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2012年10月28日15:29

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劇団山の手事情社公演『トロイラスとクレシダ』

劇団山の手事情社公演『トロイラスとクレシダ』を見ました。実に、山の手事情社の演劇を見るのは、20年ぶりくらいです。その時見たのは、“ママレモン”の話でした。ええ。読んでる方の頭の中は「???」と言う状態でしょうが、本当に、ママレモンの話だったのです。洗剤のママレモン。ばかでかいママレモンのオブジェが、舞台両端に立っていた事を、今でも覚えています。で、ママレモン同士が争うと言う。ママレモンの同志がいたりして・・・。私は正常です。正常ですよ?本当に、そういうお芝居だった(私にはそう見えた)のです。
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しかし。何に驚くって、解散してしまったり、休団する劇団が多い中、28年間も続いてる劇団・・・と言うのが凄いですよね。大人計画も長いけれど。続けて行くって、結構大変なコトです。劇団経営は、資金繰りも大変ですし・・・。山の手事情社は、『ご支援お願いします』のペーパーを入れていたよ。

今回の『トロイラスとクレシダ』は、シェークスピアの戯曲です。私、シェークスピアは好きなのですが、このお芝居は知りません(^_^;)。まぁ、私「シェークスピア好き」と言う割に、オセロやハムレットと言ったものより、『真夏の夜の夢』や『お気に召すまま』といった、可愛くて、邪まな話(笑)の方が好きなので、純粋なシェークスピア好きじゃないような気はするんですが・・・。
で、難しい話だったら嫌だな・・と思ったら。これ、『トロイア戦争』の話でした。トロイの木馬の話ってありますよね?ようは、あのトロイア戦争。良かった!知ってる話で(笑)。なので、登場人物も馴染みがある人が結構出て来た。
山の手事情社らしい、かなり特殊な演出はなされていましたが、台詞は、シェークスピアですね。「理性はキチガイだ!」や、「権力者というのは、宿屋の主人と同じだ。去って行く客には冷たいが、来る客には、温かく手を握る。」とか、名言・格言になりそうな、ちょっと使ってみたくなるような、そんな台詞、沢山あるね(笑)。
昔からやっている、コンテンポラリーダンスのようなモノ(ルパムと言うらしい)も入ってて楽しかった。

今回のお芝居は、人が演じません。いや、人は演じているのですが、『カラス』と『犬』が、トロイラスとクレシダを演じている設定になっています。
でも、何で、ギリシア=カラスで、トロイ=犬だったのかなぁ〜・・・とは思ったんだケド。廃墟に群がるモノのイメージが、犬と烏は納得いくのだケド、逆でも良かった気がしてしまったから・・・。ギリシアの方が、小狡いイメージ・・とか?(カラスはずる賢いイメージがあるので)。トロイは一見従順。実は直情型とか・・かな?

そして、メインであるはずの、トロイラス君とクレシダちゃんの話より、親友武将同士のアキリーズとパトロクラスの関係の方が気になってしまい、途中、物語を追い損ねる・・・と言う状態に陥る(^_^;)。同じテントにずっといるんだよ?アキリーズとパトロクラス。(親友だからなんだケド) こういう時、自分が腐女子なコトを呪いますね・・・。安田さんごめんなさい・・と。シェークスピアには謝らん。だって、シェークスピア演劇って、女装の美少年やら、「コレ、どういうコト?」みたいな場面、沢山あるんですもの!!あと、コレ、古代ギリシア軍の話だしねっ!プラトン的恋愛ね!仕方ないよね!と、自分の不道徳さ加減を、それで納得させてみる・・・。

池袋の東京芸術劇場って、リニューアルオープンしたんですね。とても綺麗になってました。そして、劇場が2つに増えてた。広さは、以前とそんなに変わってはいない・・とは思うけど。キャパ200人くらいかな?トイレも黒でシックになっていて、オシャレ空間に生まれ変わってました。ギャラリーも変わったのかしら?劇場だけかなぁ。

※以下、劇団山の手事情社公演『トロイラスとクレシダ』の感想を書きます。ちょっと内容を説明したりするので、ネタバレがお嫌な方は、読むのを注意した方が、宜しいかと存じます。(シェークスピア演劇って、ネタバレしても面白いとは思うんだケド・・・)

では、ネタバレOKの方のみいらっしゃいまし〜。

劇団山の手事情社公演『トロイラスとクレシダ』
会場:東京芸術劇場 シアターウエスト

構成・演出:安田雅弘 原作:W.シェークスピア
出演。ヘレン:植田麻里絵 クレシダ:山口笑美 カルカス:石原石子 パンダラス:山本芳郎 アガメムノン:斉木和洋 メネレーアス:石原石子 ネスター:岩淵吉能 ダイアミディーズ:文秉泰 アキリーズ:山本芳郎 ユリシーズ:浦弘毅 エージャックス:鯉渕翼 パトロクラス:田中信介 サーサティーズ:倉品敦子 プライアム:浦弘毅 パリス:斉木和洋 ヘリナス:石原石子 トロイアス:川村岳 アンドロマキ:越谷真美 ヘクター:岩淵吉能 イーニーアス:谷洋介 カサンドラ:大久保美智子 兵士:三井穂高 園田恵(トロイラスの小姓) 小栗永里子 安部みはる 中川佐織 辻川ちかよ 

