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2012年06月11日18:16

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瑞々しい尾鷲道　大台からコブシ嶺へ

何という生命力だろう。
日本一の降雨量がもたらしたものなのだろうか。
すべてが生き生きとしている。
それは、今までにない感動の森だった。

６月１０日

朝７時前の大台ヶ原の駐車場には、すでに何台かの車が止まっていた。地下足袋を履いて外に出ると、ピンヒールの女の子が歩いている。どちらがこの場には不釣合いなんだろうかなんて考える。

いつもは日出ヶ岳から大蛇嵓を回る周遊コースを歩くが、今日は尾鷲辻に向かう。この道は初めてだ。途中がコンクリートになっているので、地下足袋では歩きにくい。

３０分で尾鷲辻に着く。何人かのハイカーが通り過ぎていった。私と相方はそこから南の尾鷲へと続く道に入っていった。今日の目的は尾鷲道を歩いてコブシ嶺に行くことだ。

尾鷲道、それは三重県の尾鷲から大台ヶ原へと続く古道だ。尾鷲までは大変だが、途中のコブシ嶺までがとてもいい道だと聞いていた。前々から是非とも歩いてみたいと思っていた。だが、迷いやすいところもあるようだ。一人だと不安だが、相方と一緒なら何とかなるだろう。

尾鷲辻から一歩踏み出すと、そこはいつもの大台ヶ原から異次元の世界に入ったようだった。多くのハイカーで賑わう大台ヶ原とは違って静寂に満ちている。前日降った雨で木々の緑は鮮やかさを増していた。霧に煙っているのも大台らしい。

尾鷲道は昔からの古道だけあって踏み跡はけっこうしっかりとしている。さらにこれでもかというくらいに無駄にテープがついている。これはないだろうと、新しそうなテープをはずしながら進む。とても迷う余地なんてなさそうだ。

今年になって台高山脈の山をいくつか歩いたが、やはり大台は違う。標高が高いせいもあるだろうが、圧倒的な降雨量の多さが北部の台高の山とは違う。木の種類も多い。木の大きさも違う。圧倒的な生命力を感じる。

今日の天気もいい条件だ。前日には雨、そして朝の霧。やがて日が射してくる。大台にはこの湿った空気が似合うのだ。

コブシ嶺の手前で右の尾根に入りかけた。このあたりは迷いやすいと出ていた。テープがなくおかしいと思って振り返ると、反対側に山腹が大きく崩れた山が見えた。あれがコブシ嶺だ。奥駈に行った時に熊野市のKさんに教えてもらった。ここを薦めてくれたのもKさんだ。そちらにはテープがたくさんついていた。

山頂近くにはアセビやシロヤシオの低木が茂っていて歩きにくい。そこを抜けると、少し下がったところに山名板と三角点があった。

山頂には木が生えていなくて、なんとも展望がいい。三重県側は晴れているが、奈良県側は曇っている。尾鷲に続く尾根、尾鷲の街、尾鷲湾は良く見えるが、大峰の山には雲がかかっている。大台ヶ原も雲の中だ。そしてひときわ目につくのが、又剣山を中心とした竜口尾根だ。登高意欲が湧く。

帰りは途中から尾鷲道ではなくて尾根道に入る。尾鷲道は尾根の少し下を通っているのだ。尾根道は尾鷲道ほど踏み跡ははっきりとはしていない。さらにテープもぐんと少ない。だがそれがかえって面白い。踏み跡を追ってこっちかなと思うとテープが出てくるといった感じだ。倒木が多い。やはり尾根は風が強いのだろう。

帰りに堂倉山に登るつもりで尾根道を歩いたのだが、どこをどう行ったのか、堂倉山に登らないで尾鷲道に出てしまった。登り返す気もしなかったのでそのまま尾鷲辻まで歩いた。

尾鷲辻には次々とハイカーが現れた。大台ヶ原の駐車場にはたくさんの車が止まっていた。それなのに誰にも会わない山歩き。不思議の世界から現実に帰ったような思いがした。