ブラウスが滑り落ちる。すんでのところでわたしは胸を押さえた。男はしばらく見つめていたが、
「きれいな肩だよ」
そうささやいた。わたしは、
「ありがとうございます……」
と返すので精一杯だった。顔を見られずうつむいた。男はわたしを抱き寄せる。
５分ほど経った。自分のズボンのベルトを外しにかかっている！
ぽ「出さなくていいですからっ」
男「なめてほしい」
ぽ「わたしがおなかペコペコなの知っているでしょう、噛……」
男「わかっ、わかった出すのやめる」
ぽ「むふ」
男「なんだその満足そうな」
ぽ「にっこり」
男「ちょっとその辺走ろうか」
ぽ「はぃ」
男「かわいいね」
ぽ「！！？」
そうして男はドライブに連れて行ってくれた。普段わたしが通っている道。しかし、木々の枝も冷たい空気も特別きれいに見えた。
ぽ「わたし、もう３０時間寝てないの」
男「結構いつもそうだよね」
ぽ「けいかく性ができないの」
男「大丈夫だよ、泊まって行こう」
ぽ「ダメですダメですそれだけは」
男「今のは『泊まりＯ.Ｋ.』ってメッセージじゃないのか」
ぽ「ちがうちがう」
男「違わないだろ」
ぽ「帰りたくない」
男「？？」
ぽ「でも泊まるのも困るの」
男「なんだそれ」
ぽ「わたしもわかんないの」
不意に涙が頬をつたう。驚いて男は訊いた。
男「悲しいの？」
ぽ「ぜんぜん」
男「じゃあなぜ」
彼は車を脇へ停めた。涙が止まらなくなってわたしは顔を伏せる。
男「泣かないで」
ぽ「男の人ってそう言いますね」
男「そりゃ『もっと泣け』とは言わんだろ」
ぽ「ふふ」
男「元気になった？」
ぽ「まだまだ」
男「どっちだよ」
ぽ「ぅーん」
男「あっ、再来週きみプレゼンだよ」
ぽ「知ってます」
男「準備してる？」
ぽ「はい、ぼちぼち」
男「ならいいけど。来週フランスだから、連絡くれても返事できない」
ぽ「わかりました」
そのあとは無言が続いた。男の手を払いのけたついでに、わたしは彼の胴体にそっと腕を回した。脂肪を確認してしまう。
ぽ「大変です」
男は何事かと思い、動きを止めて警戒した。
ぽ「おなかに肉が付き始めています！」
男「……そーなんだよね、最近ね（苦笑）」
ぽ「フランスで食べ過ぎそうになったらこのぽにょぽにょをつまみ、自粛しなければなりません」
男「わかったよ（笑）」
以降、太った気配はない。色気の維持がメタボ対策に有効なようだと思った。
ログインしてコメントを確認・投稿する