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2012年11月23日17:45

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月岡芳年 後期 

太田記念美術館で開催中の『月岡芳年』の展示、後期に行きました。
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会期ギリギリだったで混んでるかと思いきや、そんなに混んでいなくて良かったです。3時頃、ちょっと人が増えたケド、あとは、ほどほどペースでゆっくり見られました。
お客さんで、「変な絵を見て気持ち悪くなった。」と受付の人に言っていた方がいたのだが、この方は、おそらく、芳年が、血みどろ絵を描く浮世絵師だって知らなかったんだろうなぁ〜(^_^;)。

でも、芳年の血みどろ絵は、構図の上手さ、美しさがあっての血みどろ絵なんだよね。だから、恰好良いの。月岡芳年の絵を見て驚くのは、コレが、100年以上前に描かれた絵だと思えないコト。今発売されてる時代小説に、芳年の浮世絵が載っていたら現代のイラストレーターが、描いてる絵って思うと思うよと。それくらい、斬新だったりするんだよ。幕末モダンなのだろうか?
お客さんに若い人が多いのも、芳年の特徴。まぁ、若い人が多いのは、原宿にある美術館だからかも知れないが。

今回、肉筆展示もあり、猿田彦図が2点来ていたが、どっちも天狗ぽかったな。そして、千葉市美術館から借りた方は、表装も派手だった。唐獅子が刺繍してある。

『那智山之大滝にて荒行図』。平安末期の武士の盛遠が、袈裟御膳を誤って殺して出家して、文覚になる。文覚は、大滝で荒行して7日目に意識不明になるも、矜羯羅童子と制多迦童子が助けてくれる・・って言う話が元。中央に文覚の顔。まわりは滝で顔しか見えない。矜羯羅童子と制多迦童子が左に立って、文覚を見ている。若い頃の作品なので、若干固めの絵ですね。

『桃太郎豆蒔之図』。まぁ、タイトルまんまの絵なんだが。中央に桃太郎。左に鬼がいて、桃太郎は、その鬼に向かって豆をまいている。背景に描かれた妖怪は、芳年の師匠国芳の妖怪っぽいぞ。右に大黒と恵比寿がいるのだが、目の前に鯛のお頭があるんだよ。恵比寿様、持ってた鯛、食べちゃってるじゃん(笑)。鬼が困ってる様子を見て、笑ってるドSな大黒と恵比寿。

『源平盛衰記堀川夜征』。中央に江田原蔵弘綱。阿根羽平太は、胴体真っ二つにスッパーンって斬られてて、血がピュー。足下に生首も転がる。でも、初期の作品なので、まだ明治の毒々しい赤ではなく、紅花色の血なので、生々しさはないです。

私の大好きな『通俗西遊記』シリーズ。今回もありました。『羅刹女 孫悟空』。火焔山の炎を消す為、羅刹女の芭蕉扇を借りに来た悟空だったが、この前に、羅刹所の息子の紅孩児を悟空に倒されていたので、羅刹女は、闘いを挑む。羅刹女は扇をかかげ、口には刀。風が吹き、悟空はふっとんでいる。風の描写が凄いねぇ。彫師お見事。
もう1枚。『二郎真君 孫悟空 猪八戒 九龍駙馬』。九龍駙馬って何だ?と言うと、コレは、鳥の身に龍のような頭が九つある醜い姿の妖怪だそうな。で、この妖怪退治で、通りかかった、顕聖二郎真君の力を借りる場面。二郎真君って、楊戩のコトね。封神演義が好きな人は、楊戩の方が分かるよね?二郎は、金の弓を化け物目がけて引いている。そのサイドに悟空と八戒。ちょっと思ったのは、悟空はちゃんと如意棒を持ってるケド、八戒は、9本歯の鍬じゃないんだよなぁ〜・・・。槍っぽい武器を持ってるの。鍬じゃ恰好悪いからかな?

