母は、１回につき１万２千円の点滴治療を週に３回受ける。交通費は毎回３千円、たまには診察代・検査費用もかかる。それは月に３万円以内。加えて、歯科や整形外科にもちょくちょく行く。
テレビで「高額医療」の特集がたまたまあって、母はちょっと見始めたんだって。自分もかなり使っているわけだから関心が向いて。ところが、取材されたその人は１ヵ月に１千万円だった。相当死に近いのではなかろうか。それでも望む効果が得られればいいけれど。延命治療の類かもしれない。いずれにしてもその桁違いぶりが、「わたしたちとは世界の違う話だわ」。ぽっぴんＨも同意する。
ところである日、母は上機嫌だった。
母「おとうさんに５０万円もらっちゃった」
ぽ「なんで？！」
母「１１０万おろしてきたんだって」
ぽ「な、んで」
母「必要だから」
ぽ「何に」
母「ほら、車買うでしょ」
そうなんである。うちはトヨタの小型車を購入する。これまでも同社のファミリーカーに乗っていた。
母「今度のお店は前のトヨタと違うの。もっと向こうのホンダの隣にあるトヨタ。うちに来る担当の人はトヨタの本田さんよ」
ぽ「なにそれ」
母「だからトヨタにお勤めの本田さんがホンダの隣のトヨタから来てるの」
ぽ「ややっこしいわー」
相変わらず欲しいものはないかと訊いてくる。毎日毎日詰問される。何も不足はない。２０回に一度くらい、わたしは反応する。
ぽ「あっ、あるある。ＣＤなの」
母「なんていうの」
ぽ「オーロラのなんとか」母「覚えられない」
ぽ「わたしも」
母「注文できる？」
ぽ「あの子（弟）に頼めば」
母「なら早く買いなさい」
ぽ「きゃっほーい！」
そしてインターネットで買い物の手順を踏んでいるとき、
母「やっぱりダメダメ！ 今お金ないんだから」
ぽ「だって３千円……」
母「うちが緊縮財政なの知ってるでしょう（怒）！」
ぽ「えー脱力」
母「車買うんだから」
ぽ「だったら」
母「倹約しなくちゃ」
ぽ「３千円くらいタダみたいなもんじゃ……」
母「いーや、ともかく」
あえなく注文ページをログアウト……。
生命保険の見直しを徹底的に行っていて、生保レディが毎日のように来る。毎回何か置いて帰る。うどんとか。わたしは惑わされない。そば党ですからね。だいたいうちって家族５人で生命保険と車２台の自動車保険に月いくら払ってるの？ ９.８７万円。恐れ入りました。
（続きます）
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