☆ （椋鳩十文学記念館）鹿児島市電（2011年07月22日(金)）
椋鳩十（むく・はとじゅう）さんという名前に，覚えがない人はいるかもしれない。
しかし，この人の作品を読んだことのない人は，あまりいないだろう。
「大造じいさんとガン」「片耳の大鹿」「月の輪グマ」等，小学校の国語の教科書で，誰でも１回は読んでいるはずだ。
私自身は，たしか小学校５年生の夏休みの宿題の読書感想文を，椋鳩十さんの「海上アルプス」で書いたような気がする。
それと，「ハブとたたかう島」も印象に残っている。
「海上アルプス」のおかげで，屋久島が屋久杉と屋久鹿と屋久島ザルとサバ節の島であることを知った。
「ハブとたたかう島」のおかげで，奄美大島の人々がハブとの戦いを生き抜いてきたことを知った。
「日本のシートン」とも言われた椋鳩十さんの動物文学と，動物語を話せるお医者さんであるドリトル先生の物語シリーズとが，動物に対する私の価値観の根底に，おそらく，強い影響を及ぼしている。
椋鳩十さんは，実は私と出身大学が同じでもある。
私にとっては大先輩というわけだ。
だからというわけでもないが，大学１年次の頃に，大学図書館にあった椋鳩十全集をかたっぱしから読み漁った記憶がある。
その椋鳩十さんは，鹿児島県の加治木で教師をしておられた。
そのご縁からか，加治木町（現・姶良市加治木町）に，椋鳩十さんの記念館がある。
それで私は，鹿児島にきたときは大抵，この椋鳩十文学記念館を訪ねることにしている。
今回も，まずは路面電車で鹿児島中央駅に出て，みどりの窓口で本日乗車予定の列車の指定席券と乗車券とを購入し，荷物をコインロッカーに放り込み，しかる後に加治木へと向かった。
ＪＲ電車で，約30分。
椋鳩十文学記念館は，日豊線の錦江駅と加治木駅の真ん中・少し錦江駅寄り，というあたりにある。
どちらの駅からも，徒歩15〜20分程度。
それで，錦江駅から，炎天下をぼちぼち歩きだした。
それなのに。
ああ，それなのに，それなのに。
たどり着いてみると，椋鳩十記念館は，
「マヤフェスタ開催のため，7月22日と23日は休館いたします」
ですって(T_T)。
おいおい，姶良市ホームページの椋鳩十文学記念館案内ページには，臨時休館のことなんて一言も書いてなかったぞ<`ヘ´>。
しかしまあ，「マヤフェスタ」って言うんだから「マヤの一生」にちなんだイベントなんだろう。
「マヤの一生」に関するイベントであるならば，私としてはそれで休館になっても文句を言う筋合いはない。
戦争の悲惨さを描いた最も優れた児童文学をひとつ挙げろと言われたら，私は何の迷いもなく「マヤの一生」を挙げる。
※ ちなみに，原爆を描いた児童文学なら今西祐行「ヒロシマのうた」，同じくまんがならこうの史代「夕凪の街 桜の国」を挙げる。
夏にマヤについてのイベントを行うということは，すなわち戦争と平和について語るということであるのだろう。
そういうイベントのために休館するということなら，それはそれで仕方がない。
というわけで，記念館の前をそのまま通り過ぎて，加治木駅へ向かう。
10分ほど待って，ちょうど来た特急「きりしま７号」にて，鹿児島市内へ戻る。
思いがけずできてしまった時間，鹿児島の路面電車のノンステップ新型車両，「ユートラム２」に乗ることに充てようではないか。
鹿児島市電には，松山の伊予鉄や高知の土佐電と同様，「リトルダンサー」シリーズと呼ばれるノンステップ路面電車が走っている。
伊予鉄や鹿児島市電はこのノンステップ車を積極的に増備しているのだけど，鹿児島市電は近年，１両単行の初代ユートラムとは別に，連接構造の「ユートラム２」を導入した。
私は，初代のユートラムには乗ったことがあるが，２代目の「ユートラム２」にはまだ乗ったことがない。
そこで，せっかく時間が空いたのだから，この「ユートラム２」に乗ってみようと思ったわけだ。
鹿児島中央駅の１駅手前，鹿児島駅にて特急「きりしま７号」を降りる。
鹿児島市電は，この鹿児島駅が発着点になっている。
それで，市電に沿って歩きながら，ユートラム２が来たら速やかに乗車することにした。
軌道敷きに沿ってぼちぼちと鹿児島中央駅方面に歩いていると，タイミングのいいことに，ユートラム２が鹿児島駅方面に走っていく。
ということは，このユートラム２が鹿児島駅前で折り返して戻ってくるところを捕まえれば，ユートラム２に乗れるわけだ。
そのときちょうど「朝日通」電停付近を歩いていたので，そこでしばらく待つことにした。
そういうわけで，首尾よく，国産ノンステップ路面電車「リトルダンサーシリーズ」の新型，ユートラム２に乗車することができた。
乗ってみると，内装は初代ユートラムとほとんど変わらない。
初代ユートラムの内装をそのままに，客室を大きくしたのがユートラム２，という感じだろうか。
なお，鹿児島の路面電車は，軌道敷がところどころで芝生になっている。
道路の真ん中に緑のじゅうたんが出現して，良い感じ(^^)。
☆ はやとの風４号（07月22日(金)）
鹿児島中央1322−1456吉松
市電にて鹿児島中央駅に到着，荷物をコインロッカーから取り出し，まだ40分ほど時間があるので駅構内のカフェでコーヒーをいただきながらちょっと一息。
さて，本日の行程では，ここから先は観光列車乗車が続く。
そのトップバッターが，この特急「はやとの風」号・吉松行き。
