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2021年06月01日15:41

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イスラエルがパレスチナで実施したAI戦争を日本は学ぶべき

世界初、イスラエルがパレスチナで実施したAI戦争
イスラエル・パレスチナ紛争は現代戦研究の宝庫だ
2021.6.1(火)
渡部 悦和

 イスラム原理主義組織ハマスは5月11日、パレスチナ自治区ガザ地区からイスラエルの都市テルアビブへ向けて130発のロケット攻撃を行った。

 ハマスは、「11日のロケット攻撃は10日にイスラエルが行った空爆への報復として行った」という声明を出している。

 イスラエルは、このロケット攻撃に対して空爆などで報復し、紛争は約2週間継続した。

 このガザ地区でのイスラエル・パレスチナ紛争は安全保障の観点で学ぶべきことが多い。


 本稿においては、この紛争においてイスラエルが行った戦いを分析することにより、AIの軍事利用を含む教訓について記述する。

壁の守護者作戦

 イスラエル国防軍(IDF)は、この紛争における軍事作戦を「壁の守護者作戦(Operation Guardian of the Walls)」と呼んでいるが、この作戦を観察するといくつかの特徴があることに気づく。

 第1の特徴は、イスラエルがこの紛争において、ロシアがクリミア半島を占領するために採用した「21世紀型ハイブリッド戦」を遂行したことだ。

 私は「ハイブリッド戦」を「全領域戦」と言い換えている。

「全領域戦」とは、すべての領域(陸・海・空・宇宙・サイバー・電磁波・情報・外交・経済などのあらゆる戦う空間のこと)を使用し、軍事的手段のみならず非軍事的手段(SNSや既存メディアの利用、外交、金融など)を活用した戦いのことだ。

 実際、IDFは空爆やミサイル攻撃のみならず情報戦、サイバー戦、電子戦、心理戦、宣伝戦などを総合的に行っている。

 第2の特徴は、市街地に対するロケット攻撃に対し、イスラエルの防空システムである「アイアンドーム」が大活躍したことだ。

 アイアンドームは、射程4キロから70キロのロケット弾や迫撃砲を迎撃するために開発された短距離防空システムだ。

 このシステムは2011年からIDFの部隊に配備されており、イスラエルの都市に対するロケット攻撃による犠牲者を大幅に削減する効果がある。

 イスラエル軍によると、5月10〜17日にガザ地区から発射されたロケット弾は約3350発だったが、IDFのアイアンドームによる迎撃成功率は90%であったと発表している。


 アイアンドームは、迎撃成功率90%を実戦で証明したために、イスラエル国民の信頼を勝ち得たのみならず、世界中から注目されている。

 市街地へのロケット攻撃の脅威のある韓国や台湾などだが、日本も現有の対ミサイル防衛網の改善のために参考にすべきだろう。

 第3の特徴は、世界で初めてのAI戦争であったことだ。この点について以下説明する。

IDFは世界初のAI戦争を行った

 AIの軍事利用の重要性については拙著「中国現代戦争論―超超限戦」でも繰り返し強調してきたが、IDFはその最先端にいるかもしれない。

 イスラエルの新聞「The Jerusalem Post」の報道(https://www.jpost.com/arab-israeli-conflict/gaza-news/guardian-of-the-walls-the-first-ai-war-669371)によると、IDFは、「壁の守護者作戦」において世界最初のAI戦争を遂行した。

 IDFの情報部隊の高級将校は「AIは、敵と戦う際の重要な構成要素であり、戦力を何倍にもする切り札(power multiplier)だった。これはIDFにとって初めてAIを活用する作戦であった。我々はAIを使った技術開発による新しい運用方法を導入した」と述べている。

 しかしこの報道は、AIの軍事利用について、どの分野においてAIを使ったのかを明確に書いていない。

 そこで、IDFの作戦と密接な関係にある米軍の作戦構想から類推できるAIの活用分野について記述していく。

米軍の全領域作戦(All-Domain Operations)

 米軍は現在、最新の作戦構想として全領域作戦を開発中だ。全領域作戦においては、あらゆる領域(陸・海・空・宇宙・サイバー・電磁波など)での作戦を総合一体化して実施する。

