鉄道も引き寄せたTSMC 道路・住宅、受け皿づくり加速
シリコンアイランド 変わる熊本(上)
2022年12月20日 5:00
半導体受託生産の世界最大手、台湾積体電路製造(TSMC)が熊本県菊陽町で建設を進める新工場が出荷を始めるまであと2年。半導体関連産業の九州進出や設備増強も相次ぎ、シリコンアイランド復活への期待が高まる。地元では鉄道や道路、住宅など急ピッチで受け入れ体制の整備が進む。TSMC進出が熊本の街を大きく変えはじめた。
「空港アクセス鉄道は『肥後大津ルート』にする。一日も早い実現へ加速する」。12月の熊本県議会。蒲島郁夫知事は議案説明で力を込めた。
「阿蘇くまもと空港」へのアクセス鉄道計画はこれまで、3つの案のうち今年J1昇格へあと一歩に迫ったサッカーJ2、ロアッソ熊本のホームゲームが開かれる熊本県民総合運動公園陸上競技場(熊本市)近くを通る三里木駅からのルートが本命とされてきた。
ロアッソを巡っては10月に対戦チームの横浜FCの中村俊輔選手の引退試合が重なった際、約2万人が集まり周辺は大渋滞した。県としては渋滞解消の切り札として鉄道敷設を検討してきたが、「TSMC進出が決まった昨年秋から流れは変わった」(県幹部)という。
肥後大津駅から分岐するルートはTSMC工場予定地近くを経由して空港に至る。熊本駅から空港へ直通運転でき、阿蘇や九州全域への周遊型観光振興につながる利点もある。県は今後JR九州や国と議論を深め、2034年度末の開業を目指してアクセルを踏む。順調にいけばJR九州の新たな在来線開業は宮崎空港線が1996年に開業して以来38年ぶりとなる。
前例のないペースで進むTSMCの工場建設に引っ張られるように、地元自治体が動きを加速させている。
「とにかく早く整備したい」。熊本県玉名市は企業誘致の「機会ロス」を減らそうと産業団地整備の民間委託に踏み切った。同様の手法で先行する千葉市を視察してノウハウを習得。地元不動産会社に委託してすでに着工し、来年秋には分譲を始める計画だ。「通常のやり方で開発していたら1年半では無理だった」(玉名市商工政策課)
熊本県内の企業誘致は2021年度に半導体関連22件を含む過去最多の59件に達し、22年度も11月末時点で33件、そのうち半導体関連が13件を占めた。用地が底をつくなか、熊本県も26年度に25万平方メートル級の県営産業団地を2カ所整備する計画だ。
道路整備も急ぐ。TSMC工場の前を東西に走る「大津植木線」は現在の片側1車線から多車線に拡幅するほか、周辺で新たな道路も整備する。セミコンパーク付近と九州自動車道をつなぐ自動車専用道「中九州横断道路」計画も進行中だ。将来は熊本と大分を結び、シリコンアイランドを縦横無尽につなぐネットワークができあがる。
熊本市は住宅の確保に向けて思い切った手段に打って出た。TSMCや半導体関連企業の従業員向けに住宅を建設する「特定目的」で、約5300平方メートルの市有地を売却することを決めた。「TSMCや半導体関連に絞っての住宅用地売却は市としてきっと初めて」(西山茂宏産業部長)
あえて規模を抑えたのは「経験したことがない早さで売却、公募をかけないと間に合わない」ためだ。市の条例では広さが1万平方メートルあると売却に際して市議会の議決に付す必要がある。「議決不要でも議員に説明だけはして、数週間でこぎつけた」という。市は12月下旬にも事業者を決め、早々の着工を目指す。
民も歩調を合わせる。明和不動産(熊本市)は来年7月、同社初の家具付きサービスアパートメントを完成させる。在宅勤務に最適な机やイスなどもあらかじめ設置。「TSMCはラストチャンス。『原状回復』とか海外でわかりづらい慣習も『定額制』などで見直したい」(川口英之介社長)と知恵を絞る。
地元がいわば「TSMCインフラ」の整備に全力を挙げるなか、蒲島知事は「熊本は頑張るので、国は手を離さないでほしい」と訴える。半導体産業は「シリコンサイクル」といわれるように浮き沈みが激しい。九州はかつて世界的な半導体製造拠点として輝き、そしてその地位を失った歴史がある。「TSMCインフラ」にはシリコンアイランド復活にかける、関係者の様々な思いが込められている。(近藤康介)
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOJC056OL0V01C22A2000000/
昔は鉄が国家を支えました。
今は半導体が支えです。
世界の潮流に乗った産業の勢いは凄いです。
以前日の丸半導体でないと散々批判を浴びましたが、強引に事を運んだ菅政権の面目躍如です。
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