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2009年07月29日00:05

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アジア雑貨のような本

ある日退職することを決意した。
十分過ぎるくらい給料をもらっていたのだが
虚しい日々を送ることに耐えられなくなった。
それでニューヨークに行くことにした。
前に一度行ったことがありどうしてももう一度行きたかったからだ。
つまり会社を辞めた理由はニューヨークに行きたかったからなのである。

実家に帰って準備をしていると友人から電話があった。
「オレも会社辞めたぞ、お前暇だろう?一緒にバリに行かないか?」
あまりに唐突な誘いだったし、ニューヨークに行くつもりで会社を辞めたのに
何故インドネシアに行かなければいけないのか?と躊躇したが
友人の話を聞いているうちに段々と面白そうだと思い始めた。
結局ニューヨーク行きは後回しになった。

バリに行って受けた一番大きなカルチャー・ショックは
ヨーロッパ人の旅のスタイルにあった。
彼らは一ヶ月程度のバケーションを取りアジアにやって来る。
で、一体何をするのか、といえば何もしない。
何もしないが本だけは熱心に読む。
つまり一日中本を読み耽っている。
「目から鱗が落ちる」とはこのことだと思った。
そうなのか、これが本当のバケーションなのかと膝を叩いた。

それ以来日本で古本を買い込んでアジアを旅することが一番の楽しみになった。
バンコックの紀伊国屋書店で調達することもあった。
そしていろんなところに行った。
外国人観光客が滅多に行かない町や村に行き
静かな場所を探してそこで本を読み耽った。
私にとってそれが一番の贅沢だったのだ。

といっても楽しいことばかりがあるわけではなかった。
マレーシアのティオマン島に行った時は盲腸になり死ぬかと思った。
マレーシア人の医者では心配だったので
クアラルンプールに戻り日本人の医者がいる病院を探した。
その後すぐ帰国したのだがあまりにやせ細っていたので皆びっくりしていた。

今はもうそんなことは出来なくなった。
今振り返ってみるとそうやって辺鄙な場所に行って本を読むということをして
少しだけ人生観が変わったのかも知れない。

場所によって読者のアンテナの向きが変わるため、
同じ本を読んだとしても理解に違いが生じる。
そのギャップを楽しむのも面白いと思う。
海外で読んだ時はあれほど面白いと思ったのに
日本で読んでみたらつまらなかった、という本があることを知るだけでも勉強になるものだ。
本はアジア雑貨みたいだと思った。
現地で見ると素晴らしい、と思えるが
日本に持ち帰って見るとたいしたことない、と思えてくる。
本当に素晴らしいものはどこで見ても素晴らしい。
本も同じだな、つくづくそう思う。


【コラム】 日本初の“ゆるカルチャー”イベント「ブックツーリズム」とは?
http://news.mixi.jp/view_news.pl?id=910414&media_id=29
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