 総合一体化するためには陸海空統合の戦闘システムが不可欠だ。特に重要なのが情報収集手段である「センサー」と、目標を攻撃する「シューター」(例えば、航空機、ミサイルなど)をリアルタイムで連結する戦闘システムの構築である。

 米軍ではこのシステムの構築を米空軍が主として担当し開発している。なぜなら、空軍の戦闘にとって、センサーからシューターへのリアルタイムの情報伝達が不可欠だからだ。

 このシステムには情報処理などのためにAIが不可欠な要素になる。


 この考え方をイスラエルに当てはめると、アイアンドームで飛来するロケットを迎撃するとともに、空軍がハマスのロケット発射陣地に対する空爆を迅速に行うためには「センサー」が入手したリアルタイムの目標情報と情報処理が必要だし、その情報を迅速に「シューター」に伝達する戦闘システムが必要になる。

情報処理におけるAIの利用と「8200部隊」

 イスラエルでは、有名な諜報部隊「8200部隊」がこのシステム構築に関与している。

 イスラエルでは、「8200部隊」が作戦のための情報の大半を提供していて、いかなる作戦も「8200部隊」なくして成立しないといわれている。

 なお、「8200部隊」はイスラエル参謀本部諜報局の情報収集組織で何千人もの要員を有し、米国の国家安全保障局(NSA)に匹敵する能力があるという説もある。

「8200部隊」を一躍有名にしたのは、米国とイスラエルが関与したとされるイラン核施設に対するサイバー攻撃である。

 この攻撃で使われたコンピューターウイルスの「スタックスネット」は、米国のNSAとイスラエルの「8200部隊」が共同して作成したといわれている。

「8200部隊」は、AI的要素を駆使した「錬金術師」「福音(Gospel)」「知の深遠さ(Depth of Wisdom)」と呼ばれる新しいシステムやソフトをハマスとの戦闘のために開発し使用したという。

 例えば、「錬金術師」は、AIを利用して第一線部隊にハマスによる攻撃の可能性を警告するシステムだという。この警告システムは、使いやすいタブレットに搭載され、現場の部隊指揮官全員が使用した。

 また、「福音」は、IDF情報部の研究部門に対して、AIを使った目標情報に関する推奨を提供する。

 IDF情報部はその推奨に基づき実際に攻撃する目標を決定し、攻撃を行うイスラエル空軍に提供したという。

 IDFは、ガザ地区において、ハマスとパレスチナ・イスラム聖戦の主要インフラと人員に対して集中攻撃を行ったが、AIの使用が戦闘時間の短縮に役立ったという。

 IDFは、通信情報(SIGINT)、視覚情報(VISINT)、人間を媒介とした情報(HUMINT)、地理情報(GEOINT)を収集しているが、攻撃に必要な情報を発見するために、膨大な生データをくまなく調べたという。

 例えば、IDFはこの2年間、人口の密集した沿岸部に数千の標的を収集してきた。また、地理情報を長年にわたって収集してきたIDF 「9900部隊」の衛星は、リアルタイムで地形の変化を自動的に検出してきた。

 さらに、IDFは、ハマスの地下トンネル「メトロ」を空爆し大きな被害を与えたが、居住地域の地下数百キロのトンネルのほぼすべてを網羅する地図を事前に作成したという。

 ハマスの地下トンネルに関する地図作成は、大規模な情報収集によって行われた。このプロセスは、技術開発とビッグデータの活用によって、すべての情報を融合させることであったという。


 IDFは、地図を作成することにより、地上と地下のネットワークの全体像を把握した。そして、トンネルの深さ・厚さ、ルートの性質などの詳細な情報を得ることができ、IDFは具体的な攻撃計画を作成することができた。

 そして、IDFは紛争発生以前の数年間に、ガザ地区のテロリスト集団に関するすべてのデータを1つのシステムに統合し、情報の分析と利用を可能にする高度なAI技術プラットフォームを確立したという。

 以上は、紛争が派生する以前からの準備であるが、作戦中にも軍が発射位置を発見し、敵の火力発射後にそれらに反撃することができたという。

 例えば、衛星画像を使用した「9900部隊」は、学校の隣にある14台のロケット発射台を検出した。

 そして、テルアビブやエルサレムを狙ったミサイル発射機など、数百の標的を戦闘中にリアルタイムで収集した。

 IDFはまた、AIを通じて収集・分析されたデータを使用して、アパート、トンネル、建物に応じた適切な弾薬を使用することができたという。

 IDFは、戦闘中に収集した情報に基づき、ハマスなどのロケット発射台、ロケットの製造・生産・貯蔵所、軍事情報機関、無人機、司令官の住居、ハマス海軍司令部など数百カ所の攻撃を行った。

