後半はゲストにDrakskipを迎えて始まりました。曲はJosefin's WaltzにEkelundapolska。
最新アルバムや6月の御来道では熱血なオリジナルの印象が強かったドレクでしたが、この日のことを思い返すと繊細なトラッドのイメージが甦るのはこのJosefin's Waltzのせいかもしれません。あらさんのカンテレ、アイリッシュミュージシャンのセッション、いろいろな場面で聴いてきましたが、楽器を選ばない名曲だと思います。
そもそもの元祖ヴェーセンは2009年4月には琴似のコンカリーニョにも来ていたのでしたが、私はS氏が手配してくれてその日は東京へ行っていたのでした。北海道に赴任したばかりでよくわかっていなかったということはありますが、藤野さんやじょんさんと望外にすぐ再会できたり（その頃は覚えていただいていると思わなかったのですが坂上さんとも）、多くの貴重な経験ができましたから悔いてはいないのです。
ポルスカというとあらさんのアルバムを想起します。北欧つながりでもある彼らとあらさんは2010年の初夏以降北海道や関西で共演を重ねられ、地域や世代を超えて意気投合されたようでした。昨年（2011年）6月に来道された際、彼らとあらさんが熱心に音楽の話をされているのをお見かけして、ちょっと侵しがたいものを感じたことがありました。
他のお客様がお書きになっていたのをカンニングさせていただいたところによりますと、その次のHey、John JoeまでをDrakskipが御一緒されたようです。前日の有楽町MUJIで初めて聴いたこの曲は、「バルト」や「鳥の一生」を想起させる激しさを秘めた曲と感じましたので、最近の私のドレクのイメージにも合い、なるほど共演にふさわしかったことと思います。
続いてのゲストはちみんさん。
ちみんさんの歌を聴くのは全くの初めてでしたが、5月に西荻窪のCLOP CLOPの岡さんとのライブにお客様としていらしていて、終演後はトシさんと共演についてのスケジューリングを話し合われていたのがちみんさんではなかったかとも思います。
今は東京で活動されているのだと思いますが、御出身は関西の由にてJJF関西ツアーで御一緒された際、御親族の方がちみんさんに「イムジン川歌えや」などと盛り上がっていたエピソードをトシさんが披露され、「次はアイルランドの川の歌」とおっしゃってThe water is wideが始まりました。
water is wideといえば、アイルランド移民が故国との間を隔てる大西洋の広さを嘆くイメージが先行していましたが、歌詞を虚心に見るとwaterは男女を隔てる川で、boatは手で漕ぐボートのように読めますから、やはりアイルランドの川の歌と言っていいのでしょうか。ずっと読んでいくとwaterが海になったりboatが船になったりしているようでもありますが。
それはさておき、1年ほど前にのみ亭で聴いたじょんさんのwater is wideは透きとおった美しさを感じましたが、感情がこもったちみんさんのwater is wideにもまた味わいがありました。これまたカンニング結果によりますと次の「思い出の歌」までを御一緒されたようです。
そこからはwater is wide、「思い出の歌」、「藤色の夜明け」、「ふたりのことば」としっとりとした歌ものを中心に続きました。
「ふたりのことば」を初めて聴いたのは、たまたま出張中に幸運に恵まれての2010年5月末の吉祥寺でしたから、今にして思えばトシさんが作られて間もないできたてのほやほやの時期だったのではないでしょうか。それは初めて聴くじょんさんの歌声でもありました。じょんさんが歌うとこうなのかとその時はただ耳を傾けていたのですが、半年後に北海道にいらしてくださった時の「ふたりのことば」には更に磨きがかかって中村さんの歌声との重なりも美しく、今でも「ふたりのことば」を聴くと冷え込み始めた北海道の秋の夜を思い起こすのです。
アンコール前のラストはやはりSelma。盛り上がりが約束された曲ではありますが、客席にも精鋭が揃ってこの日の盛り上がりはこれまで聴いてきた中でも随一でした。
Selmaでは中原さんの印象が残りましたので、ここで触れてみたいと思います。
当日が卒論締切の前日ということは夏に感謝祭の日程が発表された当初から公けにされていたのですが、それからの幾星霜を経てあと一息というところまで行き着きながらも完成には至らずにこの日を迎えてしまったとのことなのでした。
執筆状況が時折伝わってきていて、大丈夫だったのかなと思いつつ上京したところ、ステージでの言でそのことを知りました。
直前はほとんど寝ていないのではないかと思われ、おやつれだろうにステージでは卒論のことは考えずに精一杯にサポートするとおっしゃるそのお姿たるや美しく、お茶を吹かれてでも讃えたくなりました。
御担当の鍵盤ハーモニカ、ホイッスル、そしてイリアンパイプスは、実際にも重要な役割を果たしていました。特にSelmaのセット中盤のチューンなどは深江さんと大渕さんが来道された時でしたか中津井さんが違うセットの中で弾くのを聴いたことがあった気がしますが、イリアンパイプスが入るととても厚みを増して、よく合っているように感じられました。
2011年は中原さんとJJFの皆さんの演奏を別々に拝見する機会には何度か恵まれていましたが、実際にサポートされるのを聴いたのはほぼ初めて。5月の表参道は本当に一瞬だけでしたし、それ以上遡るとそもそもの出会いだった沙耶佳さんとじょんさんのポロロッカをサポートされていた時以来でしょうか。感慨がありました。
来道された時などに行きたいと思っているとお話したことはあったと思いますが、本当に来るとは予想されなかったか、終演後に行き会った際、驚いた旨をおっしゃっていました。頑張ってとしか言えないけれどもとお伝えすると、皆さん頑張ってと言ってくれて…とのことでした。
miontasのことを教えてくれたおかげで昼間のライブに行くことができたことや、丸山さんが海外に行かれると聞いたので行ってよかったと思った旨をお伝えすると、そう、あの4人でのライブは最後になるんですということを、みんな若くてきらきらして感じられた旨を付け加えると、また誰か連れていきますということを言って応じてくださいました。
もともと色白ではあられるのでしょうけれども、やはりお疲れなのかという顔色と、心なしか声も小さく感じられ、せめて今日は休んで…と言いかけて、翌日15時に卒論の提出期限が迫っていることを思い、でも休めないのかなあと続けると、逆に気遣ってくださってか、休みますと答えてくださいました。
翌日も進捗状況を朝から呟かれているのを帰りの空港や電車の中で見ました。そして午前の途中から出勤し、勤務終了後に無事の提出を確認して安堵したのでした（続く）。
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