Amazonプライムビデオ限定配信ドラマ「仮面ライダーBLACK SUN」を見ました。
アマプラに登録したのはこのためと言っても過言ではありません。
https://m.youtube.com/watch?v=ZBkKeIN-dHU
今尚根強い人気を誇る「仮面ライダーBLACK」を監督・白石和彌、主演・西島秀俊、そしてまさかの18歳以上の成人向けコンテンツとしてリメイクするというあらゆる面で規格外な布陣に、製作発表時から高い期待を集めておりました。
自分もその内の一人です。
(ここからしばし、『俺と仮面ライダー』について言及します)
しかし、自分はライダーに関してさほど思い入れがあったわけではありません。
幼少期にリアルタイムで放送されていたのは仮面ライダーBLACKだけで、見てはいたはずなのにどんな物語だったかは全く記憶に残っていません(主題歌と、宿敵シャドームーンの異常なまでの格好良さは強烈に印象に残っていましたが)。
恐らく当時の自分にはシリアスな雰囲気が少々難しかったのだと思います。
そんな自分ではありますが、コンスタントに製作されていたゴジラにはハマっていたので、特撮というジャンル自体には愛着がありました。
それでも「仮面ライダークウガ」から始まった平成ライダーシリーズはほとんど見ておらず、ちょくちょく横目で眺めたり(新ライダーのデザインを見て)「また今回は攻めたビジュアルだなぁ」と、新作発表のニュースを楽しむ程度の距離感を保っていました。
一部の例外を除いて。
その数少ない例外の一つが「仮面ライダーアマゾンズ」です。
https://m.youtube.com/watch?v=Nffq3moyNig
こちらの作品もBLACK SUN同様、Amazonプライムビデオでリリース(後に地上波でも一部修正されて放送)されました。
そしてコンセプトも非常に重なるところがあります。
つまり、昭和ライダー作品を大人向け作品としてリメイクしたというところです。
端的に言ってグロい。
全編通して血生臭い描写が満載で、とてもじゃないですが日曜の朝…プリキュアの前後になんて放送出来ません。
そして物語もいわゆる勧善懲悪ではなく、食人衝動を抱えた実験体・アマゾンを巡る悲哀に満ちた展開で、BLACKでさえ飲み込めなかった幼い頃の自分なら裸足で逃げ出す内容になっています。
メインターゲットが大人ということもあって物語の進行がグッズ展開に左右されないというのも現在進行形のライダーの中では異色でした。
とかく現行ライダーはフォームチェンジやパワーアップが半ば強制的に発生します。
新しいおもちゃを売るのが番組の目的なので仕方がないことなのですが、アマゾンズにはそんな縛りがありません。
純粋にドラマやアクションを楽しめる上にハードな展開や演出が施された「大人向け」の作品だったのです。
…だったはずなのですが、その結果自分の目に何が映ったか。
それは、変身装置としては無理のあるベルトや、物語上あまり意味を成さないバイク、そしてどう見ても生地感満載な衣装然とした外見など、ヒーロードラマとして見ることを拒む、拭い難い違和感でした。
色々設定に工夫はされつつも仮面ライダーというフォーマットだけは横引きされているので「真面目に考えると何故ベルトで変身するのか、どういう仕組みなのか」といった余計なことに思考が持っていかれてしまい、没頭出来ない瞬間が多々あったのです。
敵対するアマゾン(怪人)も、パッと見る限りは凝った造形なのですが、まばたきもせず、口もまともに動かず、見た目が違えどファイトスタイルに大した変化がなく、まるで人間が怪人の皮を被っているだけのように見えるのです。
実際その通りなんだから仕方がないのは分かりますが、このクオリティで例えばハリウッド映画のキャラクターとして登場することが出来るかと言えば難しいわけじゃないですか。
例えば同じ人型クリーチャーでもプレデターはもっと生物感があります。
マスクを脱げば口も開閉します。
予算が違うのは百も承知、だけど令和の今になってもプレデターと比較されてるようではそもそもイカンわけですし、そこを何とかして欲しい・何とかなるはずだ、と思わずにいられなかったのです。
あとこれはアマゾンズに限った話ではないのですが、怪人造形以外にも例えばロケーションなんかも厳しいものがあって、雑木林、工場、公園(しかも通行人ゼロ)、そして採掘場あたりでのバトルが頻発するのを見るにつけ、国内では撮影許可が降りないんだろうなぁ…といらぬ同情をしてしまいがちです。
そんなわけで、MCUを中心に世界的にヒーロー映画が超絶ヒットを飛ばす中、日本が足踏みしているようなこの状況を非常に歯痒く感じていました。
(アマゾンズ自体は面白いので超オススメです。特にシーズン2の悲劇的展開は未だに忘れられません。)
そこに来てのBLACK SUN。
今度こそ期待に応えてくれるのだろう。
そう固く信じておりました。
「信じる奴が正義(ジャスティス)」と、倉田てつをも歌っているのだから!
