18時の開場前に余裕をもって入店すると、のやにはまだそれほど人は集まっておらず、小松崎御夫妻と香聡庵のみかさんが同じテーブルに就いておられました。健さんとは3週間ほど前に函館と青森でお会いし、数時間前ごう内科クリニックでお別れしたばかりです。最近の方がよく会っている気がするといったお言葉をちょうだいしました。この時みかさんから、版木をもとに1枚1枚手をかけて刷られたナカムラちゃんさんらの労作である11月の香聡庵マルカートライブのフライヤーをいただいたのではなかったかと思います。他のテーブルにはすがさん夫妻もいらしゃっていました。
現地集合のS氏が現れる否やくらいのタイミングで前日のお言葉どおりこの日のお手伝いをされていたエミさんらの呼び込みが始まりました。前年(2012年)までは予約順に名前が呼ばれていたのですが、個人情報に配慮してか、まず最初の10分間に予約者を受付するという方式に変わっていました。私はすぐに反応して前の方に並びましたが、来たばかりのS氏は着席位置にはあまりこだわりませんので、列の少し後ろになりました。吉田夫妻には2名だが連れは少し後ろに…とお断りして私は最前列中央付近に陣取りましたが、S氏は私から見て右斜め後方、みかさんのすぐ前といった辺りに着席していました。
順番はまずギターと鈴による吉良さんソロからだったと思います。「同じ海の色」、wonderful life、「点灯夫」といったしっとり系の曲を記憶しています。
林太郎さんと菅野さんのラノッホでは、イェーツの詩の朗読つきの曲がありました。
次いできら☆りんだったか、キラリンカンのお三方だったかで、「銀の笛」、そしてタイトルは覚えていませんが、ロンドンの地下鉄掘りに従事するアイルランド系の住民に関連した力強い歌。後者は前日のJAMUSICAでは披露されなかった曲です。林太郎さんからはケルティックタイガーという言葉が御紹介された記憶ですが、財政破綻する前に急成長していた時期のアイルランド経済がそのように呼ばれていたというのは報道等で目にするところです。
開演前から私の目の前の床に置かれていた紙片に曲目が書かれていたようでした。前半が終わって休憩に入る際でしたか、丸見えじゃないですかと林太郎さんが吉良さんにおっしゃって隠されました。その際、林太郎さんが私にちらっと視線を投げたようてもあったのですが、楽しみが減るので私は敢えて目をそらして見ないようにしていたのです。
後半に入ってからだったと思いますが、前日に続き「水の踊り」や「二月の丘」、も披露されました。JAMUSICAの時にも書きましたが、アイリッシュフィドルを聴き慣れているとビブラートがかえって新鮮に感じられる上、健さんがお書きになっていたところではダブルストップというらしき菅野さんの和音の奏法は、独りなのに何人もで演奏しているような豪華な響きでした。
そしてヴァイオリンもすごいのですが、吉良さんと同じように片足に装着された鈴も的確でした。あれだけ激しくヴァイオリンを弾きながらだと余計なところで鳴らないようにするのも大変と思われるのに、ヴォーカルパートのI Love you only now〜との歌詞の辺りでしたか、きちんとアクセントになっていました。
「二月の丘」では、前夜の経験から、失われたバウロンの替わりになればと最初から手で拍子を取って支援しようと志して心の準備をしていたのですが、林太郎さんの手元にはバウロンの姿がありました。ロケット姉妹を思わせるマークが入っていると思ったら、やはり扇柳さんゆかりのものとの御紹介でした。ただし貸してくれたのは別の友人であるとのことでしたが、打ち上げの席でそれが吉田さんであることを知りました。扇柳さんがお譲りくださったものだったようです。また、林太郎さんからは歌詞中の「ティールナ・ノーグ」との言葉がゲール語で常若の国、桃源郷の意味であり、「二月の丘」は自分がアイルランドにのめり込むきっかけになった曲であるとの御紹介もありました。吉良さんからは、ティールナ・ノーグの意味について、そうだったのか知らなかったといった御発言もあり、それを聞いた林太郎さんは時間を返してなどともおっしゃっていました。
その辺りで、ホテルの朝食バイキングのスープカレーが何ともいえないソース味だったため、口直しにジャックに行かれたといったお話もありました。打ち上げの席で聞いたところによると、そこでやはりスープカレーを食しにいらっしゃっていたK村氏と遭遇したとのことだったそうです。この話題に前後してだったか、菅野さんが豪華客船のクルーズに帯同されての演奏経験をお話しされていたような記憶もあります。
「水のルネス」に続き、吉良さんの胃腸薬？というお言葉に林太郎さんがいや便秘薬とお返事されて始まったのが。「蝶（zephyrus）」でした。打上げで私は大塚製薬と言ってしまいましたが、正しくはタケダ漢方便秘薬のCMに使われた曲です。ザバダックは大塚家具のCM曲もやっているため間違えました。もう20年以上前のことで、私もリアルタイムで見聞きしていたわけではなく、アルバムWelcome to Zabadakのスリーブに書かれていたことからの知識でした。
「蝶（zephyrus）」から間髪入れずに「桜」という流れは林太郎さんには思い入れがあったようです。中野サンプラザでしたか、まだアルバム『桜』が発表される前のライブで聴いて魅了されたとのことで、感無量であったと後日お書きになっていました。
そしてharvest rain、前夜に続いて菅野さんのヴァイオリンによるイントロが新たな味わいとなった「夢を見る方法」。かつてジッピーホールで間奏のジグを聴かせてくださった操さんは健さんと客席にいらっしゃるのでした。
アンコール前のラスト寸前だったと思いますが、吉良さんは「ノスタルジックなワルツ」を演ろうとしたのか、林太郎さんからそれはカンテレの人がいないとできませんと止められて、おお、そうかということで始まったのはEasy Goingでした。
前夜とは逆にアンコールが「遠い音楽」でした。JAMUSICAと同様にループステーションを使って場内にギターや吉良さんのコーラスが繰り返される中（吉良さんはギターのホールにお口を近づけてコーラスされていました。）、皆さんが退場し終わった瞬間、照明が入ってループが最新インストアルバムのBGMに切り替えられました。これは松川さんの功績だったようです。そこでエミさんが間髪入れずに終演のアナウンスを入れたのもばっちり決まっていました。打ち上げの席上では、私がやっていいのかなと迷ったとおっしゃっていましたが、事前の打合せなしに空気を読んでその場でされたことだったそうです。松川さんともども絶賛されていました（続く）。
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