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2026年09月14日09:39

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イラン大使の話を直接聞いて、考えたこと

尊厳を持って引くことはできないだろうか――イラン大使の講演を聴いて

9月10日、一水会フォーラムで、ペイマン・セアダット駐日イラン大使の講演を聴きました。

演題は「平和を求める国・イランの真実を大使が語る」。

西側の報道に触れることの多い私にとって、イランの大使と参事官から直接お考えを伺える、大変新鮮で貴重な機会でした。

講演では、米国との交渉、核問題、戦争や制裁による国民生活への影響、そして日本への期待など、幅広いお話がありました。

イラン側が繰り返していたのは、平和、安全、安定を望んでいるということ。ただし、軍事力や制裁によって降伏を強いられることは受け入れない。一方で、対等な立場と相互尊重があれば、交渉も妥協もできるという説明でした。

その中で、特に心に残ったのが「ディグニティ」、国家の尊厳という言葉です。

自分たちの国の将来は、自分たちで決める。外から命令されて従うことはできない。その独立と主権を守りたいという気持ちは、私にも理解できました。

私には、イランが求めているのは、賠償や経済的な条件だけではなく、自分たちの尊厳を尊重してもらうことなのだと聞こえました。

長い歴史を持ち、イスラム共和国として歩んできたイランの人々の尊厳は、損得だけで測れるものではないと思います。

その政治体制をどうするかも、イランの人々自身が決めることではないでしょうか。今の体制を維持するにしても、変えるにしても、その選択を外から武力で押しつけられないこと。それは、尊厳を保つための最低限の条件なのではないかと思いました。
米国にも、そこを受け止めてほしいです。

講演を聴いている間は、イランは交渉も妥協もしているのに相手が応じない、という構図に感じられたのですが、フーシ派の紅海での軍事行動をめぐる報道と重ねると、少し引っかかるところもあります。

イランもまた、軍事的な圧力を使って相手を動かそうとしているのではないか。それが交渉の一環であったとしても、そこに巻き込まれる人々がいます。

米国にも、自国や同盟国の安全を守るという説明があります。それぞれの行為や責任を同じに扱うことはできませんが、双方が平和や安全を語りながら、相手に自分の条件を受け入れさせようとしているようにも見えました。

いつまでも続ければ大使がおっしゃっているように経済制裁は長期化し、すでに300%のインフレと弱すぎる通貨でイラン国民はかなり困窮している状況が有ります。

尊厳を守るために戦い続けることは理解できるけれど、尊厳を持って引くこともできるのではないか。

思い浮かんだのは、徳川慶喜のことでした。

私は以前、慶喜をあまり好きではありませんでした。けれども今は、恭順を選んだことを、戦火のさらなる拡大を避け、人々を守る決断として評価することもできると思っています。

そして、大使のお話にも出てきた太平洋戦争の日本の犠牲。大空襲や原爆投下を経験した日本だからこそ声をあげてほしいとのことでした。

敗戦受諾についても考えました。

私の祖父は、敗戦が濃厚になった時期に、家族も、経営していた事業もあったのに戦争に行き、亡くなりました。私には、行かずに済んだのではないかという思いがあります。

父も、自分の父親を失ったことについて、政府に戦争責任を問いたい思いがあったのではないかと感じています。
祖父には家族も仕事も、その先に続くはずだった人生もあったのです。

日本は自ら戦争を終える決断をしました。それでも、もっと早く決断できなかったのかという思いは残ります。

敗北を受け入れてでも、その先の国民の暮らしと国の将来を残した決断には、大切な意味があったと思います。

日本は戦争の被害の記憶とともに、戦いを終える決断の重さや、その判断が遅れる間にも命が失われていくという経験を、世界に伝えてもよいのではないでしょうか。

イランだけに願うことではありません。トランプ政権にも、イスラエルの指導者にも強引に力で押し、一旦締結した条件を反故にするのではなく
相手の尊厳を尊重できないものか。

戦争の負担は、戦場で失われる命だけではありません。エネルギー供給が脅かされれば、ガソリン代などの生活費にも影響し、戦場から離れた国民の暮らしまで苦しくなります。

多くの国民を背負う指導者には、戦い続ける覚悟だけでなく、まだ守れる命や暮らしがあるうちに引く責任もあると思います。

もちろん、どちらかが引いたからといって、必ず相手も応じるとは限りません。それでも、一方が一歩退くことで、相手にも応じる余地が生まれることはあるはずです。

そのときに、相手が弱くなったとさらに追い込むのではなく、お互いに引ける道を残してほしい。

大きな犠牲を払い尽くして、ようやく終わるのではなく、なるべく早く、双方がそういう決断をできたらと思います。

国家の尊厳を守るために戦う。その決意は伝わってきました。

しかし国民の命と将来を守るために、自分たちの意思で引く努力もして欲しいと願ってしまいます。
取り返しがつかなくなる前に。

簡単な答えがあるとは思いません。ただ、イランの方々のお話を直接伺ったからこそ、そんなことを考えた夜でした。
フォト


写真: 右 セアダット大使
   左 モサヴィサデ参事官
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