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2011年11月13日00:33

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勝手に小説:第2話『志願者』 エピローグ

第六章.2
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1794922311&owner_id=1883219

【エピローグ】

              ▽             ▽

たまき「あら、今日は右京さんお一人ですか?」

右京の元妻の営む小料理屋、花の里にて最近はちょくちょく頻繁にやって来る、部下である連れがいないことに、たまきは元夫に訊き返す。

右京「今日は神戸君はご友人と一緒に飲みたいそうです」

たまき「あら、そうですか」

と、右京がいつもの席に着くのを見ると、彼女は残念そうに少し目を伏せた。非常に大きな事件があった事は彼女も知るところだから、事件解決の祝杯でもあげに来ると思ったのかもしれない。
まあ、彼も間違っても事件の話の際に、どう言う訳かそれを手にすると必ず特命係を直に巻き込んだ事件が起きる『パルトネールの呪い』とは口に出せないから、「今日はお二人で水入らずで」と、言いながらそんな配慮をしたつもりなのだろう。

たまき「そう言えばこの前神戸さんといらした時、新しい方がいらっしゃった。と言っていましたけど、あれからどうなったんです?」

そういえば、松田亜弥加はこの店には来ていない。陣川は何度か連れてきた事があったから、思えば少し可哀想なことをしていたかもしれない。

右京「ええ、疑いが晴れてあれからすぐに元の部署に戻りましてね」

その言葉に、たまきは「まあ」と声を上げる。

たまき「でしたら特命係の3人目は、どんな事があってもじきに元の場所に帰れる。と、言う事なんですね」

ああ、そういえばそう言う事になる。と、右京は目を丸くする。

右京「そういうことになりますねえ・・・」

                           ▽

その頃尊はいつものワインバーではなく、とあるレストランに大河内を呼びつけていた。

尊「大河内さん、お疲れさまです」

大河内「お疲れさまはお前の方だろう。と、言うか何なんだこれは・・・」

と、珍しい言葉を尊に向けた後、笑顔と共に向けられる目の前の光景に大河内は唖然とする。しかし。

尊「ここのカレーライス、美味しいんですよ」

んふ、といつもの笑みが返ってくるだけだった。
尊は特命係とは比べものにならないほどの仕事の量を切りが良い場所で終え、少し遅れてきた大河内を狙い、勝手にカレーライスを頼んだらしい。しかも数種類のものがセットされているものだ。

大河内「私に食べ比べでもさせるつもりか」

尊「嫌だなあ、素直に嬉しいって言ってくださいよ。だから杉下さんのところは断って来たのに」

と、子供のように口を尖らせる。

尊「ね、これ、僕の奢りなんで。後はいつものところでぱーっと飲みましょ」

そして『この男の上司と似て一癖あるこの男は』と言う、普段は見せることのない困ったような顔を見ながら、にこにこと年甲斐もなく無邪気に笑うのだった。
『大河内さんにとって、友達なんて僕くらいでしょ?』と、しっかり弱みを握られているから仕方がないのかもしれないが、しかしその心遣いは少し嬉しかった。
そして1口2口口にしたところで、大河内は口を開いた。

大河内「杉下さんだけでなく、お前にも感謝している」

思いがけない言葉に、後から運ばれてきたナポリタンを口に運びながら、尊はきょとんと強面の歳上の友人を見ている。

大河内「お前、分かっていてあんな行動を取ったんだろう?」

つまり、誤認逮捕を避けられた事を感謝する言葉だった。しかし尊は口元に笑みを浮かべてこう答えた。

尊「いえ、さすがにどんな仕掛けかなんて分かりませんでしたよ。でも、執事カフェで通るほどの場所ではないでしょう?」

と、肩をちょいっとすくめる。

大河内「なるほど」

そしてそれを見ながら彼は口元を緩めた。

                       クローバー

そして2人は店を出た後、散歩でもしているようにぶらぶらと歩く、5月半ばの風は夜でも暖かくなっていた。

尊「季節ってちゃんと移ろうんですね」

『今だったら、マスクにマフラーなんてしていたら、バレバレだろうな』
尊が4月にまた殺人事件の第一発見者になった事は大河内も知っている。おそらくこいつはそんな事を思っているんだろう。と、大河内はふと思った。
目の前の尊は、いつもよりはしゃいでいるようにも見えた。

そして繊細なガラス細工のような、日本人にしたら少し色素の薄い瞳をこちらに向けたかと思うと、ふいに手を握られる。

尊「ねね、遅くなっちゃうんで早く行きましょう」

しかし今度は、その笑顔の中にいつもの企みが見てとれる。

大河内「今度は私に奢れと言いたげだな」

その言葉に、尊はいつものとおり切れ長の目をくりっと丸めると、子供のようににこりと微笑んだ。


                ▽           ▽

『志願者』終わり



補足:

