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2013年09月11日16:56

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小松崎茂展

『小松崎茂展』に行きました。チケットは、毎度お馴染み新聞屋さんからの貰い物。

↓小松崎茂展のHP
http://www.fujibi.or.jp/exhibitions/profile-of-exhibitions.html?exhibit_id=5201307051

フォト

小松崎茂。名前は良く知らなくとも、絵を見るときっと分かるはず。「あぁ!あの人か!」と。男の子や特撮ファンは特に分かるはず。プラモデルの箱のイラストが有名です。他にも、少年雑誌の口絵イラストや、鉛筆のパッケージの絵やら仕事数は膨大。
そして、私ゃ知らなかったのだが、特撮のメカデザインや、ヒーローキャラクターのデザインまでやっていた。轟天号のデザイン案があって吃驚したのもつかの間、その下には、『ガス人間』のデザイン案が!轟天号のデザインはともかく(乗り物なので)、ガス人間のデザインって何だ(笑)。ちゃんと設定きってました。「ガスになって消える」って書いてあった(笑)。

空想いっぱい、夢いっぱい。小松崎にはどうも、SF(サイエンス・フィクション)という言葉が合いません。勝手な思い込みだと思うのですが、『空想科学』という、このちょっと古式ゆかしい言い方の方が合っているような気がするのです。車もバイクも空を飛び、地球を6時間で移動できる宇宙船があり、チューブの中を、電車が走る未来都市は、どうも、SFではなく、空想科学と言いたくなる。おそらく、懐かしさがあるからなのだと思うんだが。

小松崎茂氏は、1915年〜2001年の人。かなり長生きしたんだね。新聞の連載小説の挿絵画家としてデビューして、戦記物や、メカデザインや、正義ヒーローのデザインや、SFイラストなどを手掛けていた。20歳で小林秀恒に師事したらしいが、その前の16歳で、日本画家の堀田秀叢に師事しており、日本画を描いていた。小林が描いた日本画も展示してあった。『二羽の雀』とタイトルが付いた、その絵は、純日本画で、2羽の雀が、竹にとまっている絵だった。シンプルで美しい絵。小さい雀が可愛い。所謂、小松崎氏が描く絵とはかけ離れていて、吃驚した。
日本画の素養があったなんて知らなかった。
ただ、日本画の画題(花鳥風月)より、飛行機や、船を描く方が好きだったので、そんなものを描いては、先生に注意されていたらしい(^_^;)。今だったら、戦艦や、飛行機を描いても、現代日本画で、ありだったのにねぇ。
あと、初期のデッサンなどもあったが、この人、元々絵が上手いんだと思う。まぁ、そうじゃなきゃ、あんなに緻密に戦艦やら戦闘機やら描けないよね。
本来は、画家になりたかったらしいのだが、家族を養う為、挿絵画家(商業画家)になったみたい。

最初のコーナーには、絵物語があった。大正〜昭和にかけて流行した、美麗な挿絵があって、文章が載ってるものを言うのだが。この頃、小松崎は大忙しで、自宅玄関に『正月はやめた』と貼り紙をして、年始挨拶を断っていたそうな。正月もずっと仕事してたんだね・・・。

絵物語の絵は、小松崎の軍艦や飛行機の絵を見慣れていた私には、新鮮だった。『神州竜巻城』では、美少年剣士がポーズをとっていた。小松崎氏、美少年を描くのも上手かったんだね。
原画なので、写植の貼りこみも、そのまま見られて、文字のルビを一文字づつ切って(当然、凄く小さい。9級くらいか?)貼ってあり、その写植屋の職人技に痺れる、元印刷屋企画営業担当の私。もう、小松崎、関係ねえじゃねえか!(笑)

30歳で終戦を迎えるのだが、戦意高揚の絵を描いて戦争に加担したことを大変悔いていたそうな(それは、最期の絵でも分かるが、それは後ほど)。と、同時に、敗戦で元気のない日本を、絵で元気づけたいと思ったそうな。

『空中の魔人』という少年倶楽部の絵物語の挿絵。ふんどし姿で、全身網タイツで、変な羽付けた男性が描かれていたのだが、これ、何だろう?何か、悪者が同じような恰好をしていたので、ヒーローが、この姿に化けて潜入したんだろうか?ふんどしに網タイツで!?

