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2014年09月12日18:11

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夏目漱石の『こころ』はボーイズラブで読め!

BSプレミアムでやっていた『漱石・こころの秘密』が面白かったです。言ってしまえば、BSマンガ夜話の文学版みたいなもので、作家の高橋源一郎氏や、関川氏や、女優の鈴木杏ちゃんが、『こころ』について思ったコトを色々言い合う番組だったんですが。脳科学者の中野先生(よね?)の説が面白かったり。脳科学で見る“こころ”。

この小説。現在、揺れに揺れてる朝日新聞で、再度連載中だったりもするんですが。
多くの人が言うように、『こころ』は“変な小説”です。結果、誰にも感情移入出来ないで終わりません?(笑) 私はそうだったんですが。中学生の時に初めて読み、「変な小説だなぁ〜。てか、先生の遺書長すぎじゃね?」と思い、20歳くらいの時に読んでも、やっぱり「変な小説だな〜。てか、先生って、本当にお嬢さんのコト好きだった?先生、Kのコト好きだったんじゃね?」と思い、30代の時に読み返しても「変な小説だなぁ〜。てか、私は、完全に先生のコト好きだったよね?」と思ったこの小説。

知らない人の為に、ざっくり説明すると。
冒頭“私”って人が出て来るんですよ。で、この私って人は、海水浴場で、とある男性と出会う。この男性を私は『先生』と呼ぶんですが。この先生は、綺麗な奥さんがいるのに、何処か幸せそうじゃなくて、私に、「恋は罪悪ですよ、君。」なんて言ったりする。どうやら、先生にはとある秘密があるらしい。

で、第2章は、私と両親って言う章で、田舎の父親だかが、病気になって、実家に帰るって話が突然挿入される。(この構成も妙チキリンだと思うんだケド)

で、最後の先生と遺書という章が1番長くて、これは、語り手が、『私』から『先生』にバトンタッチされ、先生の過去の罪科が書かれている。
先生という人物は、かつて親友が好きだった女性に、同じように恋をして、その親友(作中では、Kというイニシャルで表される)を先生は裏切り、親友は自殺してしまった・・という話だった。それをずっと悔いていた先生は、自殺する決心を固め、私に遺書を送った・・・という。

これ、粗筋書いても、やっぱり変な話だと思う。

これ、連載当初は、『先生の遺書』っていうタイトルだったんですね。何故“こころ”っていうタイトルに変えたんだろう?人の心は怖いってコトなのか?

まず、私に送った先生の遺書が長すぎる!普通、こんな長い遺書を貰ったら、ドン引きます。私は、ドン引かないんだケド。しかも、先生は、「あなただから本当のことを言うのだ。」と言い、奥さんには、絶対に内緒にしておいてくれって言うんですよ。・・・お嬢さんの立場は?
しかも、先生は“君の心が離れて行くのは仕方ない。”とか、書きやがる。恋人に書いてんじゃないんだから・・・とも思うのだが、まぁ、「先生」って慕われていたから、こういう書き方なのかな?と思いもする。

で。これ、作家の島田雅彦氏も言っていて、私も、この説が1番納得行くんですが、先生って、本当に、お嬢さんのコト好きだったの?てか、先生って、Kのコト好きじゃね?という点。
前述通り、Kは親友なんですが。先生は、Kのコトを、尊敬しつつも、何処かで嫉妬してるんですね。Kは、言ってしまえば、クソ真面目な青年で、「精神的向上心がない奴は、莫迦だ。」が口癖。
前述の番組で、「Kみたいな奴が1番オウム(真理教)に入りやすい。」と言っていたのに、爆笑してしまったんだが、確かにね。
家では、帝大の医学部だかに入ることを希望されていたのに、Kは、自分の意志で文学部に入り、哲学や宗教学に没頭。家からの援助は断たれている。

で、先生って、完全受け身・・というか、他人が欲しいもの・・・というか、Kが欲しいものを欲しがる・・という部分が見受けられる。お嬢さんのコトも、確かに、最初「お嬢さん良いな。」とは思っていたが、何せ、先生は完全受け身型。自分からアクションを起こさない。で、先生がKを、お嬢さん宅に連れて来て、それで、Kがお嬢さんを好きになって、Kが「私は、お嬢さんのコトが好きだ。」って先生に秘密を打ち明けた次の日に、先生は、お嬢さんのお母さん(作中は奥さんと呼ばれる)に突然、「お嬢さんを、私に下さい。是非ください。」と言って、ゲットしちゃう。
で、Kは、それを知り、夜には自殺。Kの遺書は簡素なもので、『向上心がない私は、生きてても無駄だから死にます』みたいな内容なんだ。

