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2022年02月03日17:13

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ロシアは欧米の経済制裁に対応済み

緊迫のウクライナ情勢 ロシアへの経済制裁が効きにくい理由
2022.2.3

 筆者とロシアビジネスとのつながりは、かれこれ15年以上になる。初めてモスクワを訪れたのはまだリーマン・ショックが起こる前の2007年であった。当時は上昇し続けた原油価格のおかげで(翌2008年には1バレル150ドル近くまで到達)ロシアは好景気に沸き、モスクワ市内はベントレーやマイバッハ、ロールス・ロイスなどの高級車で埋め尽くされていた。ルーブル高の進行もすさまじく、市内のレストランで食事をするたびに高額の請求書に驚かされたことをよく覚えている。モスクワ経由で、当社のロンドン本社に寄った際には、物価の安さにほっとしたぐらいだ(それでも当時のロンドンは、1ポンド約250円の時代で、ラーメン1杯5000円ぐらいした店もあったが……)。

 ロシアはプーチン大統領のこわもてなイメージが強いので、威圧的な国民性かと思いきやモスクワ市民は素朴で穏やかである。2018年にサッカーのワールドカップ(W杯)ロシア大会に観戦へ行った多くの知人からは、ロシア人のイメージを覆されたとの感想も多かった。ただ2014年のクリミア半島併合に続き、ロシア軍によるウクライナ侵攻の懸念が再び強まっていることが、またしてもロシア国民全体のイメージに暗い影を落としている。

 2021年12月17日に、ロシア外務省が公表した安全保障に関する新たな文書によると、ロシア側は�)迷臉祥両鯡鶺々宗�NATO)の東方(旧共産圏)拡大を止め、ウクライナおよびジョージアのNATO加盟を認めず、��1997年以降、ブルガリアやルーマニアを含めた東欧に配備した軍事力の撤去、��NATOの軍事演習への制限などに対し、法的保証を要求している。

 むろん、米国のバイデン政権がこれらの要求を受け入れることができるわけもない。2022年1月21日の米ロ外相会談で、ロシアの提案に対し書面での回答を求められたことを受け、米国はNATOと協議をして策定した回答を、1月26日に送付した。回答は公開されないが、米国は東方拡大の巻き戻しという、いわば冷戦後の欧州における安全保障秩序の書き換えには応じられないとして、ロシアの主要提案に対する拒否の姿勢を貫いている。

 米国を中心に西側諸国は、対話を通じて武力衝突を回避しようとしているが、現段階では交渉は手詰まりに陥っている。それゆえ、ロシアがウクライナに軍事侵攻した場合には、欧米は厳しい制裁を科すと警告している。

 ロシアは2014年にクリミアを併合し、ウクライナ東部の分離独立紛争を支援したことで、初めて西側諸国の制裁に直面した。ルーブルは暴落し、経済成長は鈍化したが、慎重なマクロ経済および金融政策によって、破綻を免れた。それどころか原油による収益から数十億ドルを将来の世代に向けた資金の蓄え先である、ロシア国民福祉基金として確保すらした。西側諸国による制裁は現在までも長期にわたり続いているが、ロシアはそれなりの対処法を身に付けてきている。

効かない制裁にイラつく米国

 制裁により、プーチン大統領の親しい友人に関係した民間銀行のいくつかが米ビザや米マスターカードのクレジットカード決済を処理できなくなったため、2015年には独自の決済システム、MIR(ミール)を立ち上げた。それ以降、ロシアで老齢年金や福祉給付を受領する際には、MIRカードの利用が標準となり、既にロシア人口の半数はMIRカードを保有している(ちなみにMIRとはロシア語で「平和」を表す)。

 もともとロシアはソ連時代のルーブル経済圏で国家を運営した経験の蓄積もあり、西側諸国からの制裁下でもそれほど大きな支障なく経済的自立ができる状況にある。2014年以降続く欧州連合(EU)からの食料品の輸入禁止により、首都モスクワでも西側諸国の製品が手に入らなくなった。ただ、ロシア人はソ連時代のモノがなかったころから、国内にあるもので代替品を作る能力にたけている。イタリアの某ブランド品にそっくりなロシア産パスタや、スイス産と見まがうチーズなど、パッケージはほぼ同じで中身がロシア産の製品が至る所にあり、経済制裁の影響をものともしないロシア国民のたくましさが見受けられる。