『和漢百物語 華陽夫人』 サロメっぽい華陽夫人。華陽夫人は、班足太子の妻。実は、三国伝来金色九尾狐が化けている。中国では妲己として。日本で玉藻前として悪さをした狐だ。華陽夫人は、朱の着物に紫の衣を纏い、中央に立っている。口元には微笑。手には生首。そして、その横には、生首が沢山下がった槍。夫人は、コレを見て「フフフ」と妖艶に笑っているのだろう。もう、当時は西洋版画が入ってきてたから、オスカー・ワイルドのサロメを知ってて、ビアズリーのサロメの挿絵を見たのかな?って気がするね。

同じく、和漢から『小野川喜三郎』。大名屋敷にろくろ首のような妖怪が出る。しかし小野川は、一切動じず、煙草をふかし、妖怪に煙をふきかけている。妖怪は「いや〜ん」と言う顔をしているよ。
この絵は、芳年の月岡印の初期作品らしい。この頃、月岡だったんだね。

『英名二十八衆句』。このシリーズは、芳年の血みどろ絵の中でも、ぐんを抜いて恰好良いと思う。本当に恰好良い。『福岡貢』。足元に斬った生首が転がる。今斬ったところなのか。刀は血みどろ。着物にも血が付着している。その後ろを懐紙が舞い飛ぶ。この構図の恰好良さ!ただの血みどろ絵だったら、私、ここまで芳年好きじゃなかったと思うんだ。血みどろ絵でも、目につくのは、構図の恰好良さだ。福岡の刀の構え方と良い、惚れる。
『笠森於仙』は、お仙の髪を男がむんずと掴み、お仙は血みどろ。お仙の手や顔には、血の手形がついている。これも、構図の恰好良さですね。
『妲己の於百』。殺人や強盗を行い、お家騒動まで起こしたお百。行燈の先に、殺された男の幽霊が浮かぶも、「ふふん」と言った風情で、毒婦っぷりを見せつける。元ネタは、講談だそうな。

よく、勘違いされるのですが。血みどろ絵って、この時代、結構普通〜にありました。芳年だけが描いてたんじゃないのよ。時は19世紀末なのです。世界中が何処か不安定で、英国では産業革命があり、日本は黒船が来たりで、時代が変わる境目で、独特の雰囲気があったのです。当然、芳年は、売れたから、血みどろ絵を描いていたんだろうしね。抜群に血の表現は上手いとは思うが(嗜虐嗜好があったのは、本当っぽいんだケド)。

有名な『直助権兵衛』もありました。このタイトルより、通称“皮はぎ”の方が有名かな?遺体を踏みつけ、更に顔の生皮を剥ぐ絵ね。眼球が露わになっちゃって、そらもう、痛そう(^_^;)。でも、コレも、芝居っぽんだよ。血は出てるけど。ポージングが恰好良くてね。

こちらも有名人気シリーズ。『美勇水滸伝 黒雲皇子 将軍太郎平良門』。桂山の土蜘蛛から蜘蛛の妖術を授かった黒雲が謀反を企てた良門と対決!後に2人は意気投合・・って言う、少年漫画の王道みたいなパターンを歩む(笑)。黒雲が土蜘蛛を召喚した場面。黒雲の後ろには、妖術の師匠であるボス土蜘蛛がいる。良門には、官女姿のプチ土蜘蛛がまとわりついているのだが、この土蜘蛛が可愛い!怖くなくて可愛い!

『魁題百撰相 滋野与左ヱ門』。頭上で爆発した爆弾を見ているのだが、鼻が上向いちゃって、完全なあおりの絵なんだ。良く、この構図で描こうとしたなぁ〜。シリーズものだから変化が欲しかったのかな?
もう1枚、。魁題〜から。『鈴木孫市』。石山合戦。鉄砲に片足を撃たれても、「空腹では戦えない。」と握り飯を食らう孫市。顔は血の気が引いちゃって土気色だし、血みどろだが、目はキッとしている。

『豪傑奇術競』。妖術大合戦!大蛇丸は大蛇を召喚。霧太郎は口に葉団扇を咥え巻物を広げる。胡摩姫は鶴に乗る。鶴の羽は空刷りしてあって羽が浮かび上がって見える。背景の黒は、綺羅刷りしてるかな?

