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2022年12月04日11:33

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召集逃れのロシアはインドネシアバリ島を目指す

バリで徴兵逃れのロシア人にじっくり話を聞いてみた
ロシアン・コミュニティ潜入記 (後半)
2022年12月3日
高野凌

プールを横目に見ながらコンドミニアムに向かうカップルが歩いて来たので声を掛けるとバレンシア出身のスペイン人だった。男性はITエンジニア、女性はネット広告と2人ともデジタル・ノマドだ。コンドミニアムを借りて長期滞在している。

 2人はロシア人達から視線をそらし小声でロシア人について語った。コンドミニアムは中高年のロシア人が多く大半はウクライナ戦争前から住んでいる静かな隣人と評価。他方、戦争開始後にバリ島に来た若い世代のロシア人はグループで騒ぐしマナーが悪いし、あまり関わりたくないと。

必死で兵役逃れて楽園にたどり着いた貧しい若者たち

 前半(『バリ島は海外脱出ロシア人の楽園なのか?』)https://wedge.ismedia.jp/articles/-/28706
では地上の楽園で優雅に過ごすロシア人を紹介したが、神様(おそらくロシア正教の神様)は不公平である。海外脱出ロシア人の天国『パルク・ウブド』の中に入れず、エントランスホールの大きな回転ドアの外に置かれたベンチに座っている4人の若者がいた。彼らはガードマンに誰何され、英語で説明できず入館を断念してすごすごと外に出たのだ。そして日陰のベンチで鳩首相談していたのだ。

 彼らは見るからに貧しいロシアの若者だった。服装や靴、身なり全体と雰囲気が高級複合施設には場違いなのだ。ゆっくりと簡単な英語で聞くと、ひとりの若者からかなり間をおいて単語が返ってくる。他の3人はまったく英語ができないとのこと。

 4人はロシア人の若者が集まるチヤングーで知り合った。20〜23歳の彼らはシベリアの町や村の出身。徴兵されるリスクが高いので必死で逃げてきたのだ。

 ひとりは無言で、スマホでニュースをチェックしていた。絶えずロシアのニュースをチェックしていないと不安らしい。彼らは節約のためバリ人のローカルが借りるような安アパートを4人でシェアするという。

 おそらく彼らよりさらに貧しい階層の若者は渡航費用・滞在費用が工面できず、戦時ボーナスだけを期待して戦地に赴いているのだろう。

欧州人のロシア・ウクライナへの認識

 スミニャックで同宿したスロバキアの首都ブラチスラバ出身女性は企業などのシステムをチェックするITアナリスト。デジタル・ノマドだ。

 ウクライナへの複雑な感情を吐露。ロシア侵攻直後に兄が仲間と一緒に難民支援に食料を持って国境に行った。ところが真っ先に車で逃げてきたのは富裕層で乾パンなんかには目もくれず、町のレストランに向かった。富裕層を支援する必要はないと唾棄するように断言した。

 ウクライナ難民の大半はドイツへ向かうが、それでも小国スロバキアにはウクライナ難民は大きな負担。アパートなど部屋不足。ホステルすら1泊8ユーロから20ユーロに値上げ。

 早く戦争を終わらせてほしい。そもそもゼレンスキーはロシアとキチンと対話をしなかった。交渉したら戦争は回避できたと考えるスロバキア人は少なくないと。

バリ島の海外脱出ロシア人に激怒

 ウブドの食堂にポーランドの古都クラコウ近郊から2週間の休暇でバリ島にきた3組のカップルがいた。海外脱出ロシア人が何万人もバリ島に滞在していることに怒り爆発。そもそもロシア人がバリ島まで来ていることが信じられないと。ポーランド国民がどれだけ犠牲を払っているか思い知らせてやると息巻いた。

 ウクライナ国境近くの村の出身のポーランド女子はニュージーランド、豪州でワーキングホリデーして農場で3年働いた。貯めたお金でバリ島をバイクで周遊中。バリ島に逃げて来てのほほんと遊んでるロシア人を見るたびに腹が立つと鬱憤をぶちまけた。

 チヤングーで同宿したドイツのドレスデン出身でマインツ芸術系高校を卒業してギャップイヤー中の18歳女子は電気料金が2倍、3倍と天井知らずと。ガソリンもリッター2ユーロ60セントとドイツ経済の苦境を訴えた。その元凶のロシアから海外脱出してプーチンを野放しにしているとバリ島のロシア人を批判した。

 ちなみにギャップイヤーとは高校や大学を卒業してから、すぐ進学・就職せず1年間を旅行したり、インターンやボランティアなどをして視野を広げさまざまな体験を通じて将来の進路を決める欧米では一般的な習慣である。