 また2014年当時のロシアでは、金融機関の国際銀行間通信協会(SWIFT) へのアクセス切断といった制裁案が最も懸念されていた。アクセス切断は大きな影響を与えるため、西側制裁のいわば最終兵器と見なされ、今回もバイデン政権は慎重にその言及を回避していた。そのためロシアでは、SWIFTからの締め出しが起こる危険性から、独自のシステムSPFS(Sisteme Peredachi Finansovykh Soobshchenii)を立ち上げている。17年3月に稼働準備が整い、18年3月時点で、ロシアの金融機関(大半が銀行)400超が加盟し、国内のSWIFT加盟数を上回った。SPFSの利用コストはSWIFTの3分の1にまで引き下げられていることもあり、20年にはロシアの銀行によるSPFS利用額は大幅に増えている。

 対イラン制裁でSWIFTへのアクセス切断が行われた際には、それなりの効果を示した。ただSWIFTも、突き詰めていえば銀行間のメッセージ伝送システムの1つである。切断は、ロシアにとって面倒な事態となるが、テレックスなどの解決策は存在する。このため、SWIFT切断は、西側諸国が期待しているほどの影響を持たない可能性がある。ロシアは少なくとも表面上は、SWIFT切断の影響力を認めず、開戦の意欲をそぐことにはならないだろう。

 また、ここ数十年において、米国の経済制裁は多用された観もある。米国の経済制裁は国際緊急経済権限法(IEEPA)の下に実行され、決済・清算システムの利用凍結、関税賦課や輸出制限などが含まれる。しかしその対象国が相当に多く、また長期にわたり、ベネズエラ、イラン、北朝鮮といった強力な勢力も含まれている。このためこれら制裁対象国がある種の同盟的関係となり、金や暗号資産、資金洗浄に関するコンタクトを共有するような事態に陥っている。

ドイツ、イタリアなども戦争回避を切望

 ロシアが欧州へのガス供給制限を武器化することは自明であり、ガス価格の急騰を呼ぶことになる。問題は欧州が本当にロシアから石油やガスの輸入を止める意志があるかどうかということになる。西側諸国がロシアの石油やガスを制裁対象にしたとしても、代替の調達源は簡単には見つからない。SWIFTへのアクセスを切断した場合、ガスや石油の輸入に対するロシアへの支払いをどうするのか、という問題に直面する。

 ロシアからのガス価格が高騰すれば、ノルウェーやカタールといったガス輸出国にも波及効果が出るのは必至である。欧州では冬季の暖房にガスが多用されていることに加え、化学やセメントなど様々な業界の製造プロセスにガスが利用されている。また、発電のエネルギー源としても広く利用されているため、エネルギー価格のさらなる高騰につながり、経済広範に影響を与えることになる。結果的にインフレ加速は逃れ難い状況となる。

 ただし、資源価格高騰の影響は、国によって濃淡があると考えられる。これは、ロシアからのガス輸入への依存度の違いであり、ロシアからの輸入割合が5割近くと非常に高いドイツやイタリアには相当の打撃が予想される。イタリアのドラギ首相は、欧州企業とロシア経済との結びつきを理由に、厳しい制裁を科すことはほとんど不可能であると述べて、米国をけん制している(2000年代のベルルスコーニ政権以降、イタリアとロシアは友好な経済関係を続けている)。一方、ガス輸入元が分散しているフランスや、ノルウェーからの輸入の占める割合が多い英国は、ロシアが欧州へのガス供給を遮断しても、壊滅的な影響にはなり得ない。

 また米国は発足したばかりのドイツ連立政権に対し、ロシアからドイツまでを結ぶガスパイプライン、ノルドストリーム2(NS2)の承認を中止するよう圧力をかけている。NS2の建設は終了しているものの、ドイツ政府および欧州委員会の承認待ちの段階にある。ロシアへのガス輸入依存度が深まるとの懸念を巡りNS2は既に米国とドイツの間に溝をつくり、欧州での不和の種となっていたが、現在のウクライナ危機により、ドイツ連立政権内での争いのもとにもなっている。ドイツ社会民主党(SPD)は伝統的に親ロシアのスタンスを取り、緑の党は米国に近い姿勢を見せている。

