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2021年02月17日12:58

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劇場版・鬼滅の刃〜無限列車編〜

公開から4ヶ月ほど経ちましたが、先日ようやく見てきました。


半分くらいは映画の感想というより一連の鬼滅現象に対する雑感になると思います。
緩いネタバレ含みますので(無限列車編以降のネタは含まず)悪しからず。


ブームが起きていることはひしひしと感じていながら距離を置いていたのが10月の頃。
いくらコロナでかける映画が少ないとはいえ、驚異的な占有率で打って出た劇場の「鬼滅シフト」と、それでは足りん!とばかりに集結する観客の様子をニュースで見聞きするにあたり、これはいよいよ時が来たのだな…と感じるようになりました。

まずは手始めに劇場版までのエピソードを補完するためコミックスを買い始めることに。
電子版も考えましたが、今はまだ読めずとも、いつか子供たちが気軽に触れられるようにとブツが残る方を選んだのですが、店頭に並んだ翌日には売り場が消滅するのでなかなか揃いません(未だ7巻止まり)。
同時に知り合いのママさんからDVDを借りてアニメ版も網羅し、着々と準備を進めていきます。
そうこうしている内に千と千尋の興行収入を…「超える・超えない」ではなく「いつ超えるか」という話題になり、そしてあっさり超えてしまうという、俄には信じがたい状況になっていました。


ちょいと話が逸れますが興収について。

http://www.kogyotsushin.com/archives/alltime/

日本の歴代興行収入ランキングを見ると、そもそもアニメ映画がかなり強いことが分かります。
トップ10を見るとジブリ、ディズニー、そして第三勢力として頭角を表した新海誠作が並んでいますが、そのどれもが原作の無いオリジナル作品です(ディズニーには原作があるじゃないか、というツッコミは無しで)。

そしてこの3つの勢力を除いて2021年2月現在のトップ100に載っているのはコナン、妖怪ウォッチ、(スタンドバイミーの方の)ドラえもん、ミニオン、ポケモン、そして98位というキワキワのとこにONE PIECEです。
細田守作品が入ってないのは意外でした。

このラインはほとんど原作付きですが、そのどれもが「原作をアニメ映画にした」のではなく、「原作のあるテレビアニメの映画用オリジナル作品」です。
今回の鬼滅のように「テレビアニメの続きとしての映画版」(しかも元々深夜アニメで、その上完結編でも総集編でもなく全然途中というのがまた異質)は形態として珍しいし、原作付きオリジナル映画以上に観客層が限られてしまうので元来大ヒットなんかするわけないんですよ。
いや、してるんだけど。

さらに言えば地味にPG12という、お子様には諸手を振っておススメし難いレーティングを受けているにも関わらず、老若男女問わず全方位的に超絶大大大ヒットしているのでもうサッパリ意味ワカンナイよね。

コロナ禍を受けて対抗馬がおらず、そこに来ての鬼滅シフトだったことは有利に働いていると思いますが、じゃあこれがちょい前に公開されたハリウッド超大作「テネット」で劇場占拠してたとして、同じ結果になったとは思えません。
面白い・面白くないとか、作品として優れている・いないではなく、こんなに「浸透し得る作品」というのは現状どう考えても他に無いのです。
そして当然ですが、電車の時刻表の如き過密上映スケジュールに耐え得る作品だったからこそ、この結果が伴ったわけです。

じゃあ、この前代未聞の事態を引き起こした要因は何なのでしょう?
「主人公の優しさが不寛容な時代に…」とか「リーダー無き世に理想の在り方を…」とか「そもそもクオリティがバカ高い」とかよく言われてますが、それだって過去に全く例が無いわけではありません。
結局のところ、受けたであろうポイントを列挙することは出来ても、それが絶対的な要因かどうかは分かりません。
自分が今回ぼんやり考えたのは、売れた・売れないの要因を「点」で考えるのではなく、点在する点と点を結んで出来た「面」もしくは「図形」として考えなきゃいけないのかな、ということです。
その時々に求められている「欲求の穴」と「欲求を埋める図形の形」がピッタリハマった時にだけ社会現象級のヒットが生まれるのかな、と。
そしてそんな日々変容する欲求の形なんて誰にも予想できないということです。
鬼滅が世に出る前の時点で、オリンピックが中止になった2020年の日本において市松模様のマスクを着けた小学生が急増するなんて誰が予見できたでしょうか。


さて、そろそろ映画本編について語りましょう。


自分が劇場に足を運んだのが1月の終わり頃。
積極的にネタバレを踏みに行くつもりはなかったものの、3ヶ月以上もの間に周辺を漁っていればどうしても核心に触れざるを得ませんでした。
ズバリ、どんな結末を迎えるか…ということですが、主題歌の「炎」は歌い出しが「ありがとう、さよなら」だし「決意を餞(はなむけ)に」とかも歌ってるし、いつだったかの入場者特典は『背を向けて笑みを浮かべる煉獄さんとその前で涙するカマボコ隊のイラスト』だし、これどう考えてもダメなやつじゃないか、と。
出来ることなら完全無知で臨みたかったのですが、まぁ無理ですよね。
原作だって未読の部分のネタバレを既に食らってますし。