 他方、休暇をとつてバリに来た3人組のスウェーデン女子。海外脱出ロシア人がバリ島にいること知らず、スウェーデンの北大西洋条約機構(NATO)加盟にもあまり関心ないは様子。そもそもせっかく休暇をとって寒いスウェーデンから南国に来たんだから、楽しまなくちゃって雰囲気。こうした反応をするヨーロッパ人も少なくない。

18歳のドイツ人カップルの卓見

 2人はドイツ南部ババリア地方出身、高校卒業してギャップイヤー中。ウクライナ戦争でドイツでは電気・ガソリンが高騰。サステナブル・エネルギーだと太陽光発電に傾注して国中ソーラーパネルだらけにしたが冬場はほとんど稼働しない。しかも耐久年数も予想より短く大量の廃棄パネルの処理は環境不可が高いと。連立与党の緑の党も苦慮している。原発再稼働なども必要ではないか。それとも第二次世界大戦の時のように厚着してフトンを被る耐乏生活するしかないと。

 世界中にこうした厄災をもたらしたのはロシアである。バリ島に沢山のロシア人がいるのだから単に彼らを非難するのではなく、良い機会なのでロシア人と積極的に交流して相互理解を深めるべきだと強調。第三国という中立地帯だからこそ率直な意見交換ができる。そしてロシア人達にEU拡大は世界の安定につながることを理解させたいと熱弁。

 さらに極東の日本は欧州連合(EU)の拡大は、パワーバランスを崩すリスク要因と懸念してるか問われ、しばし考え込んでしまった。18歳の論客に圧倒された一夕だった。

亡命ロシア人がバリ島に殺到する理由

【ロシア人達の話しを集約した結果】

1.気候が良く自然豊かなリゾート=伝統的にロシア人は冬も暖かい南国が大好きだ。今回も脱出先としてキプロス、ドバイ、タイ、マレーシア、フィリピン、ベトナムなどを検討。

2.ロシア人でも長期滞在ビザを取得可能=ロシア人にとりビザ不要国はカザフスタン、グルジア、ウズベキスタンなど中央アジア諸国。さらにモンゴル、タイ、ベトナム、インドネシア、ラオス、マレーシア、キプロス、さらに中南米諸国。しかしモンゴル以外のアジア諸国は期間が短い。ベトナムは1カ月なので断念したと聞いた。インドネシアは書類を整え手数料を払えば6カ月まで滞在可能。半年ごとにマレーシアなどにビザ・ランすればまた6カ月滞在できる。

3.物価が安い=筆者や欧米のバックパッカーが行くような食堂で一食1万5000〜2万5000ルピア(150〜250円)。店先に十数種類並んでいる肉料理、魚料理、野菜料理から好きなものを適当に選ぶ。これにライス、スープがつく。ナシ・チャンプルーである。ナシ・ゴレン(焼き飯)、ミー・ゴレン(焼そば)など単品ならもっと安い。また月1万円で数人住めるような立派なアパートを借りられる。

4.治安が良い=世界70数カ国旅した筆者はバリ島を心から寛げるリゾートとして7つ星認定したい。
 以上全ての条件を満たす国は極めて少ない。バリ島にロシア人が押し寄せる訳だ。

英語不要のバリ島生活

 ロシア国内では多少ともお金に余裕がある人達は海外の渡航先を幅広くネットを通じて情報収集している。さらにバリ島到着語も様々なSNSで情報交換している。大半のロシア人はバリ島ではバイクしか移動手段がないと事前に調査して国際免許証を持って来ている。

 カップルでサンクトペテルブルグ近郊から1週間前にバリ島に来たという女子によるとロシア語でSNSに書き込めば生活に必要なことは全て解決すると。例えば、アパートをシェアするパートナーを探したり、手頃な値段の中古バイクを探したり、同郷の出身者でサークルを作るなどロシア語ネットワークでなんでもできるので英語がダメでも困らないと。

 ちなみに後述するY君はバリ島到着1週間にして同胞の友人を何人も作り、さらにロシア語ネットワークでハバロフスクのトヨタマークII愛好会のメンバーと再会した。さらには朝帰りする関係のガールフレンドもできた様子。

 お金についてY君はロシア国内でビットコインを購入。これを換金してインドネシアで開設した銀行口座に振込んだと。他の多くのロシア人も同様とのこと。

亡命ロシア人の子どもの教育問題
 サヌールに滞在している時に大手不動産会社のマネージャーの話しを思い出した。曰く、サヌールには在留外国人の子女のためのインターナショナルスクールがあると。グーグルマップで調べると4校ヒット。全て宿から数キロ圏内なので運動がてら表敬訪問。欧米系財団が運営する大手2校はそれぞれ約300人、約400人在籍。そのうちロシア人子女はともに十数人で今年になり倍増したという。

 大手の一校のステキな女性校長によると入学希望者親子と学校側で事前に三者面談して適正を判断していると。今年はロシア人からの申し込みが多いが、英語での意思疎通が困難な親の場合は後々のトラブルを避けるためお断りしているとのこと。どうもロシアン・モンスター・ペアレントを警戒しているような口ぶり。

