消費税、簡単には下げぬ欧州 減税期間・財政計画を明示
2025年4月16日 11:30
トランプ関税やインフレへの対応策として与野党から一時的な消費減税を求める意見が出ている。リーマン・ショックや新型コロナウイルス禍などでの海外の対応を参考にすべきだとの声も多い。欧州の例をみると、事前に減税期間や将来の財政再建計画を明示するなど過度な財政悪化を防ぐ工夫を講じている。
石破茂首相は「税率の引き下げは適当ではない」との見解を示している。消費税は社会保障に充てる重要な財源で、減税は望ましくないという考え方だ。15日には自民党幹部も消費税の減税案に否定的な姿勢を示した。
だが財務省内では「政治情勢次第で、首相の考えは変わり得るのでは」との見方が消えない。3月末には首相が「諸外国でもいくつかの例はある。一概に否定する気はないが、検証をさせていただきたい」と答弁する場面もあった。
事前に減税期間を宣言、独英は「6カ月」
海外の例では新型コロナウイルス禍の対応が記憶に新しい。複数の国が消費税にあたる付加価値税(VAT)の一時的な引き下げに踏み切った。外出禁止などのロックダウンにより異例の凍結状態に陥った経済を再起動させるのが狙いだった。
ドイツは20年7月から標準税率を19%から16%に、食料品などの軽減税率も7%から5%に下げた。一時的とはいえ税率を下げたのは、制度開始以来初めてだった。英国は同時期から飲食・観光業向けの税率を20%から5%に落とした。
大事なのは各国が減税の終了時期を事前にはっきり明示した点だ。ドイツは20年6月に「減税は12月までの6カ月間」と発表した。英国は後に首相になる当時のスナク財務相が演説で「20年7月15日から来年の1月12日まで」と具体的に説明した。
日本では「党内に2年程度の期限つき消費減税という意見がある」(フジテレビ番組で自民党・佐藤正久幹事長代理)、「食料品の消費税率を2年間ゼロ」(日本維新の会)といった声があがる。海外の例よりも開始や終了の時期が曖昧で、期間も長い。
海外も「税率戻し」を延期
「一度下げると、元に戻すことも相当な政治的エネルギーがないとできない」(自民党の鈴木俊一総務会長)というのも重要な論点だ。減税をやめる時期を事前に明言した海外でも経済の回復を優先して、再増税を遅らせた例が相次ぐ。
英国は当初予定の21年1月には元に戻せず、21年10月に再引き上げを始めた。まず12.5%まで上げ、段階的に22年4月に20%に戻した。
宿泊・サービス・出版などで20年7月から減税したオーストリアも、同年末に税率を戻す予定だったのを1年延長した。
日本の場合、22年1月に始まった政府のガソリン補助金が、気候変動対策への逆行などの批判がありながら直近まで続いてきた。消費減税を元に戻すハードルがガソリン補助金より高いのは間違いない。仮に食料品の税率をゼロまで下げて復活できなければ、税収に年間5兆円の穴があき続けることになる。
景気回復後の財政再建を予告
一時的な引き下げでもう一つ有名な例が、リーマン・ショックへの英国の対応だ。約125億ポンド(当時の相場で約1兆8千億円)の財源を投じて税率を17.5%から15%まで下げた。事前に08年12月〜09年末までの13カ月間を減税期間と明示した。
加えて注目すべきなのは、景気回復後の財政健全化策や向こう5年の財政見通しを同時に示した点だ。減税など大規模対策で財政が悪化するのを見越した対応だ。
盛り込んだのは11年4月からの所得税の最高税率や国民保険料率の引き上げなど。これらの対策で13年度までに財政赤字の国内総生産(GDP)比を3%未満まで段階的に下げ、11年度以降の債務残高GDP比の増加を抑える道筋を描いた。
そもそも今の日本経済は、リーマン・ショックやコロナ級の財政支援が必要な「国難」といえる状況なのかどうか。
野村総合研究所の木内登英エグゼクティブ・エコノミストはこれから日米交渉に臨むトランプ関税については「影響が未知数で、いま対策を決めるべきではない」と語る。物価対策としても「生活に困っている所得層の人々に絞って、給付金を支給するのが望ましい」と指摘する。
日本はGDPの2倍超という先進国で突出した債務残高を抱える。金利ある世界の復活で利払い費の増加も見込まれる。消費減税の議論はしばらく消えないとしても、具体的な財政の見通しなしに税率を引き下げる余裕はないはずだ。
(編集委員 中島裕介)
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA149XP0U5A410C2000000/
>簡単には下げぬ欧州
下げた実績があるじゃないw
日経さんはザイムの味方だとハッキリしました^^;
ログインしてコメントを確認・投稿する