PS4のDETROIT BECOME HUMANを、ひょんな事からご近所さんから借りることになり、とりあえずのエンディングまで到達出来たのでちょっと振り返ってみます。
具体的なネタバレは無しで行きます。
・どんなゲームか?
プレイヤーの選択によって物語が様々な展開に変化していくマルチストーリーのアドベンチャーゲーム…一言で言えばそんなところで、事前に聞いていた印象としては選択肢によってシナリオが変わる、いわゆるサウンドノベル形式のゲームなのかな、と思っていました。
実際には結構自分で動き回ったり探し回ったりと、アクション的な要素もあるので全くのゲーム初心者はまずコントローラーの操作…特にボタン配置をちゃんと頭に叩き込んでからやらないとQTEで困ったことになると思います。
一応、簡単モードみたいなのもあるみたいですが私はノーマルモードでやりました。
※QTE:ゲーム進行中に極々短い制限時間(1秒とか)内に特定のアクションを要求してくるquick time eventの略。
「L1ボタンを押せ!」とか「アナログスティックを右に倒せ!」とか、「コントローラーを上に持ち上げろ!」とか。
これらをアイコン一発で要求してくるので瞬時の判断力が求められます。
・どんな話か?
舞台は2035年のデトロイト。
生活の一部としてアンドロイドが普及し、人類の生活はこれまで以上に豊かになった反面、機械に職を奪われ失業率が急増。
第三次世界大戦の不穏な影が忍び寄る、非常に緊迫した状況の中、巷ではアンドロイドによる犯罪が頻発していた…。
…という状況下で、立場も目的も全く異なる三体のアンドロイドを主人公としたお話しです。
・アンドロイドって?
二足歩行を可能とし、その他超絶進化を果たしたペッパーくんを想像してみて下さい。
そして、表面に人間のテクスチャーを貼ってみて下さい。
それがこのゲームに登場するアンドロイドです。
端的に言うと、外見は人間と全く変わりません。
そしてドラマや映画でよくある、生身の俳優がロボット演技をする時の直角曲がり歩き(ロボコップみたいなやつね)とか上下にブレない首振りとか、そういうロボットらしさも全くありません。
あまりに見分けがつかないので右こめかみにLEDが植え付けてある・アンドロイド用の衣服を着てる、という点を除いては判別のしようがないレベルです。
あと、主にプラスチック製なのでターミネーターのように外見は人間でも超重い…ということもありません。
さらに内蔵電源が超絶高効率なので100年単位で自律するらしいです(ただし、理屈のよく分からないブルーブラッドという化学物質を摂取しないと機能しなくなるとか)。
・三体の主人公について
【捜査官】コナー
コナーは人間側に立った男性型アンドロイド捜査官で、相次ぐアンドロイド事件の真相を暴く立場を担っています。
殺害現場の現場検証や鑑識、犯人との交渉、尋問に至るまで全てをこなすスーパーデトロイト市警として人間のためにバリバリ働きます。
コナーが担当する事件は「変異体」と呼ばれる「非合理的な判断」を下すようになった…つまり「意思」を持ったアンドロイドが起こした事件です。
プレイヤーが下す「合理的な判断」がアンドロイドにとっても合理的であるか否か、それはコナーの辿る道筋によって示されるでしょう。
コナーのパートは点と点を繋いで線とする、追う者としての行動がメインになるので、ゲームとしては「アドベンチャーゲームをやっている」という感覚が強かったです。
【逃亡者】カーラ
カーラは家庭用の、いわゆるこの世界における「普通」の女性型アンドロイド。
ある一家に従事することになり、そこで起きたあるきっかけを経て逃亡の旅に出ることになります。
三体の主人公たちの中では立場も能力も圧倒的に非力なため、常に死の脅威と背中合わせの逃避行を強いられます。
同じゲームではありますが、コナーとはガラッと異なるプレイ感覚…はっきり言うと「ホラーゲームをやっている」という感覚が強く、正直夜中に1人でやってると結構怖かったです。
考えさせられたりホッコリするシーンもあるのですが。
ちなみに私の初プレイでは、かなり冒頭のシーンでミスった結果「高速道路で轢かれて死ぬ」というあまりアンドロイド感の無い結末に至ってしまったので、これはさすがにやり直しました。
【革命者】マーカス
マーカスもカーラと同じく家庭用(介護用)のお手伝いアンドロイドです。
ただし、カーラがかなり残念な環境下に放り込まれたのに対し、マーカスは裕福な老画家の下で実の息子のように接してもらえるという、非常に恵まれている「ように」見えます。
しかし、こちらもまた事態が一変。
アンドロイドにとって地獄のような状況に追いやられ、マーカスはアンドロイドの自由を勝ち取るための戦いに身を投じていきます。
あくまで平和的に働きかけるのか、それとも武力を以て抗うのか…。
プレイ感覚としては「バレるの?バレないの?」的なステルスアクション要素が多めだったかなと。
文字通りアンドロイドの命運を決する、非常に重要な局面を担う立場にあります。
・感想
面白いです。
