雨の中を傘を差して二人はやってきた。
AさんとHちゃんだ。
拍手に迎えられて二人が小屋のなかに入場した。
綺麗に片付けられたSさんの作業小屋には皆が持ち寄った料理が並ぶ。
Hちゃんは6年前に大阪から一人で色川に入ってきた。
行動的で積極的で個性的。
みんなに好かれてはいたが、なかなかいいご縁にめぐり合えなかった。
若い男の子に聞くと、彼女は一人でなんでも出来ちゃう感じで、弱さに欠けるらしい。
まあ、確かにいわゆる女性らしさがあまりない。
そんなHちゃんだが、3年くらい前からここでの一人暮らしに飽きてきたと言っていた。
誰かいい人はいないかしらと思っていたのだ。
そして素敵なご縁にめぐり合えた。
Hちゃんは32歳、Aさんは49歳だが年よりずっと若く見える。
元々年上がいいと言っていたHちゃんにはぴったりだ。
知り合って1年足らずで一緒になった。
でも、HちゃんがAさんと結婚すると知ってみんなはちょっと心配した。
Aさんは勝浦の海近くの下里に住んでいたのだ。
元々は関東の出身で、サーフィンが好きで南紀に来たのだ。
結婚して色川から出て下里に住むようになったらどうしようとみんな心配したのだ。
Aさんは、色川のいろいろな人たちからHちゃんを色川から連れ出さないでくれと言われたらしい。
私も初めて会った時に彼に色川に住んで欲しいと頼んだ。
Aさんも色川が気に入ってくれた。
二人は元々Hちゃんが住んでいた家で暮し始めた。
そんな二人の手作りの結婚パーティー。
40人近い友人が集まった。
歌や踊りも飛び出す。
Fちゃんが作ったウェディングケーキをカットする。
Hちゃんの家族からの手紙も披露された。
すると、Hちゃんが「みんなにこんなに祝ってもらえて・・・」と言い出した途端泣き出した。
恥ずかしそうに後ろを向いて涙をぬぐう。
そして、みんなへのお礼と急遽今日になって決めた歌を歌った。
知らない曲だったが、Hちゃんが以前から好きな歌だそうだ。
幾千もの歳を越えて 私は今見つけた
幾千回も生まれ変わって 私たちは今めぐり合った
あなたとめぐり合った
隣では今日の11時に急に言われて練習したんですよというAさんがウクレレをつまびく。
今日はこの時期にしては珍しい大雨だったが、小屋の中は温かい優しさに満ち溢れていた。
Aさん、Hちゃんおめでとう。
今日はみんなも幸せを一杯分けてもらったよ。
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