そんな状態で鑑賞…もとい乗車した無限列車でしたが、まずは気になった点を挙げます。


・説明セリフが多い
そもそも原作が抱えている問題として、状況説明についてナレーションを多用するクセがあります。
特に無限列車編はこれが顕著で、例えば炭治郎が今回の敵である魘夢(えんむ)の術で悪夢を見せられブチ切れるシーンがあるのですが、表情だけで伝わるのに
「この悪夢により炭治郎の怒りは頂点を超えた」
というナレーションをわざわざ入れるのはいくら漫画媒体であっても演出として過剰だと思いました。

その点、テレビシリーズではナレーションを徹底的に廃し、省略もしくは別の人物に語らせることで処理しています。
それは劇場版も同じなのですが、魘夢の能力はトリッキーゆえに結構な量の説明を要するもので、結果魘夢(及び魘夢に使役される人間たち)は自ら能力や作戦を懇切丁寧に説明せざるを得ません。
仕方がないとは言えやはりこの辺は不自然且つ冗長に感じました。


・ラストバトルの導入が唐突
原作を途中までしか読んでいないので、劇場版以後にかかる伏線があったのかどうかは分からないのですが、少なくとも映画だけで見ると今回のラスボス・猗窩座(あかざ)の登場はかなり唐突でした。

そもそもポスター等でこの猗窩座の登場は予告されており、『上弦の参』であることは一目瞭然(トップ3の実力者であることが瞳に刻まれている)なので、こいつが出てきたらヤバいことになるのは予想がついているわけです。
ならば、どういう不運でこいつと出くわしてしまうのか…そこがある意味一番気になっていたところだったのですが、特に登場の理由はなかったように見えました。
魘夢が死の間際に呼び寄せたとか、煉獄さんの闘気を嗅ぎつけたとか、本当に偶然だったけど「随分騒がしいんで来てみれば、楽しそうなことになってるじゃないか」くらいの不敵なセリフを吐かせるとか、何かしらの理屈があれば見る側としても「何てこった!?こんな最悪なタイミングで!」という絶望感が強まったんじゃないかと思います。
現状、唐突過ぎる登場に戸惑いの方が強く、結構本気でガッカリしました。


…で、ここからが個人的な備忘録として特に残しておきたい点になるのですが、上記のようにラストバトルが始まってしばらくは冷めた目で見ていました。
「あーあ、もう少しタメとか前フリがあったらもっと燃える展開になってたのに…」
ハッキリとこの文言が頭に浮かんでいたんです。


その時、不思議なことが起きました。

頭の中の動きとは関係なく、全身の毛が逆立っていることにふと気付いたのです。
いわゆる「感動で鳥肌が立っている状態」です。

一瞬、自分の身に何が起きているのか分かりませんでした。

「馬鹿な!この俺が、無意識に感動させられているだと!?」

まるでこれから倒されるラスボスのようなリアクションが頭に浮かびます。
こんなことは未だかつてありませんでした。
つまり、理屈であーだこーだ考えていようが目の前で繰り広げられている激戦の迫力、熱い意志の込められたセリフ、高揚感を奮い立たせるBGM、全身を包み肌を刺激する大音響に対し、無抵抗に心を震わされていたのです。

その事に気付いてからは小賢しい脳内の考えは霧散し、正しく全集中で物語の行く末を見届けることになりました。
このラストバトル、多くの観客が劇中の炭治郎&伊之助の「見届けるしかない」という想いにシンクロしたのではないでしょうか。
最終盤での感想については最早言語化できません。
ワーとかキャーとか頑張れー!とかア゛ァ゛ァー!!!とかそんな感じですよ。
怒涛の泣かせ展開に涙腺は最終防衛ラインまで突破され、瞼のキワに生まれた表面張力でのみ堪えていました。

特に個人的に一番キタのは炭治郎の叫び声。
あんなに胸に刺さる“負け犬の遠吠え”を私は聞いたことがありません。

『時を巻いて戻す術は無い』、そのことを誰よりも思い知らされてきた炭治郎の「止まれ、戻れ」という呪詛のような慟哭が、朝陽の下に儚く、そして虚しく響く。
命の枷から外れた者が慄き逃れ、命に縛られながらも強く生きた者は笑みを浮かべ、後に続く者へと希望を託す。
そして心に炎を灯した者達がそれを受け継ぐ。

とても美しく、心に残る幕引きだと思いました。

多くの人々が足繁く通うのも分かった気がしますし、少し遅くなりましたが映画館で見られて本当に良かったです。
自宅での鑑賞ではここまでの充実感と喪失感は得られなかったと思います。


色々歪なところはあるし、完璧な映画だとは思いませんが、今後しばらくは破られないであろう記録をこの無限列車編が打ち立てたことに関しては全肯定したいと思います。
コロナ禍という未曾有の厄災の中、全国のシネコンの希望の灯となったことも記憶に留めておくべきことでしょう。

というわけで『劇場版・鬼滅の刃 無限列車編』、私は超楽しみました。
アニメの二期も楽しみだし原作も引き続き読み進めたいし食玩見つければ手が伸びるしで、まだまだ鬼滅に浸かることになりそうです。
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