さっくり説明。
今から3200年ほど前。スパルタ王のメレネーアスの妻ヘレンをトロイの王子パリスが奪い、トロイア戦争が勃発した。それから7年。延々戦争が続くので、双方戦争がこう着状態。何とか、戦争を終わらせる方法はないか?と模索中。ギリシア軍は、陣営に引きこもってしまったアキリーズを何とか戦いに引っ張り出せないか?と思案中。そんな中、トロイの王プライアムの息子トロイラスと、トロイ人でありながら、ギリシア軍(スパルタ)に寝返ったカルカスの娘クレシダが恋仲となる。初め「ヘレンを返せば、今までの破壊工作は、許す。」と言っていたギリシア軍だったが、双方の会談の末、カルカスの娘クレシダを人質として差出し、ギリシア方と、人質交換をしようと影で決着がつく。事情を知らされていないクレシダは嫌がるも、恋人トロイラスと引き裂かれ、ギリシア軍へ。そこで、ギリシアの武将アキリーズのテントに連れて行かれ、クレシダはアキリーズともデキてしまう。そんな折、決戦をつけるべく、トロイの武将ヘクターと、ギリシアの武将エージャックスが戦うコトとなるが・・・。

演出で。ギリシア軍はカラス、トロイ軍は犬なので、ギリシア軍側は、黒いスーツを着て頭に羽を飾り、退場する時は、手を影絵の鳥の形にしてはけて行く。トロイは、犬耳をつけ、舞台からハケる時は、腕(袖)噛み、舞台上からハケて行く。
舞台には、坂や、中央に、電気スタンドがある(綺麗な舞台セットだと思った)。

シェークスピア演劇では、狂言回しのように、芝居や登場人物にちゃちゃを入れてくる人物ってのがいると思うのですが、今回は、それが、サーサディースと言う不具で口汚いギリシア人だった。「梅毒でみんな、やれちまえ!」や、「あの淫売女1人の為に戦争だ!」などと、ちゃちゃを入れて来る。トロイ側の予言者の娘カサンドラもそうかも。ヘクターが戦争に出る前に、「甲冑を脱がせて!あの人を止めて下さい。あの方は、ご無事では帰れません」と、託宣を下したりする。ちょっと気の狂った風のカサンドラが良い感じ。

あと、随所にお能のような動きがあったりするのも、目を引いた。歩く時や、身体の動かし方がお能みたい。
たまたま、帰りの山手線の隣になった人達も、このお芝居を見た帰りだったらしく(話してる内容から、自分も劇団をやってる役者さんぽかった)「野村萬斎みたいなのいたよね?」と言っていて、「あ、私と同じようなところ気になったんだ。」と思った。

ただ。同じ役者が、違う役・・それも敵方をやるので・・・最初、ちょっと分かり辛かったかも知れない。「あれ?ネスターだっけ?ヘクターだっけ?」ってなる。勿論、衣装は違うので、分かるようにはなっているが、ギリシア神話知らない人には、名前を覚えるのも結構大変と思うので。ネクターやらへスターやら、アキリーズやらエージャックスやら、覚えにくかろうと(^_^;)。

闘いの場面を、コンテンポラリーダンスのようなダンス(ルパムと言うらしい)で表現していて美しかった。最後、ちょっとシルエットになるのだが、そのシルエットがとても綺麗なので、シルエット部分がもう少し長めでも良かったかも・・・と思った。
最後、ヘクターが、殺されて、馬の尻尾に繋がれて、戦場引きずりまわされるのは、切なかったなぁ(実際、その場面があるわけではなく、説明されるだけですが)。予言が出てるので、死んじゃうってのは分かってたけど、切ねえ・・・。
ヘスターは、結果、アキリーズに殺されるのね。最初、アキリーズと決闘させろと言っていたので、ある意味、希望通りにはなったのか。

アキリーズが引きこもってしまったので、代わりにと出て来るダイアミティーズが、自信家で自慢しいで、キャラ立ってて面白かった。嫌な奴キャラって言うんでしょうかね。ネクターに「アナタが若返ったとしても、ダイアミティーズと並ぶくらい。」と、ダイアミティーズにおべっか使う取り巻きも楽しい。

終盤。アキリーズの親友のパトロクラスが殺されて、アキリーズが、死体を抱擁する場面は、ベタですが、色っぽくて恰好良い。
蜷川さんが、このお芝居を演出したらしいんだが、蜷川さんの方が、もっと濃密なシーンにしたろうね。以前、何だっけ・・・ギリシア悲劇を演出した時、亡くなった友の唇に自分の口に含んだワインをかける・・と言うシーンがあって、あれがエロくて美しかったのを思い出す。(本来の戯曲では、接吻をするらしいのだが、ただキスをするより、ワインで唇を濡らした方がエロイと思う)

クレシダとヘレンって、この中だと、2代尻軽女みたいな扱いだね(^_^;)。どっちとも寝るのかよ!みたいな(^_^;)。
クレシダの場合は、諦めもあるんだろうケドね。ヘレンってどうなんだろう?最初は拉致だけど、「もう、コイツでいっか・・・」みたいになっちゃったんでしょうか?強い方の嫁になろう・・みたいな。でも、結果、トロイア戦争は、ギリシア軍勝利だもんな・・・。

カラスと犬にしたのは、安田氏が、人類が滅び、廃墟の会議室にカラスと犬が住み着いて、共生していたが、やがて、それぞれが種族をかけた総力戦になって行く・・と言うイメージからだったらしい。でも、私にはやはり、ギリシア=カラス、トロイ=犬は何でかな?と思ってしまった。
あと、途中の、女優さんが、お腹に風船を入れて割るのは、何の示唆なんだろう?最初、お腹の風船は妊娠で、赤ん坊が死ぬことなのかな?と思ったのだが、赤ん坊出て来なかった・・よね??

照明の使い方が綺麗だなと思った。紫のサシ照明・・と言うのかな?があって、「綺麗〜」って思ったよ。
山の手事情社は、ルーマニアで行われるシェークスピア演劇祭に招聘されているそうな。これを演じるのかなぁ?

そんな感じのお芝居でした。次回公演は3月だそうです。
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