私は愚かな蕎麦好きである。
いや、愚かどころか、愚か過ぎた。
あの「巨匠」が、なんとなんと我が「群馬」にお店を開店されていたというのを今年になってから知ったという、もう「超」が付く程に「愚か者」の私であった。
己の愚かさに嘆くも、我が家から車で30分以内のところに巨匠のお店があるという「夢のような話」に心は踊る。
で、いつにお邪魔しようかと悩んでいたのだ。
そう、いつも「そろそろかなぁ〜」という思いが頭の隅に着いて離れなかった。
ある種の「ず〜っと我慢していた」である。
あぁ〜、行ってみたい。
でも、意地悪もしてみたかった。
意地悪とは、新蕎麦が待ち遠しい、蕎麦屋さんにとって「最も過酷な時期」にお邪魔することを意味する。
新蕎麦が美味いのは当たり前だ。
そうではない「最も過酷な時期」にこそ、蕎麦打ち職人の技量が露わに晒される。
でも、今すぐにでも「巨匠」の蕎麦を確かめたい。
その思いが Peak に達したに加え、意地悪もしたい時期とも重なった、もう正に「今でしょ !?」の8月下旬を迎えた。
もちろん「平日」の「開店攻め」だ。
そんな思いのアレコレと合致した 08/28(月)は、ついに巨匠のお店を目指すことにした。
ソレはもう「伝説級」で、蕎麦好き達の度肝を抜き、魅了してみせたあの「水腰蕎麦」を味わえる日が、ついにやって来たのだ。
我が家を出たのは 10:30 頃…。
Copen の Steering をルンルン気分で握っている自分に気が付く。
イカンイカン、もうちょい Cool に行こうぞよ。
音楽で心を落ち着かせようと試みる。
そう、蕎麦と Jazz は不思議な程に相性が良い。
理由は判らんが、そう感じること多々な私である。
巨匠のお店に行くのだから、やっぱり巨匠の曲がイイ!
Miles Davis の1959年の Album “Kind of Blue” を楽しみながら快走する。
Album の1曲目 “So What” なんざぁ〜、正に「今の気分」にどんピシャだ。
始まりは Mezzo Forte でじわじわと引っ張り、もう「待ってましたぁ〜」の Timing で Miles の Tp. が入る。
この時の Cymbals も猛烈に格好イイからたまらん…。
J. Coltrane をはじめ「巨匠の集まり」の豪華絢爛な Member による Cool な Bebop が心地良い…。
安中市の横野平を南に進み、お隣の富岡市を目指す。
上信電鉄の上州富岡駅の近くの駐車場に Copen を停め、あの世界遺産に認定された「富岡製糸場」方面を目指して歩き出す。
そうそう、この狭い路地に入るのが近道だった。
富岡製糸場の正門前に、かつてはお婆ちゃん(Partner の父の母)の家があったのだ。
そんな縁もあって、この辺りは結構にブラブラしたもんだよ。
その狭い路地に入ると富岡の Deep Zone が待っている。
昔と比べれば Shutter を閉めたまんまのお店も増えてしまったが、どっこい、まだまだ Deep なお店が所狭しに健在だ。
あぁ〜、この眺めと雰囲気が今でも「昭和なあの頃…」に Time Travel させてくれる。
そうそう、この路地の向こうに「肉屋が2軒もある」から面白いのよ。
先ずは「岡重」さん。
おぉ〜おぉ〜、親子と思われる観光客が食らい付いているぞ。
ココん家の「コロッケ」と「カレーパン」が美味いんだよね〜。
あぁ〜、食欲を誘う、香ばしくて美味しそうな匂いが…。
イカンイカン、先を急ごう。
で、「岡重」さんから徒歩20秒程で「原田」さんだ。
その「岡重」さんと「原田」さんとで「コロッケの食べ比べ」とか、アホな遊びがまた楽しかったりする。
あぁ〜、またも食欲を誘う、香ばしくて美味しそうな匂いが…。
おいおい、鼻をクンクンさせている場合じゃ〜ないぞ!
先を急ごう。
この狭い T 字路を南に曲がると、あの巨匠のお店があるらしい。
行ってみよう。
そんな「二町通り」にて…。
おぉ !?
ココやココや!
巨匠「石井仁」さんが故郷の富岡に戻られ開店された「そば食堂 仁べえ」さんに到着。
目論見どおりの「開店攻め」に加え Pole Position も Get it!
よしよし…。
ん…?
11:00 に営業開始の筈なのだが、11:00 を過ぎても「準備中」のまんまだぞ?
しばらく待ち続けると暖簾が掲げられ「もう少々、お待ちください」とのこと。
やったぁー!