結論から言うと「これは期待を超えたんじゃないか!?」と、身を乗り出す瞬間はあったものの、自分が思い描いていたものとは明らかに距離のある作品でした。
そして好きな面と嫌いな面がハッキリ分かれて混在する、非常に厄介な作品でした。
(以下、具体的な言及は避けますが若干のネタバレを含みます)
〜公式あらすじ〜
時は2022年。国が人間と怪人の共存を掲げてから半世紀を経た、混沌の時代。
差別の撤廃を訴える若き人権活動家・和泉 葵は一人の男と出会う。
南光太郎──彼こそは次期創世王の候補、
「ブラックサン」と呼ばれる存在であった。
50年の歴史に隠された創世王と怪人の真実。
そして、幽閉されしもう一人の創世王候補
──シャドームーン=秋月信彦。
彼らの出会いと再会は、やがて大きな
うねりとなって人々を飲み込んでいく。
良いところから行きましょう。
まず第一話の時点で従来のライダーシリーズとの違いが非常に際立っていました。
具体的にはロケーションやセットが豪華。
振り返ってみると舞台は結構限定されていたはずですが、どの場面も絵的に安っぽく感じることはなかったです。
それから今回のテーマと大きく関わるデモ隊の描写も、ちゃんと頭数を揃えてキャストを配しているのが良かったです。
日朝クオリティならまず人数が揃っていなかったと思います。
グロ表現も開始早々飛ばしていました。
幼少の頃の光太郎と信彦が改造手術を受けるシーンは、切り開かれて中身丸見えな腹に得体の知れない石をグイグイ押し込むという阿鼻叫喚なトラウマ描写。
あれはキツ過ぎて本気で見返したくないです。
さらに一話終盤でのバトルでは腹に拳をブチ込んで腸を引き摺り出すという、お腹を中心とした過剰なバイオレンス描写が繰り広げられます。
首も千切るけど。
そして仮面ライダーブラックサン役の西島秀俊と、仮面ライダーシャドームーン役の中村倫也、この二人が本当に格好いい。
ここまで豪華なキャストがゲストではなくメインで登場するなんて、今回のような企画でないとなかなか無いと思います。
また二人の変身シーンが痺れるんですわ。
特に中村倫也のキレが凄い。
あとブラックサンとシャドームーンは2段階変身するのですが、どちらのスーツも興醒めしないレベルのクオリティだったと思います。
若干危うさはありつつも、異形のクリーチャー感が表現された良いデザインだったんじゃないかと。
旧デザインを超えたかというと悩ましいところですが。
…さて、ここからは逆に悪かったところを項目別に挙げていきます。
・要素は多いがちぐはぐ
とにかく要素がとっ散らかって、どれも上手く噛み合っていないように感じました。
物語の主題は「差別との戦い」なのですが、ここに70年代学生運動、連合赤軍、731部隊、朝鮮学校へのヘイト活動、BLM、自民党批判…ざっと思いつくだけでこれくらいの題材が、ほぼほぼそのまま、全く料理されることなく提示されます。
素材を活かした料理を頼んだら材料のままで皿に並べられたと言うか、ドラマとして混ざり合っていないのです。
しかも扱う題材やそこから浮かび上がる主張が非常に極端なので、監督の思想信条が影響していると考えざるを得ません。
別にどんな思想を持っていても構いませんし「仮面ライダーを使って政治的メッセージを発信するな!」とは言いませんが、一個一個の扱いがあまりに雑だし、何より仮面ライダーとしてのドラマに寄与していないのが問題だと思いました。
特撮アクションというフィクションを噛ませることで大人だけでなく子供にも伝わる寓話として成立させよう…とは考えていないようです。
それならば仮面ライダーを題材として扱う必要がそもそもあったのでしょうか。
・オマージュという名の無頓着