この頃芳年は、一魁と名乗るも、絵があまり売れず、芳年は極度の神経症に。この人、私と同じ、不安神経症持ちだったんじゃないかなぁ〜・・・って思うんだケド。

しかし、その後、35歳で、報知新聞へ挿絵を描くようになる。
『郵便報知新聞 第五百六十五号』は、23歳の若妻を娶った政太郎だったが、口論が絶えず離縁。若妻へ復縁を申し込むも断られ、夜道で殺害・・と言う事件の絵だ。包丁を振りかざす政太郎。喉を斬られる若妻安。壁には血がべたりとついている。

『東台寺王山戦争之図』。彰義隊の絵。何か指示を出す者。物を食う者。血みどろで倒れる者。諦めず戦う者。中央の人物の陣羽織に生首の刺繍があり(魔除けであろう)、その首から血が出ている(実際は、付着してるんだろうが)のが、何とも言えず壮絶。今で言う、報道写真っぽいよね・・とも思う。

『隆盛龍城攻之図』。この絵好きだった〜。これね。降伏した薩摩軍の兵士の話が元ネタらしいのだが。西郷隆盛が入水して、安政の大獄の際に共に身投げした月照と協力し龍宮城に攻め入り隆盛自ら龍王になって国を作ろう・・と言うおとぎ話みたいな話を、真面目にしてたらしいんだ。で、コレは、その絵。大きな魚に乗った月照の霊。隆盛は、軍勢を率いて、月照に導かれるようについていく。荒波の描写の恰好良さ。詞書には『賊将西郷』とあるらしいのだが、西郷さんを応援してるように見える。江戸の皆は、西郷さん好きだったのかな?
しかし、月照。オマエ、霊の割に、スゲエ生き生きしてるなっ!ノッリノリで西郷さんを先導してるじゃん!久々に、愛しい西郷さんに会えて、テンション上がっちゃったんでしょうか?
西郷さんと、月照の心中の話が切ないんだよね・・・。一説には、お互いの手を紐で結わえていたと言うから、本当に、覚悟の心中だったのに、西郷さんだけ助かっちゃった・・・。それ以来、西郷さんは、何処かで「自分が月照を殺した。」と思っていたみたいだよ・・・。武士道に熱い西郷さんには、それが耐えられなかったのかも・・・。

明治に入ると、国民教化が巻き起こる。富国強兵も起こるね。
孝行や、天皇関係の絵も増える。

『皇国二十四功信濃国の孝子善之烝』。善之烝は父の難病を治そうと地蔵堂に入り祈るも、父が前世で行った罪の夢を見る。この絵は、善之烝に浄玻璃鏡で父の行いを見せる閻魔たちの絵。コレ、確か、国芳にも同じようなテーマのシリーズがあったと思ったのだが(町田版画美術館で見た)、そちらは、もっとアッサリ描かれてたと思った。こっちは、もっとドラマティック。閻魔怖い!

『日本略史之内』シリーズの 素戔嗚尊が、出雲で、八岐大蛇の退治する絵は、中央に素戔嗚。海に大蛇(龍っぽい)がいて、左上には天照(かな?)がいる。素戔嗚は、刀を手に持ちポーズを決めて恰好良い。何でも、このマウスパットが、現在、国博で開催中の出雲展にあったとか。攻めた絵柄のマウスパットだよね(^_^;)。巻物風に描かれたデザインも恰好良い。

『不知藪八幡之実怪』。下総国の八幡の藪に、水戸光圀(水戸黄門ね)が入ると、そこには妖怪が・・・。右に光圀。左には美女の妖怪。中央に、白髪の仙人っぽい妖怪もいる。地面には骸骨が転がる。天狗っぽい妖怪が、「カトちゃんペッ!」をやってるようで、剽軽で可笑しい。光圀がやった伝説の一つがモティーフ。

『芳年武者无類 源牛若丸 熊坂長範』。ポスターに使われていたのはこの絵。ひらりと舞う牛若丸。熊坂が薙刀でガシっと牛若の刀を受け止める。熊坂の捻ったポーズも恰好良い。

『鹿児島明暗録 永山矢一』。右手で刀を持ち振り上げ、右をみつめる。左足を踏み出したのだろうか?褌一丁で、陰毛がガンガンはみ出ちゃってるケド、恰好良い1枚。

『古今日女鏡 鞆絵女』。これ、ようは巴御前だよね?甲冑姿の凛々しい女武者。赤い甲冑と紫の着物のコントラストが明治っぽい。私は、芳年の描く芸者や、市井の女性には、あまり魅力を感じないのだが(妖かしの女性は好き)、武将の女性などは恰好良いね。この人、やっぱり、普通の女より、特殊女性(笑)の方が上手いよ。

