夏になると必ず思い出すのが、中学三年の時のことだ。当時俺はプロ野球選手になりたいという一心で野球部に所属していたが、残念ながらレギュラー定着とはいかなかった。
三年として最後の夏、俺たちは地区予選一回戦で負けた。
その試合、俺は出させてもらえなかった。
最後の最後でも出させてもらえなかった。
それでも俺は必死になって声を出し続けた。
必死になって叫び続けた。
ベンチから精一杯声を出し続けた。
一塁コーチとして全身全霊で戦った。
しかし、チームは勝つことができなかった。
試合が終わり、挨拶をしてベンチに戻ろうとしたとき、涙が溢れ出していた。
こんなにも涙が溢れ出してきたことは今までに記憶にないほど、滝のように涙が流れていた。
監督である顧問の先生の話しも、引率として来ていた部員の父親の話しも、俺の耳には入って来なかった。
悔しかった。
情けなかった。
切なかった。
あぁ、これで終わっちゃったんだなぁ...
結局野球は草野球として楽しむだけで、プロ野球の選手になることは諦めてしまった。そして夏になると必ずあの時流した涙を思い出す。
もしあのとき勝っていたら、プロ野球の選手になる夢を諦めなかったのかもしれないな、と。
今の俺の夢は、甲子園のマウンドで投げることだ。草野球の大会でもいい。金を払って借り切ってもいい。生きている間に、憧れだった高校野球の頂点、阪神タイガースの本拠地である甲子園で投げることができれば、きっとあの時の涙と夢を終わらせることができる。
そう信じている。いや、ただの思い込みかもしれない。
今年も夏がくる。
夏の高校野球大会がまた始まる。
そして俺はまた高校球児に嫉妬する。
俺と同じ夢を諦めることなく追っている彼らに。
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