前段でライダーとしての必然性に疑問を呈したところですが、かといってこのドラマにライダー要素が少ないかと言えばそんなことはありません。
むしろ大量にまぶされています。
ただし、まぶされたBLACK要素のどれもが整合性を無視した単語レベルでのぶち込み方なので、ファンサービス以上の意味合いを見出せませんでした。
例えば元のシリーズで悪の組織だったゴルゴムが、まさかの「ゴルゴム党」という政党として登場しています(前身となる革命活動組織時代は「五流護六」という漢字表記)。
目も耳も正気も疑うレベルのネーミングですよ。
しかも名前の由来なんて一言も語られませんからね。
幹部の3人も「三神官」とか名乗ってますが、それは謎に満ちた悪の秘密組織だから成立するのであって、政党のメンバーが名乗るのにはあまりに不自然です。
そもそもこの三神官がそれぞれダロム、バラオム、ビシュムという元のBLACKからのネーミングをそのまま使ってるのですが、今回のドラマの出自から何故その名前を名乗らせたのか。
日本で学生運動(的な運動)に参加する面々の名前としてあり得ないし、どう足掻いても南光太郎、秋月信彦と並ぶ名前ではありません。
他にはBLACKでのラスボスである「創世王」もそのままの名前を使って登場するのですが、これも原作では5万年周期で代替わりをする超常的存在であるのに対し、本作ではそこまでの存在ではないわけで、そもそも創世王なんて名前が大袈裟過ぎるのです。
さらに劇中、創世王を守り、そして殺すための唯一の武器として「サタンサーベル」が登場するのですが…いやいや、いくら「神をも殺す剣」の意味が込められていようと、サタンサーベルなんて名前をあの世界線で一体誰がつけるとういのか。
それはやっぱり仮面ライダーBLACKの世界線での敵役が持つ武器の名前ですよ。
そのまま使うことで世界観が壊れてしまっては元も子もありません。
他にも原作同様の名前で登場するキーアイテム・キングストーンの役割がよく分からないとか、原作で変身後も顔出ししてる怪人・ビルゲニアが本作でも顔出ししたままなのは何故なのか…とか、原作再現をしたことで生じるノイズが無視できないレベルなのです。
その極め付けが最終話のOP。
具体的なことは伏せますが、まぁ、元を知っていれば間違いなく盛り上がる演出が唐突にぶち込まれます。
確かにアガりました。
でも、いや、あの……今やられても困るんだが……と、冷静になった時に妙な気恥ずかしさを覚えるものでした。
要は、今まで曲がりなりにも「大人向けドラマ」を見ていたのに突然日曜朝の10チャンネルを見せつけられたというか、これをどう受け止めれば良いんだよ!?と。
行き過ぎたファンサービスは過剰接待としか受け止めることが出来ず、居心地の悪さを感じました。
むしろここまでそのまま出してきたということは、本当は原作のことを考えてないんじゃないか、こうすればファンは喜ぶだろ?という短絡的な発想だったんじゃないかと、逆に勘繰りたくなります。
本当のところはどうなんでしょうね。
・モブ怪人の目に余る低クオリティぶり
ブラックとシャドームーンは良かったのですが、その他の怪人はマジで日朝レベルでした。
肌の露出する頭部と手だけが作り物で、あとは普通の衣服。
全身スーツな分、戦隊の敵キャラの方がまだ手が込んでるじゃないかってくらいで、これには心底ガッカリしました。
数が揃っていてもこれじゃ興醒めしてしまいます。
グロ描写の容赦無さはあるものの、怪人周りのグロ描写に驚きがないのはこれが原因なのでしょう。
腹を貫かれようが首が飛ぼうが作り物感が強過ぎるので全然凄惨に見えないのです。
数を揃えるならクオリティは維持して欲しかったし、それが無理ならハナから登場させる数を絞って欲しかったです。
・否定されることを前提とした終幕
これは単に良くなかったというわけではなく、ちょっとずるいな…と思ったことです。