ドラマとしてとてもよく出来ており、加えて各パートが比較的短めに構成されているので「もうちょっとだけ、もうちょっとだけ…」と、つい手を伸ばしてしまい、やめ時が分からなくなります。
「人間とアンドロイドの見分けがつかない」と書きましたが、そもそも人間が生身の人間にしか見えないほどのハイクオリティで、それがもはや「出来て当たり前」くらいの感じであるのは改めて考えるととんでもないことだなと。
CGのクオリティが高ければ高いほどゲームは面白くなる、というワケではもちろんないのですが、今作は違和感を感じさせないほどの作り込みがドラマとして欠かせない要素だったんじゃないかと思います。
「操作できるCG映画」の最先端であり到達点とも言える今作。
過剰に難しい操作を要求されるわけでもなく、ストーリーを追うだけならばライト層でも楽しめるという意味で広くオススメ出来ると思います。
周回を考えなければプレイ時間もそんなにかかる方ではないし。
PS4ユーザーならば一度はやるべきゲームだと思いますので、これを機に本体購入というのもアリだとは思います。
…さて。
ここから先はゲームの評価とは関係の無い、個人的な話。
私が辿った物語と、このゲームが投げかけている事柄について思うところを書こうと思います。
まずは最終的に各主人公たちがどんな運命を辿ったか、ということをザックリと書いてみます。
具体的なネタバレはしてないと思うけど、結末のバリエーションを一つたりとも知りたくない…という方はここでお引き取り下さい。
…
……
………
はい。
では明かします。
マーカスは平和的にアンドロイドの自由を勝ち取り、コナーは変異体となってアンドロイドの独立に協力的な立場をとるようになりました。
そしてカーラは自らの役目を果たす代わりに犠牲となりました。
二人が生き残り、一人が命を落とすという結末はいわゆる「トゥルーエンド」とは言えないものでしょう(一応最後の選択をやり直すことでカーラ生存ルートも確認は出来たのですが)。
しかし、私はこの結末にかなり満足しました。
私なりのトゥルーエンドはこれだと、言えます。
言い換えると、「もう別のルートはやらなくていいかな」とさえ思えてしまったのです。
かなり苦しい選択を迫られた中、一応自分なりに理屈を通して決断を下していった結果なので、主人公たちにどっぷり感情移入してしまい、物語自体への愛着が生まれていたのだと思います。
なので、私の知るマーカスは決して暴力による解決を図ろうとしないし、コナーは無自覚なまま人間以上に人間らしい振る舞いをしてしまうし、カーラは守るべきもののために全てを捧げてしまう、そういう人物像としていつの間にか固まっていたように思えます。
ゲームの売りである「選択による様々な物語展開」という点が、没入度が高過ぎることで機能しにくくなってしまっているのは何とも皮肉な話だと思います。
もちろん、これは私の感じ方でしかないのでゲーム自体にケチをつける気はさらさらありません。
・アンドロイドに人権はあるか?
この物語が訴えかけているものはとても今日的だと言えます。
ザッと思いつくだけでも人種問題、難民問題、労働力格差、同性愛、奴隷制度、そして行き着く先としての民族浄化…根底にあるものを一言でまとめるならば『差別意識』についてでしょうか。
アンドロイドを新たな人種・種族と捉えれば、こんなに露骨で直接的な問題提起もありません。
ここに一つ、このゲームの持つ大前提というか『嘘』がある気がします。
つまり、アンドロイドと人間の差があまりに無さすぎるということ。
能力的なこととか、血が青いとか、そういうのは些細なことでしかなくて、感情的な面での話です。
自我を確立させたアンドロイドの感情の機微があまりに人間同等であるため、本質的な違いを見出すことが出来ないのです。
主人公たちは仕方がありません。
何故なら操作しているのが私という生身の人間なのですから。
しかし、他の変異体も人間同様の振る舞いを見せるので、そもそもお前らをアンドロイドとして見たことはない…というのが正直なところです。
故に、アンドロイドに人権があるか否かを問われれば、このゲームをプレイした上でも「ない」というのが私の答えです。
今現在の自分には、愛着を持ったペッパーくんやルンバに人権を与えるべきだという人種は狂人にしか映りません。
このゲームの描く、人間同様の意思・人格を持ったアンドロイドが生きる未来を、私は地続きに感じられないのです。
地続きに感じられるほどのイマジネーションを持ち得ていない、とも言えます。
悲しいかな。
しかし、もし本当に完璧な自我を形成出来るアンドロイドが生み出された暁には、新たな人種として受け入れなければいけないのかも知れません。
ゲームで描かれていない問題も多々起こるでしょう。
多分、人間とアンドロイド間での結婚なんて話しも出るんじゃないでしょうか。
遺伝子のデータ化くらい出来ちゃいそうだし。
何を馬鹿な…と思うかも知れませんが、果たしてこのゲームをプレイした人の中で主人公たちにリアルな親しみを一切感じなかった人がいるでしょうか?