これ。先生は、お嬢さんのコトをちょっと好きだったかも知れないが、Kがアクション起こさなかったら、先生は、絶対お嬢さんに告白してねえよな。
「Kが告白した!Kが欲しがったものだ!俺も欲しい!絶対欲しい!」っていう感情だよね、先生の感情って。アブね〜・・・・。
なので、嫉妬しながら、尊敬し、その複雑な感情がちょっと歪んだ恋愛感情になっちゃったパターンなんじゃねえかな・・・と思えてならない。

前述の番組で言っていたが、Kが死んだと分かった時、きっと先生は、ほくそ笑んだだろう・・という説に、私も賛同。
これね「ざまあみろ。」という感情もあったと思うのです。と、同時に、「あぁ、これで、Kは一生俺のもんだ。Kが欲しがった、お嬢さんも頂いちゃったしね!」って言う感情から、ほくそ笑んだような気もするの。そう考えたら、先生・・・怖くね?ちょっとサイコホラーが入ってる小説にも読める。

そして、先生と私の関係性も確かにオカシイ。
前述の番組で言われるまで気づかなかったのだが、先生と私って、海水浴場で出会ってるんですよ。関川氏だったかな・・が「裸見てるんですよ?(私は)裸見て興味持ってる。」って、確かにな!と。
ここで、1番、現代人の感覚に近いのは、私だと思う。(これは、良く言われるコトだが)
1番、押せ押せな人だもんね。先生に秘密があると知り「どんな秘密なんですか!先生教えてください!」ってガンガン行く人。
前述もしたが、先生の遺書の『君のこころが離れて行くのも仕方ない。』って不思議な言葉だよね。
で。私は、遺書をもらって、病気の親放って、先生の元に行っちゃうんだよね・・・と、今まで思っていたのだが。
この番組の新説。『私はお嬢さん(先生の奥さん)に会いに行ったんじゃないか?』説に、なるほど!とも思う。
ようは、先生は、お嬢さんを託せる相手を探していた。で、私と出会い話ていくうちに、「この男なら、お嬢さんを託せる。」と思い、先生は自殺を決行。その後、しずさん(先生の奥さん)と私は共に暮した・・・という説。
この危ねえ説も凄く好きだった。でも、先生の性格からしたらありそうでね・・・。

これは、完全にボーイズラブで読め!な私の説なのだが。
結果、先生って、Kが好きだったから、お嬢さん・・しずさんのコトって、完全に愛せなかったと思うんだ。愛せると思って結婚したら「あれ?何か違う・・・」って気づいたと。だから、しずさんとの間に子供も出来ないし。で、先生は「あ、俺、Kのコト好きだったのか・・・。じゃあ、Kの元に行きたい(死にたい)けど、そうすると、しずに申し訳なくて、それも出来ないよな・・・。」とずっと思っていたと。そこに、飛んで火にいる夏の虫な、私が現れ、「じゃあ、しずは、この青年(私)に託して、俺は、Kの元に行くは。」と思ったと。
そんな気がするんです。

で、私が思うに。お嬢さん・・・しずさんは、それ知ってたんじゃないかと。
考えてみたら、お嬢さんも変なんだ。訳知り顔で、「子供でもおれば良いんでしょうケド。」とか、私に言ってみたりする。
そもそも、男性2人、自殺に追い込んだ魔性の女でもありますからね、しずさん。
しずさんは、「先生は、私に心は向いてないはね。」って分かってる。何処かで「愚かな人」と、同情していたのかも知れない。
それでも先生と暮してる・・・って考えたら、しずさんも怖い!
これ、サイコミステリじゃん!って思える。

他にも謎は、あって、前述の番組見て、なるほど!と思った一つに、先生と遺書の冒頭の「・・・・・・」部分。冒頭「・・・・・」とあるってコトは、何か書かれていたものを、意識的に“私”が削除しましたよ・・というコトを表すと。では、一体、その「・・・・・・」の部分には、何が書かれていたのかと?
前述のような「俺、ホントは、Kって言う親友の男が好きだったみたいなんだ。」って書かれてたんじゃないかなぁ〜とも思え、「君にしずを託す。」と書かれていたんじゃないかな・・・とも思え、“私”に対しての、熱い恋心が書いてあったのかも知れぬ。
色々深読み出来る、この「・・・・・・・」。

まぁ、他にも、この小説は、漱石の乃木大将への批判が入っていたり(漱石は、乃木大将を、英雄扱いする当時の風潮が気に入らなかったらしい)、色々するようなんですが。

そんなこんなで、『こころ』はボーイズラブで読め!なのです。

冗談みたいに読めるかも知れませんが。1度、そういう目線で読んでみて。それだと、納得出来る描写とかが結構あるから。

そして、思うのは。人の内面を描くのが、やはり“近代文学”の命題だったんだな・・・とも思います。

画像。こういう新説のBL風味の“こころ”のドラマCD&携帯コミックなるものがあるらしい。あ、平川さんが声を担当してる。先生役が森川氏かな?
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