印刷物資料で、『キングゴリラ』ってのがあったのだが、コレ、ど〜〜〜みても、キングコングだったよ?ビルにつかまって飛行機攻撃してたし。ひょっとして・・・文章担当者さん、パクった?(^_^;) 絵は、迫力があって凄かったが。あと、大佛次郎の『鞍馬天狗』の表紙絵もあった。ええ〜、そんなモノまで描いてたの?大佛次郎と、小松崎茂が結びつかないっ。

小松崎は、口絵の仕事も沢山やっている。『人間の知恵の歴史』という、おそらく、本のシリーズなんだろう・・があったのだが。
『クレーンをまわせ!今から1900年前のローマ建築』と『聖地をめざして 十字軍の出発』が、お気に入り。前者は、目の前に、ローマ風の建物・・・神殿だろうか・・があって、馬に乗った武将が、それを見ている。横には木で出来た大きなクレーン。右のクレーンには石がかかっており、人々がそれを持ち上げている。武将は現場監督なのかな?
後者は、大きな帆船が3隻描かれ、その帆船の手前には、船の甲板が見える。船の上には、兵士と少年兵士。十字軍の旗が、ひらめいている。

原画と、印刷物を並べて展示したものもあり、面白かったな。比較が出来るので、どんな風に印刷されるのか分かるし、原画の元の色も分かる(退色などはしてるかもだが)。
『呪いをよぶ黒ねこ』ってのが凄いのよ。「のろいにみちたヨーロッパの妖怪城」ってサブタイトルも何かスゲエ。壁に人々がぶら下がっていて、探検に来た人が、それを見つけた!って絵らしい。ぶらさがってる女の人の頭の上には黒猫が〜・・・。

で、ここからは、小松崎茂って言うとコレでしょう!って絵がズラズラ出て来て安心する(笑)し、楽しい。

『空とぶ学校バス』はエアジェットでスクールバスが空を飛んでいた。エアポリスが乗ってる不思議な台っぽいモノは何だろう?やはり空を飛んでいるのだが。

コレ、私のお気に入り。『世界大終末 地球大脱出』。少年マガジンの口絵だったらしいのだが。ノアの方舟未来版です。ロケットの機体にARK OF SPASEと書いてある。未來のノアの方舟は、ロケットなんだね。そのロケットに象やキリンやサイが乗っている。でも、人間は乗れないらしい。銃を構えた兵隊のような人達に、銃を突きつけられている人類。きっと、選ばれなかった人類なのだろう。後ろには大きな月も出ている。当時の子供達は、こういうモノで、オカルトを学ぶのさっ。

未来の乗り物は、基本皆空を飛ぶ。オートバイ、エアカー(車)は空を飛び、ジャンプする車もある。“そうどうしきひこうき”ってのが不思議だった。胴体が2つ並んで、その間を、でっかい渡り廊下みたいなモノで繋げた飛行機。その渡り廊下っぽいところは、ガラス張りで、サロンになってるらしく、プールがあったり、映画が見られたりするらしい。これ・・・実際は飛ばないよね?って野暮なコトは言っちゃダメなんだな。空想科学の世界では、これらの乗り物は空を飛ぶ。

コレを書いてる今、何か記憶が蘇りました。おそらく、コレ、小松崎氏の絵だ。やはり未来の乗り物で、私は学習雑誌に載っていたその未来の乗り物の展開図のようなモノを夢中で見ています。未来の電車もあったと思う。何だろう?付録だろうか?

プラモデルの箱も展示されていた。サンダーバードだぁ〜!これ、小松崎氏が描いてたんだ!モグラタンクや、ペネロープ号(車)もあるよ。勿論、サンダーバード1号〜5号もありました。モグラタンクはドリル付き。男の子にとって、ドリルは夢らしい。
あと、ゲッターロボ&グレートマジンガ―のプラモ販促用ポスターもあった。コレも小松崎氏が描いてたんだね。

小松崎氏は、戦記物が得意。昭和40年代に戦記物ブームが起きるらしいのだが。
『戦艦 大和』。原画だった。カレンダー用の原画らしい。コレ、綺麗だったぁ〜。アクリル絵の具で描かれた、勇壮な戦艦大和。戦艦の細かさも凄いが、波が砕ける描写の細かさよ。
『戦艦ミズーリ/キングジョージ五世』。コレは、“帝国連合戦隊−世界の軍艦シリーズ”ってのの原画らしい。コレも恰好良い。
上空には戦闘機。海上には戦艦。砲台の細かさや、旗の描写の様子まで克明です。
やっぱり、私は、このコーナーが1番面白かったかな。零戦などの戦闘機も、B29爆撃機も、本当に上手い!そして、恰好良く描く。零戦など、飛んでる音が聞こえてきそうだった。

そんな中、前述通り、純粋な日本画『二羽の雀』があり、驚く。日本画らしい、線の省略。空間のとり方。同じ人が描いたと思えん(^_^;)。

あと、やはり楽しいSFイラストコーナー。膨大にあるよね、コレは。『メカニック・ファンタジー』の原画が多かったが、コレ、雑誌ですかね?今でいう、ヲタっぽい人が読む雑誌かな?
『地下都市』は、地底にジオフロントのようなものがある。高いビル、高速道路、空を見ると、どうやら、光る天井らしい。そこから光が降り注いでいた。

