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2026年10月21日01:16

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ストーカーから逃げるために森の中の一軒家に二週間隠れていたという話

困ったものです。昼夜逆転というより、一日のどこかでいきなり発作的に寝るというパターンになってしまった。
眩暈が激しくて起きると吐きそうだし食慾は皆無だし、廃人みたいに一日中寝ていることもある。14歳の猫が心配して顔をちょんちょんしてくるぐらい。
あるいは、来客の予定があって、エスタロンモカを三錠ほど飲んでお茶していたら、夫も交えて話していたのに、いきなり「ぐるぐる」と「発作的眠気」が来て、夫に「あ、ダメになるごめん」と言ったまま意識を失った。そして「ドスン」というすごい音がして目が覚めた。わたしは壁に向かって重たいリュックを投げつけていた。夢の中でそうしろと言われたのだ。お客は帰り、夫が夕食を作ってくれていた。二時間ほど死人みたいにソファで寝ていたという。

病院へ行けと言われても、もう病院ジプシーにも飽きるほど回りましたよ。精神科もね。この症状は悪化していて、「睡眠」あるいは「気絶」を自分でコントロールできない。あるいは「気絶」してるのにパソコンの前でわけのわからない文章打ち込んだりしている。
このまま生きた幽霊にでもなりたいぐらい色々と恥ずかしい。ごめんよごめんよ、わたしの大事な夫。
一つ病院でわかったのは、甲状腺に良性の腫瘍があり、(それも複数)また甲状腺がやる気がなさ過ぎててホルモンが恐ろしく低下しているので、眠気と「寝たきり状態」と「記憶力低下」はだいたいそのせいだという。あと自律神経がメタクソらしい。そうか、それはその、もうしょうがないね。

というわけで、直立歩行もむつかしくなってきた私が夜にすることと言えば、こうしてキーを叩くこと。
では、ポンコツな私を抱え込んで家事のほとんどを受け持ってくれてる夫が「ストーカー」と化していた時のことでも書こうと思う。
夫とはまごうことなき見合いで出会ったのだが、あった翌日から鬼電が始まった。そしてあまり日にちを置かずにデートまたデート。緊張のあまり、と本人は言うが一時間に6回もトイレに立った時は思わず「あの、大丈夫ですか」と声をかけた。
まー本人が言うにとにかく私をゲットしようと決めたのでさっさと結婚にこぎつけたかったらしい。おまけにメタクソに贈り物を自宅まで持ってくるので、わたしは怖くなり、(漫画画きで忙しかったし)「あの人押しが強すぎて怖いから断る。いいでしょ」と。
母もちょっと異様な迫力を感じていたらしく快諾してくれた。だが現夫は引き下がらなかった。直接私と会話しなければ納得いかないという。

そこで私は執筆中の漫画原稿をもって、逃げた。町田市のド田舎の森の中にある、父の設計した一軒家へ。どういういきさつでこの家を設計したか知らないが頼まれたと当人は言っていた。だがだれも住むことなく数年、その平屋は森の中にほったらかされていた。森というか林というか不思議な場所で、隣には「現役の廃屋」みたいなぼろ屋に大家族が住んでいて、ほかに家はなし。ちょっと離れたところに教会があって私は誰もいない空間で十字架のキリストさんに長年そんな姿で痛くないですかーとか声をかけていた。

実家に聞くとやはり現夫は鬼電したり押しかけてきたり大変だったらしい。一方わたしは、隣の夫婦喧嘩と子供の泣き声の絶えない家を除けばこの静かな環境が気に入っていた。夜、誰もいないダイニングルームで原稿を描くと、はかどるはかどる。一生ここに住んでいてもいいと思った。
家じゅうが埃臭かったがあまりまじめに掃除はしなかった。夜になると玄関付近で足音やバサバサと鳥の飛び回る音がするがもともと実家が化け物屋敷だったので別に気にならない。
さて和室で布団しいて寝るか、と押入れを開けたら、いきなり押し入れの上の段から、
「タランチュラ」としか思えない、手のひらサイズの黒いたくましい蜘蛛が「ぼとっ」とわたしの足の上に落ちてきた。
キミ南米から来たの?
蜘蛛は先住民なので同居をおゆるしいただくことにする。
困ったのは疊だ。もったりと湿っぽい布団を一そろい敷いて、さて寝ようとすると何か畳全体が小麦粉を散らしたように見えるのに気付いた。
何の粉かと目を近づけたら、粉はコナでも粉ダニだった。一粒一粒が畳の目から出たり入ったりしている。その数と言ったら。
長年人が住んでいない家の現実を前にして、わたしは粉ダニさんたちに
「あなたたちに迷惑はかけないので布団の上までは上がってこないで、お願い」と声をかけた。
するとお願いを聞いてくれたのか、敷きっぱなしの布団の上には粉ダニは上がってこなかった。ならそれでよし。
(あ、一応できる限りお掃除しましたよ。でも無駄です、昼間は目につかなくても夜になると畳目の間からぞろぞろ出てくるんです)
わたしはかなり離れたスーパーまで食料を買いに行き、適当に料理をしては漫画を描く、というとても幸せな毎日を送った。たとえ一人でも、タランチュラと粉ダニがいてくれるので寂しくはなかった。(ウソ)蜘蛛は和室のあちこちをとてつもない大きさでのし歩いてましたね。
やがて二週間して帰宅すると、彼にきっぱり断ったと母に言われた。
だが翌年ある人に騙されて(ここら辺ややこしいので省略)私たちは再び会い、わたしはもはやこれまで、とプロポーズを受けた。
では、言わねばならないことがある。

わたしは14のころから精神科に通っている頭の壊れた女です、閉所恐怖でパニック障害で鬱病で真性不眠症で強迫神経症で、薬の影響で子供は無理かもしれないがそれでよろしいかと聞くと、もちろんです、ぼくに賭けてください、とニコニコ握手をされた。

まじか、わたしは嬉しいというより「これで一生一人の男性を不幸にするんだ」と思った。相手がそれでいいならもう知らない。

わたしの言うことを甘く考えていたから今があるのだ、夫よ。
わたしはちゃんと言ったからね。
でも、「プロポーズしたときと今と全然君を好きな気持ちは変わらない」と堂々と言われた。
わたしが見るに彼は私以上に「とにかく深い意味で変な人」なのだ。
こんな相性ピッタリの、ひとの範疇を超えるぐらい変な人に出会えてよかったと思ってはいます。結婚した翌朝、いろいろと不審だったので「あなたはホモですか?」ときいたら「ええええ!?」とびっくりしていた顔がかわいかった。だってこんな自分を結婚相手に選ぶ男なんてホモ隠しとしか思えなかったんだもん。
「違うんですか?ほんとに?」と言ったらえらく落ち込んでいたな。
いまさらだがごめんよ。わたしの一生を支えてくれて、ほんとうにありがとう。

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