 ウクライナ情勢は、ドイツのメルケル前首相の慎重な中道政策を踏襲する実務派のショルツ首相にとって、就任後初めての大きな危機となる。首相として初めての公的声明において、ショルツ首相は極めて慎重な姿勢を示した。紛争の平和的解決の必要性を強調し、欧州国境を武力で変更すべきではないと主張したが、NS2には触れず、バイデン政権からのプレッシャーには屈していなかった。ロシアがNS2承認中止の報復措置として、冬場にガス供給を制限すれば、凍死者が出る可能性も否定できないお家事情がある。

嘲笑を買ったドイツからウクライナへのヘルメット供給

 このように、ロシアに対し強く出られないドイツは、1月26日、ウクライナに武器の代わりに軍用ヘルメット5000個を送ると発表し、国際的な嘲笑を買っている。キエフ市長などはこの発表を「冗談もいいところだ」と批判している。ウクライナはドイツに対し、軍艦と防空システムの供給を求めたが、ショルツ政権は紛争地域に武器を供与しないという長年の政策を固持する方針を示した。

 またドイツは2021年にNATOによるウクライナへの武器供与に拒否権を発動し、ウクライナへの榴弾(りゅうだん)砲供与に拒否権を発動している。この榴弾砲がもともとドイツからエストニアへの輸出品であったためである。また、このような姿勢は政府だけではなく、旧東ドイツ出身者を中心に、公然とロシアに味方するドイツ国民も少なくない。英調査会社ユーガブの世論調査によれば、ドイツ国民の半数以上となる52%がウクライナ防衛に自国の軍事力を利用することに反対する方針を支持し、賛成するとの回答は23%にとどまった。

 なお、1月26日に米国務省の報道官はロシアがウクライナに侵攻した場合にNS2の開通はあり得ないと述べたが、ドイツが同様のスタンスかどうかについては言及しなかった。ただドイツのベーアボック外相は連邦議会の答弁で、ロシアがウクライナに侵攻した場合の制裁パッケージについて西側同盟国と協議を進めていると述べ、このパッケージにNS2が含まれていることを認めている。ショルツ首相も遅まきながら、ウクライナ侵攻時にはNS2に何かしらの制裁を科すことに合意し、米国および緑の党の要求を受け入れた。ただ、具体的なコミットメントは曖昧であり、侵攻時に甚大な報復措置が取られるとの警告も、中途半端な感じが否めず、抑止力が高いとはいえないであろう。

プーチン大統領の本当の狙いは?

 プーチン大統領の主要な政治的目的は2つである。1つは、安全保障に関するNATOからの保証を獲得すること、もう1つはミンスク合意をウクライナから実施することだ。そもそもロシアはウクライナとの戦争は極力回避したいことは自明である。クリミア併合以降、ウクライナの領土をそれ以上併合しようとする意欲がロシアにほとんどないことは明らかである。特に、ロシアにはチェチェン紛争時のような反体制派による激しいテロ活動を回避したいとの思惑があり、ウクライナでの市街戦は是が非でも避けたいであろう。

 チェチェン紛争は、ロシア連邦内の共和国の1つ、チェチェン共和国の分離独立運動であり、ロシアにおける民族紛争の中では最も激しい戦闘が繰り広げられた。1994年から1996年、および1999年から2009年までと2回紛争が激化し、ロシア軍の侵攻と独立派の武装組織による激しいテロ活動が起こった。

 特に1999年8月にチェチェンの武力勢力が隣国ダゲスタン共和国のワッハーブ主義(イスラム改革運動)を支援する名目で、ダゲスタン共和国に侵入。ロシア連邦軍はミサイル攻撃などで反撃したため、泥沼の武力衝突が再発した。2000年に就任したプーチン大統領は、地上軍派遣に加え、チェチェン共和国の首都グロズヌイ空爆を行ったが、武装組織のテロ活動も激しくなり、2002年のモスクワ劇場占拠事件をはじめ一般市民を巻き込む事件も起こった。

 また仮にウクライナで紛争が起こったとしても、ドンバス地方で代理戦争にとどめる可能性が指摘されている。クリミア危機当時のドンバス戦争やミンスク合意の目的は、ウクライナ征服ではなく、ウクライナを内側からコントロールすることであった。そのためウクライナにはNATOから、分離独立派にはロシアから、武器の供与や兵士の投入が続くことになる。そこで、ドンバス地方の緊張緩和に向けて今年1月26日に、独仏の仲介でロシアとウクライナとの4カ国協議が行われた。しかし、事態を打開するブレイクスルーは見られず、ロシアは分離独立派に代わってウクライナと議論することは拒否するなど緊張が高まる場面も見られた。ただし少なくとも今後2週間はロシアが西側諸国およびウクライナと外交的な対話を続けるとの期待にはつながっている。

