「殺生っていうのはね、殺して生かすことなんですよ。」
北岡さんのその言葉が心に残る。
色川の人5人で、日高川町のジビエ工房紀州に猪の解体を見学に行った。
前々から、猪が捕まったら見学に行くという話があった。
一昨日、檻に猪がかかったそうだ。そこで今日、その解体を見せてもらうことになった。
檻に捕獲された猪は我々が近づくと興奮して暴れだした。
鉄砲を持った北岡さんが檻に近づく。彼は猟師で、このジビエ工房紀州の責任者の方だ。
猪が落ち着くのを待って、狙いを定める。2発の銃弾で猪は動かなくなった。
檻から猪を出して、ナイフで止めを刺す。
血抜きをする。
猪を解体施設に運ぶ。
水できれいに洗う。
皮をきれいに剥いでいく。
内臓を取り出す。
関節で分割する。
骨に沿ってきれいに肉をはずしていく。
肉を小分けする。
見事な手さばきだ。
初めは、気持ち悪くなるのではないかと心配していた。
血を見るのは苦手だ。
だが、初めに血を抜いているので、ほとんど血は出ない。
内臓もきれいだ。
思わず見入ってしまった。
生きていた猪が2時間後にはきれいな肉になっていた。
殺生というのは、殺して生かすこと。
だから無駄にしてはいけない。
食べる肉を扱うのだから、きれいに扱わないといけない。
北岡さんは何度も繰り返した。
動物はみな、他の命を頂いて生きている。
だが、現実には店屋に並んだ肉や魚を食べるときは、それが元々は生き物だったということが見えてこない。
単なる食べ物としか見ない。
今日は、改めて命を頂いて生きるということを実感させてもらった。
「今度、上手にさばけるようになったら、どっちが速くきれいにさばけるか競争しようじゃないか。」
北岡さんは色川の若きハンターに期待しているようだった。
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