幸い予約者の呼び込みが終わってからでも会場にはゆとりがあり、私はドリンクを置くことのできるテーブルの傍らに着席でき、S氏は並んでくれないときの定番の位置である最後列付近に着きました。K村氏などは既に最前列におられ流石でした。
開演時刻となり、まずは小松優衣子さんが位置に就かれました。
後で小松さんも私にどこかで見覚えがあるようなことをおっしゃってくださったので、東京のライブ会場等で同席していたことがあったのかもしれませんが、意識としては殆ど初対面です。林太郎さんがクラリスのように可憐などとお書きになっていたのは誇張ではないと思いました。
場内を余裕のように見える表情でぐるりと見渡してにこにこと笑むそのお姿は大物ぶりを感じさせました。
間を置いて林太郎さんも着席され、まずはユイタウロスのコーナーでした。
半年近くが経過し、具体的な曲名などは残念ながらかなり記憶が薄れてしまいましたが、林太郎さんのハープと小松さんのコンサーテイーナで、正統的なスコティッシュやアイリッシュトラッドのナンバーが演じられたと思います。
憧れの女性を賛美するような内容の詞の邦訳を林太郎さんが大真面目に朗読された曲がありました。林太郎さんは笑いたければ笑えばいいさといった態度で、打ち上げではエミさんも笑っていいのかどうか迷ったなどとおっしゃっていましたが、私にはおかしいとは思われず普通に聞けたのです。
林太郎さんと小松さんはセントパトリックデイ関係の催しが御縁で意気投合され、ぜひ一緒に何かやろうということでユイタウロスが始まったとの御紹介もありました。
続いては吉良さんお一人がギターと足首に取り付けた鈴だけでザバダックの名曲を披露されるギタスズのコーナーです。
覚えているのはまず「水の踊り」、そして「かしはばやしの夜」。「かしはばやしの夜」では、「何とうしゃうは」と「何々メタル」の間の「ホー！」というようなO夫妻の御主人のかけ声が例年と比べて控えめであったような気がします。
「マーブルスカイ」では、口笛や「もう」、「今」、「空」、「さえ」等の相の手の箇所だったでしょうか、最前列のK村氏の隣席の男性客の音量が大きめなのが気になった記憶があります。
K村氏が歌詞を口ずさんでおられた曲もあり、やはり熱心なファンなのだなあと思いました。
吉良さんが、リクエスト的なものは…と水を向けられ、客席からは2曲ほど挙がり、1曲は失念してしまいましたが、もう1曲は「ブリザードミュージック」でした。これは定番の盛り上がり曲ですから、これをやると終わっちゃうからねと吉良さんは最後に回して、もう一山と落涙必至のWonderful Lifeなどを挟んでおられました。ちょうど1年前、豊田さんと梅田さんの演奏を聴く直前に新宿タワーレコードで聴いた「この空で逢えるよう」も、この日か翌日の留萌だったかに聴いた記憶です。
次いで吉良さんと林太郎さんのきら☆りんコーナーとなりました(ここからの曲目は林太郎さんがブログにお書きになっているのを参考にさせていただきました。)。
「休まない翼」は吉良さんが歌詞を間違えたところでいったん中断し、林太郎さんが、いやあ、事件が起きましたねとおっしゃいました。本当は「ひとつの事件」が来る曲順だったそうなのです。「ひとつの事件」からやり直す際に、林太郎さんが「休まない翼」は古くから知られた人気曲だが、「ひとつの事件」は比較的最近の曲というように紹介され、収録のアルバム『ひと』はおととしでしたかと吉良さんに振ると、吉良さんは、震災があったこともあって時間が経ったように感じられるが、実はまだ去年なのだと口にされました。
この後のツアースケジュールを告知される際、最終日は小松さんはいないが今日手伝ってくれている長崎さんが加わることをＰＲされ、女子が入れ替わりますというようにおっしゃっていたと思います。
14日の野良窯のことを紹介する際、健さんがいいところですぼくも演ったことがありますなどと言い添えた記憶がありますので、ツアースケジュール紹介は、あるいは健さんが加わってからだったでしょうか。それに対し林太郎さんはぼくの方が先だったなどと返しておられ、後にツィッター上でライブ中だったのに大人気ないなどと続きのやり取りをされていたようです。
そして小松さんが戻って、きら☆りん☆ユイの吉良知彦×ユイタウロスです。
まずは何と言っても「チグリスとユーフラテスの岸辺」。出だしのイントロから小松さんのホイッスルで始まります。そう言えばこの曲とルーツを同じくする「銀河鉄道の夜」(吉良知彦名義の『賢治の幻燈』所収)も同様のテイストの笛の音で始まっていたのでした。
この曲はもともとはザバダック最初期の2ndミニアルバム『銀の三角』に収録されていたのです。次いで2枚のミニアルバムを再編集した1stフルアルバム『Water Garden』 にも(エミさんが『Water Garden』がザバダックとの出会いであったとブログにお書きになっていました。)。
1980年代後半のことですから、現役大学生の小松さんはまだ生まれる前のことです。私もリアルタイムで聴いてはいません。原曲発表時には生まれてもいなかった年端もいかぬ娘さんがホイッスルで往年の名曲に新たな息吹を吹き込んでいる…というところが大感銘でした。
そして、次の「よごしん」こと「夜毎、神話がたどりつくところ」から３曲には健さんが加わりました。健さんがザバダックの曲を共演されるのはおそらく2005年のCelts meet zabadak(ジッピーホール〜カーリートレイン)以来です。
健さんを御紹介するに当たり、林太郎さんが、少年時代からずっとザバダックが好きで、そのルーツにある音楽ということでアイリッシュを知り健さんと出会い…といったお話をされたと思います（この点について終演後、この日客席にいらしていた操さんと、私も林太郎さんと同じですといった会話を交わしました。)。健さんはアイルランドフェアの売り子で来てたんだよななどと返しておられました。
「よごしん」のイントロはまたしても小松さんの、今度はコンサーテイーナで始まりました。
ザバダックが好きになり始めた頃に買い求めたライブビデオ(当時レーザーディスクが同時発売はされたようですが、未だDVD等にはなっていません。)では、この曲のイントロで上野さんのアコーディオンの手元がアップになっていました。そのイントロに年端もいかぬ娘さんがコンサーテイーナで新たな息吹を吹き込んでいる…またしても大感銘です。上野さんのアコーディオンで奏でられていたあのイントロのメロディに小松さんのコンサーテイーナがぴたりとはまっていました。
「夢を見る方法」では、アルバムでは金子飛鳥さんが弾いていたあの間奏を、ジッピーホールでは操さんが見事に再現されていたことを思い出します。
アンコール前のラストは定番のEasy Goingでした。あのタンタカタンタンというイントロは、これまできら☆りんでは林太郎さんがハープでやっていたと思うのですが、先述した往年のライブビデオなどでは藤井珠緒さんのマリンバが効いていましたから、健さんのダルシマーにも親近性があると思うのです。ただ、この日の4人編成だとダルシマーは音量的に苦しかったかもしれません。
アンコールは「光降る朝」でしっとりと終わりました(続く)。
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