『新撰東錦絵 大仁坊梅ヶ枝を殺害』。梅ヶ枝に馬乗りになり、大仁坊が匕首で梅ヶ枝を殺そうとしている。後ろには梅の木。空には飛び立つ鳥。大仁坊は、飛び立つ鳥の方を見ている。これも殺害の場面だが、非常に魅力的。芳年は言っても、殺害場面が上手い。芝居っぽいんだけどね。

『曽我時致乗裸馬駆大磯』。曽我五郎が兄である十郎祐成の危篤に駆けつける。馬に乗る五郎だが、よほど急いでいたのか鞍も付いていない馬に乗っている。人物は彩色されているのに、馬は、墨絵で描かれる。疾走感を出してるのかな?下絵も展示してあったのだが、馬の脚の位置などに変化があって、結構試行錯誤されていた。

『文覚荒行之図』。先ほども出て来た文覚。コレは縦2枚の続き物。お馴染み、矜羯羅童子と制多迦童子もいる。矜羯羅は、失神した文覚を滝からひっぱり上げており、制多迦童子は蓮の花を持ち、悠然と文覚の方を見ている。矜羯羅童子と制多迦童子は、いつも一緒だなっ!あやうく、CPを作りかけたぞ。(オイ!) 不動明王の脇侍仏だからいつも一緒にいるだけなんだケドね(^_^;)。

『清玄堕落之図』。縦2枚続き。私が大好きな歌舞伎、鶴屋南北作の『桜姫東文章』が元ネタね。清玄は位の高い僧侶だが、稚児の美少年白菊丸と恋仲になり、心中しようとするも、自分は身投げ出来ず、生き残った。その白菊丸が、桜姫として生まれ変わったから、さぁ、大変!と言うお話。下に清玄。桜姫の小袖を抱え、完全にイッちゃった顔をしている。上には、清玄が妄想した桜姫。妄想の中の桜姫は、艶然と清玄を見下ろしてる。妄想なので、桜姫は、もやもやの中にいる。清玄の目と口には、漆が使われ、清玄の狂気さをアップさせてるそうな。

『羅生門渡辺綱鬼腕斬之図』。縦2枚続き。門の上から鬼が覗く。その門にへばりついた鬼を、馬に乗った綱が見上げている。持っている看板には『禁札』と書かれているようだ。コレも、構図の恰好良さだよなぁ〜。キッと見上げてる綱が恰好良い。

『新形三十六怪撰 貞信公夜宮中に怪を懼しむの図』。貞信の後ろに鬼。貞信の刀をちょこんと掴んでる。鬼はキャイーンのポーズをしてるようにも見えてお茶目。そして、鬼の顔は「なんでー?!」って顔だ。貞信が驚かないから、鬼の方が吃驚したのかな?

『清玄の霊桜姫を慕ふの図』。これも前述の清玄・桜姫もの。桜姫は囲炉裏の傍にいるのだが、煙がたなびき、おどろおどろしい。後ろの襖には、清玄の姿らしきシルエットも・・・。

『月百姿 大物海上月 弁慶』。西国へ都落ちする義経。船の先に弁慶。中央に月。波がおどろおどろしく描かれている。コレは、平家の亡霊のイメージ・・らしい。
月百姿からもう1枚。『むさしのの月』。寂しそうな狐。すみ色のススキも悲しげだ。狐は川を振り返る。川面にその姿も映っている。狐は、文明開化になり、近代化して行く日本をちょっと悲しげに見ている・・と言う説もあるんだよ。

下絵展示もあった。『素戔嗚尊』と『文覚荒行』。素戔嗚の方は、手や足の位置を何回も直したあとがあり、文覚の方は、本来水で見えないであろう、足まで、きちんと描きこまれていた。

図録は買っちゃったから、ポストカードを1枚だけ買った。あと、母の土産に、かまはぬ(手ぬぐい屋さん)で、小風呂敷を買う。

25日までやっています。浮世絵好き、芳年好きは是非。
※画像には、前期展示のモノもあります。
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