 そして、海軍司令部のインフラと兵器(30キロの爆発物を搭載できるGPS誘導の自律型潜水艦など)のほとんどを破壊した。

民間人の被害を最小化するためにAIを利用

 ハマスは世論戦を重視した戦いを実施した。

 例えば、死者数を発表する際に「子供何人、女性何人を含む」という言葉を必ず入れ、弱者の被害を強調することにより世論戦を有利に展開しようとした。

 イスラエルは、民間人の犠牲者を最小限にする精密攻撃を行うためにAIに基づく正確なリアルタイム情報を活用した。

 IDFは、150人以上のハマスなどの工作員を殺害したが、その多くは、ミサイルの研究・開発を指揮した者や上級指揮官などに限定した。


 例えば、ハマスの診療所に囲まれた高層ビルの下のトンネル内にいたハマスの旅団長バセム・イッサに対する精密攻撃が行われたが、民間人の犠牲者を出していない。

 一方、ガザに所在する国連パレスチナ難民機関も、「攻撃の残忍さが強く感じられる一方で、IDFの攻撃方法には非常に洗練された印象がある」と認めている。

日本防衛やアジア有事に与える影響

 冒頭で、イスラエルの戦いを「21世紀型ハイブリッド戦=全領域戦」と特徴づけた。

 この戦いは、正規戦のみならず、非正規戦、サイバー戦、電子戦、情報戦、政治戦、宣伝戦などが絡み合った全領域戦だった。

 軍事のほか宗教・思想・心理・文化・政治・経済などあらゆる社会要素を武器にして戦った本格的なハイブリッド戦争だった。

 今後のアジアにおける紛争も全領域戦にならざるを得ない。なぜならば、中国や北朝鮮が全領域戦を志向しているからだ。


 日本、台湾、韓国はガザ紛争の教訓を真剣に学ぶべきだと思う。例えば、都市を狙った大量のミサイルやロケット攻撃にいかに対処するかは3か国共通の課題である。

 中国や北朝鮮は、ハマスのようにロケット戦力を強化している。中国と北朝鮮は多様なロケット兵器を保有し、その戦法もいわゆる飽和攻撃(大量のロケットを同時に発射して相手の対応ができなくする戦法)を採用している。

 さらに、軍事施設を地下化するのもハマスと中国や北朝鮮は似ている。イスラエルのアイアンドームによる防空網の構築やトンネルに対する情報活動と攻撃などは大いに参考になる。

 最後に強調したいのは、軍事におけるAIの活用は不可避だということだ。

 現代戦においてはスピードと正確性が命であり、そのためには情報処理などあらゆる分野でAIを活用せざるを得ない。

 AIなくして現代戦を戦えないことを自衛隊も深刻に認識すべきであろう。
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/65487
>第1の特徴は、イスラエルがこの紛争において、ロシアがクリミア半島を占領するために採用した「21世紀型ハイブリッド戦」を遂行したことだ。

ロシアに出来たことは中共も出来るということです。
台湾や尖閣信仰の際は必ず仕掛けてきます。

>最後に強調したいのは、軍事におけるAIの活用は不可避だということだ。

中共はAIを駆使した戦いを仕掛けてくるでしょう。
日本の防衛力増強は、人材や装備だけでなく、AIと言う道の分野にも手を出さないといけないことです。

>IDFは、150人以上のハマスなどの工作員を殺害したが、その多くは、ミサイルの研究・開発を指揮した者や上級指揮官などに限定した。

更に、イスラエルは、民間人の犠牲者を最小限にする為、AIを駆使してハマスを精密攻撃している事から、日本はAIを使った防衛の為の攻撃、防衛の為の先制攻撃を視野に入れる必要があるでしょう。
特に北朝鮮の場合は、防衛するだけでも日本国内で組織的な抵抗が発生するでしょうから、重要人物に絞った攻撃の検討は、十分抑止力になります。
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