 インド系大手インターナショナルスクールは400人以上生徒が在籍。コロナ前は520人いたのでキャパに余裕がある。9月のロシアの部分的動員令発令後にロシア人の申し込みが殺到、わずか1カ月半で15人に入学許可したと。

 豪州系中堅インターナショナルスクールで校長先生から聞いたところ同校ではロシア人子女は数人しかいないが、デンパサールにロシア系インターナショナルスクールが最近できたと教えてくれた。

 念のためデイレクターとアポを取り訪問。ロシアン・インターナショナルスクールは小さな4階建てオフィスビルを改装したような感じだ。日本の街なかのビルにある保育園と学習塾を併せたような雰囲気。現在生徒は32人というが、いかにも手狭だ。生徒の大半は幼稚園、小学校低学年。サヌール地区の4校が閑静な住宅街に広々としたキャンパスを構えているのと雲泥の差だ。

 オーナーはカザフスタンのマダム。オーナーは近くのホテルも経営。2年前に始めたが、戦争開始後は生徒が急増。すでに定員オーバー。バリ島だけでなくロシア本国からもネットで申し込みが殺到しているが、ウェイティングリストに載せるだけとお手上げ状態だ。

極東からみたモスクワ

 チヤングーで同宿したY君はハバロフスク出身のエンジニア。遠隔操作技術の専門家だ。海外からの依頼も多いという。毎日会社から何度もメールや電話で仕事の相談がくる。パソコンで作業することもある。

 温厚な人柄で一生懸命英語で訥々と語る。離婚して元妻と5歳の娘はモスクワ暮らし。たまに娘に会いにモスクワに行くのでモスクワ事情にも明るい。

 Y君の祖母はスターリン時代にシベリアへ強制移住させられたウクライナ人だ。ウクライナ語とロシア語で意思疎通できるし人種的にも変わらないし、ロシア人はウクライナ人を同胞だと思っていたという。それゆえY君は心が痛むと胸の内を吐露。

 地方では物価上昇で生活が苦しくなっている。ハバロフスクでは衣料品価格がモスクワの2倍にもなっている。

 モスクワでは市民生活は戦争前とあまり変わらずウクライナ問題は他人ごとと思っている。ロシア人は自分さえ良ければ他人の不幸や不正には見てないふりする。帝政ロシア時代、ソビエト連邦時代と長年にわたり独裁国家が続き圧政の下で庶民が生きるための智恵として『見ぬふりをする』ことが習性になった。残念ながらこうした国民性がプーチンの長期政権を可能にしているとY君は嘆息した。

ロシア人のデイスアポラ、国を捨てるロシア人

 Y君は2カ月前にロシアを離れカザフスタン→ドバイ→タイ→バリ島というルートで数日前にバリ島に到着。Y君が聞いたところではウクライナ戦争開始後出国したロシア人と以前からの海外在留ロシア人を合計すると1500万人という。

 元々ニューヨークとロサンゼルスにそれぞれ10万人暮らしていた。戦争開始後はグルジア、カザフスタンにそれぞれ200万人、1年間滞在できるトルコに100万人いると。

 Y君は大量のロシア人が国を離れている事実が国家としてのロシアの危うさを物語っていると憂慮。

現代の「ノーメンクラツーラ」(共産主義時代の支配階級の呼び名)

 Y君は名門大学工学部卒業。いろんな人脈がある。友人に治安部門に勤務するエリートがいる。ロシアではエリート官僚、特に警察、諜報機関、治安、軍隊などのエリートには、さまざまな特権が与えられる。通常のボーナスの他に特別ボーナス、高級アパート、国内移動の飛行機・列車のフリーパス、運転手付きの車などなど。

 しかし余り出世すると政治的抗争に巻き込まれるので、有力者とは距離を置いて慎重に振る舞っているよし。

政権批判は人生を変える

 Y君の友人のひとりは若い時にプーチン政権を糾弾するデモに参加した。逮捕され2年間服役した。

 出所して5年以上立つがいまだに当局の監視下にあり、ちょっとした旅行でも行先、滞在先など尋問される。ロシアは密告社会なので絶えず人の目を気にして生活しているという。

 友人の個人データは当局のネットワークに登録されており実質的に海外脱出は不可能。空港の出国審査で引っ掛かり、別室で飛行機が離陸するまでだらだら尋問されるからだ。

 プーチンが退陣して次の政権が出来ても当局の対応があまり変わらないだろうと諦念しているという。他方で当局のこうした対応はロシアの人々に広く見せしめ効果をもたらし政権批判を抑え込んでいるとY君は分析した。
https://wedge.ismedia.jp/articles/-/28720
日本が戦争に巻き込まれたら、バリ島に亡命するのがお勧めです。
日本の国会やマスゴミは危機感がまるで無し^^;
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