森田るいの漫画『我らコンタクティ』を読んでみたので、その感想。この感想はネタばれありです。
冴えない会社員をしているカナエは、小学校時代の同級生中平かずきと再会する。彼はナゼか一人でロケット開発をしていた。かずきの驚くべき目的を知り、カナエは思わず脱力!だけど、二人は一緒にロケット開発をすることに!カナエとかずきが小学校の時に見たUFOも絡み、思いもよらぬ方向へ物語は進む!
(公式商品紹介ページより抜粋)
この漫画と出会ったのは2018年のネットカフェ。その頃は家でインターネットの設備が整ってなくネットカフェに通って同人誌の原稿を書いていた。その時にこの漫画を見かけなあらすじが面白そうだと思ったが、原稿を書くのを優先して読むのを先送りにしていた。
それから8年近く経ってしまったが読了した。
主人公の「椎ノ木カナエ」は会社でパッとせず、飲み屋で社長にも小言を言われてしまい、会社を辞めようと決意する。
そこに小学生の時に同級生だった「中平かずき」と再会。かずきは実家の町工場の設備を使ってロケットを開発していた。かずきにロケットの燃焼試験を見せてもらったカナエはかずきのロケット開発に関わっていく。
ロケット開発を民間でやろうとするフィクションは小説『夏のロケット』や漫画『なつのロケット』があって、その流れを汲んでいる。
『月刊アフタヌーン』連載というのもあるからか、この漫画だと登場人物の癖が強い。カナエも当初はロケット開発に手を貸したのも今の会社を辞めるためで、かずきを利用する気満々だった。かずきもかずきでカナエを待ち伏せしているストーカーっぽいところもあったりする。
かずきがロケットを作ろうとする動機も、小学生の時にカナエと共にUFOを目撃したことがあり、UFOに自分達が見て良かった映画を見せるために映写機をロケットに搭載しようとする。そこら辺が他のロケット開発漫画とは違う独自性がある。
かずきが行きつけのスナックのママは紙幣を燃やそうとするヤバさもあり、かずきの兄で工場の跡継ぎであるテッペイもかずきとはうまくいっていない。
どこか欠けてる不完全な大人達がそれを埋めようとする手段としてロケットの完成が描かれているように見える。
テッペイの協力もあり、無人島でロケットの打ち上げを行おうとするも宇宙開発機構や公安が立ち入り検査でやってくる。機構の教授はかずきの才能を認め、自分達と共にロケットを開発しないか誘うが、かずきが断ったことで打ち上げをストップさせてしまう。教授は根からの悪人ではないが、かずきの手柄を横取りしようとする汚い大人でもあるな。
かずき、カナエは教授たちを出し抜いてロケットの打ち上げを決行させた。公安が突入して二人とも逮捕されそうになるが、ロケットの打ち上げ状況を監視する人材が必要と言って、かずきの身代わりにカナエが御用についてしまう。かずきのロケット開発を自身の野心の実現手段として見ていたカナエがかずきの夢のために犠牲になろうとするのは、彼女の成長を感じられる。
打ち上げられたロケットは大気圏を越えて宇宙空間に到達。ペイロードのスクリーンとフィルムが展開して宇宙に映画の映像が映し出される。
1巻で完結していてUFOは本当に実在していたのか明かされてないが、ロケットの打ち上げまでは描いているので、コンパクトにまとまっている印象。
ロケットの燃料とか科学的考証はそこまで厳密にはなってないが、だからこそ人間ドラマや宇宙で映画を上映しようとする奇抜なアイデアが光る漫画だった。
作者の森田るいはアフタヌーンで読み切りの連載を重ね、本作が初の単行本となっている。それ以降漫画の商業出版は見かけないが、今は森田るり名義でインディーズ漫画や絵本を手掛けている様子。独特な絵柄は唯一無二の良さがあるので、またお目にかかりたい。
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