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2014年11月25日23:43

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「紙の月」

「紙の月」 ’14


監督:吉田大八 脚本:早船歌江子 原作:角田光代
m:池松壮亮,田辺誠一,近藤芳正,石橋蓮司
f :宮沢りえ,小林聡美,大島優子


吉田大八の新作。
平凡な主婦が起こした巨額横領事件の顚末を描く角田光代の原作は
『八日目の蝉』同様NHKでドラマ化されていて、
原田知世 主演のそれと比較すると“映画”がよく見晴らせる。
高校時代の同級生2人の現在と対照することで
40代を迎える中年女性 梅澤梨花の環境が浮上するドラマと違い、映画は
アラフォーの女性の現在―バブルの狂騒を満喫したはずの
女性たちの結婚生活の周辺の事情を描こうとはせず、
梨花の不倫と 横領に嵌って行く経緯をサスペンス様に描いていて、
タガが外れて転落する女 梨花と対照するのは
先輩の独身ベテラン銀行員 隅より子であり、
“堕ちる女”と“そうでない女”の差異を問う演出になっている。
原作にはない隅より子という 正しさで自らを鎧い
同時にその限界を知ってもいる女―との直接対決が
映画の一番の見どころになっている。
だからその直後の展開はファンタジーとなって
タイへの逃亡も高校時代の寄付相手である少年との邂逅も
巨額横領事件のリアリティを失っている。
それが悪いわけではなくて、
主演 宮沢りえを見せる女性映画の仕上がりとしては成功していると思う。
「したんでしょ、私には想像もつかないようなこと。」と隅が言う
“想像もつかないようなこと”が
ぼんやりとした主婦の幸福を精彩ある充実の日常に変えたのだが、
その虚飾をその初めの日から梨花は知っていたのだ。
彼女は若い愛人と初めて寝た朝帰りの日に“紙の月”を見ていたのだから…。
“甘美な嘘”もそれがいつか壊れることも知りながら
金がもたらす万能感の快楽を手放せなくなる梨花が
愛されている幻想の中でどんどん美しくなって行くのを
宮沢りえがスリリングに演じる。
アラフォー女性がふと感じる現在の空虚を描く―のではなく
梨花という個人が“罪に堕ちるシステム”こそが現在の危うさだ―
映画は そう言っているように思えた。
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