この物語の実質的な主人公は仮面ライダーブラックサンこと南光太郎…ではなく、原作にはいない和泉葵という女子高生です。
身も蓋もないことを言ってしまうと今回の物語は仮面ライダーの活躍ではなく、一人の少女が否応無しに「別の何者かへと変身させられる物語」だったと言える気がします。
理想を掲げ、差別の無い正しき世界を訴えた結果、彼女は次々と大事なものを失っていきます。
遂には自分さえ失いかけ、それでも果敢に挑み続けた彼女が最後に選んだ道は「悪がいる限り戦い続ける」ことでした。
その答えは、ヒーローを受け継ぐ者としてこれ以上ないほどの正解でしょう。
ただし、その手段が決定的に間違っているのです。
疑念の余地なく、完全にアウトな手段を彼女は選んでしまいました。
これが分かりやすい悪堕ちとして描写されているわけでないのがまた悪質だと感じました。
作り手だって大真面目に正解として提示しているわけではないのは百も承知ですが、こんな露骨な皮肉は上手くないんじゃないかな…というのが正直なところです。
真に受けるのもアホらしいし、かといってムキになって反論するのも寒々しい。
否定・反論したところで何も生まれないというか。
「言葉で世界は変わらなかったから戦い続ける。」
そういう帰結に至るだけなら十分理解は出来るのですが、そのために選んだ手段が稚拙過ぎで葵が一気にバカなんじゃないかと思えてしまったのです。
一体このドラマで葵は何を受け継いだのか、仮に受け継がなかったとしても、どうしてこうも愚に堕ちたか、その辺りがさっぱり見えてきませんでした。
言いたいことは他にもまだまだあるのですがそろそろ畳みます。
総じて言えるのは、物語の整合性を度外視し、原作再現部分に違和感を抱かなければ非常に見どころがあるドラマだったのではないでしょうか。
自分はこのドラマの結末は間違っていると感じたのですが、「こんなの間違ってるだろ!」と思わせてくれた時点でメッセージ性が十二分にあるとも言えると思います。
心を動かされたと言う意味で、感動した瞬間が少なからずありましたから。
あと、演技の良し悪しとかを語れる人間ではありませんが、ど素人が見ても今作のキャストは良かったと思います。
涙ながらに「昔に戻りたい…」と語る信彦こと中村倫也の姿は非常にグッと来るものがありました。
西島秀俊に関しては、シンウルトラマンと見比べると演技のクオリティが段違いに良く見えます。
シンウルトラマンの西島秀俊はちょっと酷いと思います。
演技力というか、演出の差なのかも知れませんが。
ルー大柴演じる総理大臣もザ・悪党といった感じを体現していて良かったです。
隣に麻生太郎そっくりな官僚がいるのは露骨だけどまぁ面白かった。
主題歌とメインテーマも格好良かったですね。
超学生の「Did you see the sunrise?」は今作の魅力を見事に表現していたと思います。
ただし、毎回のエンディングが恐ろしく引きが無い上にエンドロールに何の工夫も無いため、スキップせざるを得なかったのが正直なところ。
もったいない。
https://m.youtube.com/watch?v=r41R0BKosVw
超クドクドと書いてきましたが一言で言うと今作は非常に変なドラマです。
そして毒か薬かと言えばハッキリ毒です。
その分、語り甲斐がある内容だったので、これが500円で見られるのなら十二分にその価値はあったと思います。
そしていつかは真に満足出来るライダーが現れることを夢見て、ひとまずシン仮面ライダーを待ちたいと思います。
「夢を見続けることが俺のファンタジー」と、倉田てつをも歌ってるしね。
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