モニターの中のビジョンとしてでなく、現実に人間同様の姿で目の前にいたら、案外その一線はあっさり踏み越えられちゃうんじゃないかと、個人的には思います。
ゲーム中で語られている話しによると、アメリカ以外の国ではモロに人間に寄せた外見をしていないアンドロイドもあったり、そもそもアンドロイドを禁じているところもあったりするそうですが、まぁこの世界の日本なら余裕でリアル初音ミクとか作っちゃうでしょうね。
世界中で俺の嫁が増産されるわけです。
しかも100%自分の理想が叶うとすれば、結婚を望み、さらにその先を目指そうとする輩が出てくるのも想像に難くありません。
皆が皆、その道に走るとは思いませんが、まぁ一定数は生じるでしょう。
そうなれば、このゲームで語られている以上に人間サイドからアンドロイドへの人権承認圧力が働きそうです。
そして、そうこうしているうちに地球環境がどんどん悪化し、人間の生活に適さない状況にまで追い込まれ、さらに人間とアンドロイドの差がいよいよもって曖昧になった時、互いのパワーバランスが逆転して人間がアンドロイドの保護下に置かれる存在になることが予想されます。
あらゆる環境に耐え、人間以上の能力を持ったアンドロイドなら宇宙への進出だって容易なはずです。
その時、人間は大して役に立つ存在するでもないので、絶滅しない程度にサンプルとして生き延びさせる存在になり下がるのではないでしょうか。
生身の人間が介在しない未来世界はディストピア的にも見えますが、種や文化の保存が別の形で成し得た未来とも考えられるので、個人的にはそこまで悪くないのかな、と思います。
いつか復活の目を見るか、それとも破滅の種子として未来永劫封じられるのか…。
…と、突拍子も無い範囲まで未来を想像してみたりするのもこのゲームの楽しみ方なのかなと思います。
・「より良い未来」と「より楽チンな未来」は違う?
前段で超長期的な目で見れば悪くない世界の進み方としましたが、もう少し短期的な目で見た場合の話をします。
このゲームのアンドロイドは、人間の実生活に違和感なく溶け込めるよう、極めてリアルに人間の外見を施されていますが、そもそもこの判断が必要だったのか。
人間に寄せ過ぎて、結果取って代わられるのでは本末顛倒にもほどがあります。
生活レベルで考えた時、楽チンな世界とは本当に良き世界なのでしょうか?
道具を道具として扱うのではなく、道具を奴隷に仕立て上げることが人類の目指す幸せなのでしょうか?
意思あるものを隷属状態に置くことが悪と考えるならば、あらかじめ感情というプログラムをカットしておけばこんな善悪の問題は起きなかったはずです。
…はずなのですが、これもまたちょっと違う気がします。
何故ならカット=禁止したところで、恐らく禁止しきれないからです。
人間の遺伝子操作はやっちゃダメよ、と言っても研究が進むように、どこかで歯止めが効かなくなることが想像に難くありません。
禁止すること・押さえつけることが結果的に楽チンな解決策を取っているに過ぎないなら、やはりより良い未来を目指すためには適応していかなければいけないのかな、と思いました。
アンドロイド問題に限らず、色んなことに当てはめて考えられそうな気がしますが。
…随分頭デッカチな話運びになってしまいました。
私はこんな感じでしたが、別に堅苦しく構える必要はないと思います。
繰り返しになりますが、高度なスキルを求められる類いのゲームではないので、多くの人にオススメ出来ます。
それでいて非常にスリリングな、忘れがたい体験が出来るはずです。
というわけで、長くなりましたがDETROIT BECOME HUMANの感想でした。
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