしても
馬が愛しくてならない気持ちが溢れ出していて、
登場人物たちにとっては生活を維持する経済動物ではあるのだけれど
家畜―というよりずっと心的距離感が近いなんじゃないか?
そいうアイスランド馬LOVE♡な映画は、
いったいどうやって撮影したんだ…?みたいなシーンが次々に登場するのだが、
チラシの図の人が騎乗している牝馬に交尾する牡馬も
ロシア船を追って主人を載せたまま海を泳ぐ馬も
一列横隊に繋がれて進む7頭の馬たちも
どれも偽りなくホンモノで、
途中からこの荒涼とした地勢はアイスランドだな…とあたりがつく
丘陵地帯に展開するコミュニティの人々のドラマが
エピソードごとに馬の瞳に見つめられて始まる構成に、
ああ、
ヒトも馬も等しくこの地勢を生きる生物であるのだな…と、
ならば
ヒトの身勝手も意地の張り合いも嫉妬も欲望も愛も執心も
もの言わぬ馬の瞳が受容してくれるのだろう…と、
祝祭の日のラストの賑わいににっこりしてしまうのだ。
優れて面白い人間批評映画である。
佳作。





「グッバイ・アンド・ハロー 父からの贈りもの」 ’12 (米)


監督・脚本:ダニエル・アルグラント
m:ベン・バッジリー,ベン・ローゼンフィールド,ノーバート・レオ・バッツ
f :イモージェン・ブーツ


1997年30歳で事故死したミュージシャン ジェフ・バックリィが
その才能を発見される契機となったコンサートの前後が描かれる。
音楽の教養がない思惟太は
ジェフ・バックリィがどんなにすごい人なのか…さっぱりなのだけれど、
映画は、
こちらもまた28歳で夭折したミュージシャンである
父ティム・バックリィをジェフが受容する物語になっていて、
生涯で2度しか会ったことがない自分を棄てた父―
という私怨を抱えたジェフが
父の仲間のミュージシャンと父の楽曲を演奏する過程で
父というミュージシャンと邂逅し
父を受け入れる余地を自らの内に発見する―
そういう構造になっている。
そういう構造である…ことが解かる以外は
特に感動的!とか面白い!というわけではないところが残念なところで、
エピソードにしても 演奏シーンにしても
決して悪いわけではないのだけれど
有名人の父を持つ無名の青年の心的風景が鮮やかに描かれている…
という感じではなくて、
アメリカ映画にしては随分ぼんやりした描き方だなぁ…
と思ったりする。
スタッフの女性アリーとの親密も、
恋愛なのか (この映画では)不在の母性の代替物なのか 創造のミューズにしたいのか
判然としなくて、
ジェフのナイーヴな内面を掬っていると言えばそうなのだけど
果たしてそれが、ラストの
父ティムと赤ん坊のジェフのエピソードで消化しきれているのか…?というと、
全然ダメなんじゃないか…と感じられて
(エピソードとしては一番分かりやすくて感動的だと思うよ!)
ソフトな口当たりでまずい仕上がりではないけれども、
今一つ胸に堪えるものがないなぁ…。
それって
ミュージシャンを顕彰する映画としてはどうなんだろう??
と思ったのだった。
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