 またロシアは、当初は必要に応じすぐ軍事活動を中止できるような局地戦にとどめようとするにしても、ウクライナの抵抗が続けば、ドンバス地方から、さらにクリミア半島からと多面的な攻撃に移る可能性は否めない。ただ、たとえ全面戦争となったとして、ロシアは首都キエフまで進軍することはもとより、死傷者を多く出し、難しい状況に陥りやすい都市部での戦いは極力回避することになろう。そのため(ウクライナ)本土へは、ウクライナのミサイル防衛力が弱い点を突き、長距離砲やロケット、巡航ミサイルを利用した空爆をまず行い、それでもウクライナが譲歩しなければ、地上部隊が投入されることになるだろう。

回避すべきスラブ民族同士の戦争

 ロシアのペスコフ大統領報道官は、1月26日の米国からの回答を受けて、対話継続は米ロ双方の利益になると認めた。ただし、ロシアの要求の主要点を米国とNATOが受け入れられないと言及しているため、楽観できる状況ではないとくぎを刺してはいる。ラブロフ・ロシア外相も、真剣な協議を開始する希望はあるものの、根本的な問題に関してではないと述べた。ただし、北京オリンピックが開幕する中国は、米国に対しウクライナ情勢に関与するすべての当事者が冷静を保ち、緊張を高めないよう要請した。

 そのような中、英国メディアは、ロシア国民が既に戦争の準備ができているかのような論調で連日報じている。筆者がモスクワの知人にこの話をすると、「そこまで深刻な状況になっているの?」と疑問が返ってきたことには驚いた。ロシア政府および民間メディアでは、今すぐ開戦などとあおるような報道は皆無とのことだ。これはウクライナメディアの報道でも大差なく、先日のゼレンスキー・ウクライナ大統領の西側メディア向けの記者会見で、「戦争? それはないと思うけど……」との、執拗に開戦の可能性を尋ねる記者への回答が印象的であった。

 ロシア外務省の報道官は、ロシアとウクライナとの間に戦争が起こると考えることすら、許容し難いとも発言している。当然ながら、大半のロシア国民は、西側諸国やウクライナとの対立が続くことには反対しており、仮に戦争となると、「怖いし不愉快だし、関わりたくない」という態度を鮮明に示している。プーチン大統領は、副大統領時代から長きにわたり協議を重ねているバイデン大統領との交渉には自信を示している。

 一方で、両軍のにらみ合いの中、偶発的な軍事衝突が起こる、あるいは双方のいら立ちから国境沿いでの小競り合いが発生し、大規模な紛争に発展する可能性は否定できない。しかしながらロシア・ウクライナ両国民は心底、東スラブ人同士の悲惨な戦争の回避を望んでいることを忘れてはならない。西側諸国およびロシア双方に、勝者なき紛争の回避が求められていることは言うまでもない。
https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00216/020100023/
バイデン大統領が切り札としている経済封鎖は、ロシアにとって既に痛くも痒くも無い外交カードになっているみたいです。
道理でプーチンが米国側の言うことを訊かない筈です^^;

今頃になって慌てて群を動かし始めましたが、せいぜい東欧の一部を守るだけで精一杯でしょう。
ウクライナと国境を接しているルーマニアとポーランド辺りまでが限界だね^^;

米ロの睨み合いは、この騒ぎの中心にいるウクライナがバランス外交に失敗したのが原因です。
韓国がバランス外交で失敗しているのを見てわかる様に、難易度が高く実現困難です。
38度線が半永久的に継続するのと同様に、ウクライナ東部にも停戦ラインが存在する事になるでしょう。

米、NATO軍増強へ3000人派兵 ウクライナ問題受け
2022年2月3日 1:54
ドイツに駐留する約1000人を東方のルーマニアに移し、さらに米国から2000人をポーランドとドイツに配備する。この2000人は、ノースカロライナ州のフォートブラッグ(Fort Bragg)基地からの派遣と報じられている。
https://www.afpbb.com/articles/-/3388247

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