車両は，おそらく普通車用ディーゼルカーを改造したもの。
外装は黒く塗られている。
内装には木材が多用されており，窓の遮光カーテンがよしずのような感じになっていて，車両の真ん中に展望席が設置されている。
列車は定刻に発車。
車掌の案内放送が入るのだが，ディーゼルカーのエンジン音でなかなか聞き取れない。
加治木駅までは，先ほど椋鳩十記念文学館に行ったときに通った線路。
錦江湾の海の色が碧くて，昨日の紀淡海峡の海の色とはかなり違う。
そのうち，車内販売のワゴンが回ってきた。
何か飲み物をもらおうと思ってワゴンを除くと，おや，350mlほどの容量の茶色の小瓶が並んでいるではありませんか。
以下，車内販売のお姉さんとの会話。
「これ，ビールだよね」
「はい，地ビールです」
「どんな地ビールがあるの？」
「フルーティなビールと，ちょっと苦いフルーティなビールです」
「いや，あの，つまりどんな種類なの」
「ヴァイツェンと，ヴァイツェンドュンケルです」
「じゃ，ヴァイツェンドュンケルをください」
結局，いただいたのは薩摩麦酒のヴァイツェンドュンケル。
ここでクラフトビールにありつけるんだったら，鹿児島中央駅でコーヒーを飲むべきじゃなかったけど，あとの祭り(^^ゞ。
それでも，このヴァイツェンドュンケルはそんなに苦くはなく，フルーティーすぎる感じもなく，乾いた身体にちょうど良く染み込む美味しいビールでした。
隼人駅を出ると，列車は日豊本線に別れを告げて肥薩線へと入る。
「タイムスリップしたような景色をお楽しみください」というような案内放送が入ったのだけど，いったいどんな景色なのか。
と思ったら，つまりは嘉例川駅と大隅横川駅の，前世紀初頭に建築されたという木造駅舎のことを言っているわけね。
まあ，たしかに趣きのある木造駅舎ではあった。
☆ しんぺい４号（07月22日(金)）
吉松1516−1635人吉
吉松駅からは，特急ではなく特別料金不要ではあるが，愛称のついている観光普通列車。
私が指定を受けたボックス席には他に乗客はなく，１区画をまるごと占拠してしまった。
実は今回，こんなふうに観光列車の乗り継ぎを敢行したのは，この肥薩線（えびの高原線）の「日本一の車窓」を眺めてみたいという気持ちがあったから。
これもずいぶん前，肥薩線に乗ったことがあったのだけど，そのときは小雨模様の天候で，「日本一の車窓」とやらは全く見ることができなかったのだ。
現在の鹿児島本線の線路が開通する前は，この肥薩線が鹿児島本線だったのだそうな。
海岸線に沿った平坦な地ではなくこの山間に線路を引いたのは，国防上の観点があったのだという。
すなわち，海岸線に近いところに線路を敷くと，艦砲射撃の標的にされかねないということだ。
この区間を走る観光列車は，人吉発吉松行きが「いさぶろう」号，逆方向の吉松発人吉行きが「しんぺい」号。
難工事であった矢岳第１トンネルが完成した際，工事責任者だった逓信大臣山縣伊三郎と，鉄道院総裁後藤新平とがそれぞれ石額を揮毫し，その石額が矢岳第�颯肇鵐優襪凌裕搬Δ筏半沼Δ箸坊任欧蕕譴討い襪箸いΑ�
それで，人吉から山縣伊三郎の石額に向かって走る列車が「いさぶろう」号，吉松から後藤新平の石額に向かって走る列車が「しんぺい」号，ということにしたのだそうな。
真幸駅のホームには，「真の幸せ」という駅名にちなんで，「幸せの鐘」が設置されている。
その鐘のそばには，こんな説明の看板が。
「ちょっと幸せの方は１回，もっと幸せを願う方は２回，いっぱい幸せの方は３回鳴らしてください」
ちょっとだけ幸せ？な私は，１回だけ鳴らしました(^^)。
私が見たかった車窓は，真幸と矢岳との間，矢岳第１トンネルに入る前あたりの景色。
しかし，本日は晴天ではあるけれども雲がかかっていて，十分には景色が見えなかった。
残念だけど，まあ，そんなもんだろう。
矢岳駅には，Ｄ５１型蒸気機関車が展示してあった。
しかし，このデゴイチ，塗装などがボロボロで，あまりきちんとお化粧直しされていない。
ひょっとすると，あえて化粧直しなどをせず，現役当時のままの姿で展示しているということかもしれない。
☆ 九州横断特急８号（07月22日(金)）
人吉1648−1816熊本
人吉から乗るのは，その名も「九州横断特急」というすごい名前の列車。
人吉駅のホームでは，駅弁屋のおじさんが，ワゴンなどを使わずに昔ながらの弁当売りスタイルで駅弁を売っていた。
本当は駅弁を買いたかったけれど，昨日から今朝にかけていろいろと食べ過ぎたので，（昨日は土用の丑だったので鰻の蒲焼弁当を食べちゃったし，今朝はホテルの朝食バイキングでしこたま食べちゃったし）ここはちょっと食べる量を減らさなければ。
というわけで，駅弁購入は泣く泣く断念。
私が指定を受けた座席は進行方向左側の窓側。
しかし，人吉から熊本へ行く線路では，列車の右側を球磨川が流れている。
すなわち，本当は進行方向右側のほうが景色が良かったというわけ。
まあ，少し残念だったけどそれほどこだわることもなく，例によって例のとおりぼぉーっとしながら運ばれて行ってしまった。
で，気が付いたら熊本の手前。
さて，熊本駅からはまたも路面電車に乗り，今宵の宿を目指すことにしよう。
熊本市電は，日本で初めて超低床車両を導入した市電だし。
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