『宇宙コロニー』の絵は沢山あった。ドーナツ型のコロニー。コレ、実際も、こんな感じですよね?宇宙ステーションて。濃紺の宇宙に浮いたコロニー。

『レスキュー・タワー』って絵があったのだが。どうやら、火事の時にレスキューする建物形の消防車のようなモノらしいのだが。火災のビルに、アーム状の水を噴射する部分から、水を出しながら、完全にビルを破壊していた(^_^;)。コレ、レスキューになっているのか?ビルにアームがめり込んでて、完全にビル破壊してたぞ?コレ、人がいた場合を考えろ!人々は逃げていたが。

『ハイウェイ救命船』。ハイウェイが水浸しなのだが、コレは、津波か何かでこうなったのか、ビルが建っているから、海上ハイウェイなのか?救命ボートには、細かく人がみっちり描かれている。何人?1000人は余裕でいたなよな・・・。デカイ救命船らしい。

他にも、月ロボット工場や、6時間で世界をまわる宇宙船のような乗り物や、海底工業都市や、魚を大量に捕るマリンフーズ採取船やら、うん、やっぱりSFはSFかもだけど、どこかに空想科学の匂いがあるよ。科学を無心で信じられていた時代って感じもする。

このコーナーには、前述した、轟天号のデザイン案や、ガス人間のデザイン案。マーカライトファープ・・・は、県立地球防衛軍!こちら、『地球防衛軍』は、マーカライトジャイロのデザイン案。ミステリアンの衣装デザイン(これも『地球防衛軍』のものだったんだ!)。
私は、特撮ヲタではないけれど、特撮ヲタなら、涙ちょちょぎれそうなモノが沢山あった。
“月面探検車のデザイン案”は、最早、デザインというより、設計図だった。内部も細かく描かれていた。『ヘルメットはここにはかけない』と指示してあったり、ベッドの位置なども決めてあった。

ガス人間のデザイン案。サラリーマンのような人物なのだが、ガスになって消える。着てるものは残る。着る物は崩れ落ちると、指示があったが、それ、必要?とも思った。まぁ、書いておかないと、着る物ごと、消されちゃう可能性もあるのか。

そんな小松崎だが、浅草や、銀座周辺のスケッチをずっと描いていたらしく、細かい筆致で描かれた『昭和十一年 東京駅』や『千住おばけ煙突』の絵があったりした。こちらは、柔らかい水彩の色調。嘘があってはいけないと、窓の桟まで1本1本メモしたらしい。
東京駅の赤レンガが美しかったな。あと、『昭和十一年 浅草映画街(浅草六区)』の様子も良かった。幟に、看板、人のにぎわい。電気街の文字。今は六区には、映画館ないんだよ・・・。
自宅火災で、かなり絵が焼失してしまったらしいのだが、思い出しては描いていたそうです。

あと、お弟子さん達の絵もあった。
吃驚だったのは、上田信氏の『ガンダム』や『太陽の牙ダグラム』や『聖戦士ダンバイン』のイラスト原画。コレ、特別に描いたのか、何かの原画なのか。『ガンダム シャアの出撃』では、赤いザクが、ポーズを決めていた。中にシャアが乗っているのだろう。
あと、ガンダムとア・バオア・クーが戦っていた。上田氏も、プラモのパッケージの絵で有名だと思う。

小松崎氏が最後に描いたのは、雑誌プレボーイの企画だったらしいのだが、『二十一世紀の恐怖』。核戦争後の地球だった。おそらく、前述通り、小松崎氏は、戦意高揚の絵を描いて戦争に加担してしまったのを、最後の方まで引きずるんだろうね。で、どうにも平和になってない世を見て、「おかしくね?」って思ったのだろう・・・と思う。
そんな心情も綴ってあった。

遺品も展示してあり、パレットや筆の他に、工作・・なのかな?紙で作った建物があったりした。

面白い展示だったのですが、何故か常設展示を見てから、こちらに誘導されるようになっており、ジョルジュ・ド・ラトゥールや、ベリーニ、ヴェロネーゼ、フラゴナール、ブーシェ、クラーナハ、ブーグローなどなど、西洋絵画を見てから小松崎って言う、不思議な構成になっていた(^_^;)。
しかし、富士美は、常設展示が凄いよね。他にも、マネやモネやゴッホなどもあり、音声ガイドは無料で貸してくれる。コレは有難い。
ヴァン・ダイクの描く婦人像の手は美しいねぇ。あと、やっぱり可愛い、ルブランの描く貴婦人。お肌トゥルントゥルン。

お土産は、何故か、以前富士美でやったポーランド展の絵葉書やら、グッズを買う。プライスダウンしていたので・・・。絵葉書50円だったのだもの・・・。

小松崎茂展は、9月29日までです。空想科学好きな方、SF好きな方、特撮マニア、ヲタの人などなど、そんな人が行くと楽しいと思います。あと、子供も楽しいかな。

そういや、1人、どヲタのオッサンが来ていたな。職員にべらべら喋りかけていたり、ずっと独り言を言っていたり、ちょっと電波さんだったのかな?
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