1アラビアータ
アラビアータ (イタリア語: all'arrabbiata) とは、イタリア料理で、唐辛子を利かせたトマトソースのこと。

唐辛子を多めに入れたり、オイルに味つけしたりして、唐辛子の味を強くしたトマトソースを作り、それを茹でたパスタに絡めた料理である。好みでバジルなどのハーブを添えることもある。
アラビアータはより忠実に読むとアッラッビアータとなるが、これはイタリア語で「怒り」という意味で、辛くて食べるとまるでカッカと怒っているような顔になるというところからこの呼称が付いた。
地名のアラビアとの関係はない。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%83%A9%E3%83%93%E3%82%A2%E3%83%BC%E3%82%BF


2ヘクソカズラ
[学名:Paederia scandens (Lour.) Merr.]
アカネ科の藤本(とうほん)(つる植物)。

ヤイトバナ(灸花)、サオトメバナ(早乙女花)ともいう。乾くと全草黒っぽくなる。地面をはって長く伸びる茎には花はつかない。花のつく茎は、他物に巻き付いて高く上る。
枯れないで残った茎は木質化して肥大成長し、径1センチメートルになる。葉は対生し、卵形。7〜9月、枝先や葉腋(ようえき)に集散花序をつくり、多数の花を開く。
花冠は筒形で5裂し、外側は灰白色、内側は赤紫色。果実は球形、先に小さくとがった萼片(がくへん)が残り、種子は2個。日本、および中国南部、インド、東南アジアに広く分布する。植物体をもむと悪臭があるので屁糞葛の名があり、花冠内側の赤紫色が灸(きゅう)をすえた跡に似るので灸花の名がある。
http://100.yahoo.co.jp/detail/%E3%83%98%E3%82%AF%E3%82%BD%E3%82%AB%E3%82%BA%E3%83%A9/
画像:http://aoki2.si.gunma-u.ac.jp/BotanicalGarden/HTMLs/Hekusokazura.html


3ヤブガラシ
[学名:Cayratia japonica Gagnep.]
ブドウ科のつる性多年草。

ビンボウカズラ(貧乏蔓)ともいう。
長い根茎を伸ばして広がる。茎はよく伸びて分枝し、緑紫色で稜(りよう)がある。若茎には軟毛がある。巻きひげは葉に対生し、普通は二つに分かれる。
葉は柄があって互生し、鳥足状の五小葉からなり、頂小葉は狭卵形または長楕円(だえん)形で波状の鋸歯(きょし)があり、ほとんど無毛、裏面に光沢がある。7〜8月、有柄で扁平(へんぺい)な集散花序を葉に対生して出し、淡緑色の四弁花を開く。花期後に黄赤色の花盤が目だつ。
雄しべは4本で花弁に対生し、花柱は棒状に直立する。果実は球形で黒く熟し、種子は広卵形。北海道南西部から九州、および中国、インドに広く分布する。属としては東アジアに十数種ある。
名は、よくはびこって藪(やぶ)を覆い、枯らしてしまうことによる。また貧乏蔓は、手入れの届かない庭によく茂ることに由来する。
http://100.yahoo.co.jp/detail/%E3%83%A4%E3%83%96%E3%82%AC%E3%83%A9%E3%82%B7/
画像:http://had0.big.ous.ac.jp/plantsdic/angiospermae/dicotyledoneae/choripetalae/vitaceae/yabugarasi/yabugarasi.htm


4船箪笥(ふなだんす)
船箪笥は、江戸時代から明治時代にかけて日本海を往来した北前船の船頭が重要書類や金銭、印鑑、筆硯などを保管するのに使った箪笥です。大切なものを容易に取り出せない数々の錠前とからくり、鎧のように全体を守る鉄金具には特徴があり、船が難破しても船箪笥はいつまでも海を漂って中身を守ったと言われています。
http://iwate.info.co.jp/hakoya/info_f.html


5寄木細工
寄木細工(よせぎざいく)は、箱根や海外の土産物屋でよく見られる伝統工芸品である。200年程の歴史を持つ。縞(シマ)、市松、紗綾型(サヤガタ)、麻の葉、マス、矢羽根、青海波(セイカイハ)など日本の伝統文様を木で寄せた技法である。 寄せ木細工の文様は年代、メーカーなどによって微妙に異なった風合いがある。
なお、欧米では床板細工など指すものと捕らえられているので日本のそれとは違っている。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%AF%84%E6%9C%A8%E7%B4%B0%E5%B7%A5

秘密箱
箱根寄木細工の代表的作品であります秘密箱のルーツは、江戸後期の1830年頃と伝えられております。明治時代には「智恵箱」と呼ばれるようになり、現在のような秘密箱が作られるようになったのは1894年(明治27年)頃であり、箱根湯本の指物職人、大川隆五郎によって考案されました。

秘密箱は箱の側面を順番通りにスライドさせると開ける事ができます。秘密箱のあけ方はこちらをご覧ください。スライドさせる回数が多くなるほど難しくなります。回数の少ない箱は4回、多い箱は72回のものもあります。当店内には、125回の秘密箱を展示保存してあります。
http://www.hakonemaruyama.co.jp/secret.htm

作品中の引用作品。
season 8 『神の憂鬱』
season 7 『特命』
season 8 『SPY』
season 5 『殺人ワインセラー』
『相棒』劇場版2
season 9 『9時から10時まで』
season 2 『消える銃弾』
season 8 『鶏と牛刀』
season 8 『さよならバードランド』
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