では、早速にお邪魔します。
あぁ〜。
ついに私は巨匠のお店に足を踏み入れてしまったぞ。
くぁ〜〜っ、もう夢のようだよ。
復習がてら、巨匠の足取りを再確認してみよう。
手打ち蕎麦の巨匠、石井仁(いしい じん)さん。
神田の「いし井」から始まり…
銀座の古拙(こせつ)
日本橋の仁行(にぎょう)
修善寺の朴念仁(ぼくねんじん)
…という伝説級の蕎麦屋を次々と築いた。
銀座の「古拙」や日本橋の「仁行」は、蕎麦屋にも関わらずあの Michelin Guide から「星」を獲得したのは周知のとおりだ。
私も機会ある度に Try したのだが、いつもいつも長蛇の列に苛まれ、時間の都合で「諦める」の連続だったよ。
加えて巨匠は、新しい店を設けては数年で閉店を繰り返すという奇行も目立った。
その Michelin Guide も認めた「水腰蕎麦」を、一度でイイから味わってみたい…。
そんな私の切なる思いが、ついに現実味を帯びて来た!
くぁ〜〜っ、もうもうもう、夢のようだよ。
一番奥の Table に案内され、ココに陣取る。
ではでは、早速に Menu を拝見させていただきましょうぞ。
おぉ!
ついに「水腰蕎麦」と接近遭遇だぞ!
巨匠が創造した、常識では「あり得ない」に程に極細の十割蕎麦が、この「水腰蕎麦」なのだ。
前述のとおり、ソレはもう「伝説級」で蕎麦好き達の度肝を抜き、とことん魅了してみせた「水腰蕎麦」の味わいとはさて、いかに…?
あぁ〜、いきなり「蕎麦前」と来ちゃったわさ。
あぁ〜、何でひとり、車を運転してココに来ちゃった?
あぁ〜、巨匠の蕎麦前で一杯やりてぇ〜!
あぁ〜、悔しい!
悔し過ぎて頭がおかしくなっちまいそうだぞ(泣)
ん…?
ほほぉ〜。
今は8月で「夏休み中の混雑する時期」なので、この Menu に記された多くは「9月以降に復活」なんだそうな。
そうかそうか、今日のところは悔しさが一気に減衰…。
とにかく、落ち着け、落ち着け…。
おぉ!
やはり巨匠の蕎麦はお値段もソレナリだ。
初めてお邪魔した蕎麦屋さんでは必ず「最も Basic なもの」をお願いする私なのだが、やばいぞ、いきなりブレまくっている…。
当初は「もりそば」と「かけそば」をと目論んでいたのだが…。
ん〜、どうしよう…?
おぉ、左の「仁べえそば定食」!?
コレやコレや!
コレに決まり!
…と狙いも定まったのもつかの間、コレも「ごめんなさぁ〜い、9月からなんですよ〜」でまたも涙する。
で、この8月いっぱいは別に用意された Card(の Menu)に記されたものは OK とのこと。
Card は2枚で表裏があり、Dessert も含めた4種類は「本日の…」で支度済みなんだそうな。
そうとあらば、迷わず右の「かき揚げ天もりそば」をいただきたい。
もちろん、大盛りでネ。
冷たいお茶をいただきながら、待つことしばらく…。
おっ !?
天ぷらを揚げる香ばしい音が…。
あぁ〜んもう、蕎麦屋さんでこんなにも「待ちきれねぇ〜っ!」な思いをさせられるのはいつ以来だ…?
おぉ、脇役たちが出て来たぞ。
むむむ…?
この距離でも出汁の香りが私の嗅覚に伝わって来たぞ。
巨匠のおつゆ、おそろべし…。
しかも天つゆは別途と来た。
更には「よろしかったら、お塩でもお召し上がりください」だと…?
イイね、イイねぇ〜。
やってくれるねぇ〜。
白い塩とは、恐れ入ったよ。
この「白い塩」でも勝負できるという自信に満ちた巨匠からの無言の Message に、私の頭の前頭葉は既に刺激されっ放し状態…。
どうしよ、どうしよ…?
最初は塩で、次におつゆで…?
いや、その逆も捨て難いぞ!
あぁ〜、またブレまくりが Again だわさ。
そんなこんなで頭の中はグルグル状態のところへ…。
来たぁーっ!
うわっ !?
くぅ〜っ、何て素晴らしい香りの天ぷらなんだ?
これが…。
これが、巨匠が揚げられた天ぷらかぁ〜。
やべぇ〜、もう泣きそうだぞ。
泣いてる場合ではない。
先ずはおろしを天つゆに…。
そして、巨匠の天ぷらを巨匠のおつゆに、ちょいちょいちょいとなっ…。
では、いただきます。
んっ…?
何じゃ、こりゃ?
桜海老が Main のかき揚げなのは見てのとおりなのだが、私の頭脳は激しく混乱し、一瞬、思考回路は停止しかけたではないか…。
桜海老のかき揚げなのだから、当然にサクサクっと香ばしく…、だけではないのだよ、この天ぷらは!
サクサクなのに相反するフワフワ感も混在し、互いが相乗効果で摩訶不思議な歯応えを楽しませてくれる。
しかも、こんなに小さな桜海老がちゃ〜んとプリっプリしちゃっているんだから驚きは2倍3倍にと膨れ上がる。
そして、生姜と桜海老が繰り広げるこの「香りの共演」の素晴らしさを、さて、どう表現したらイイんだ?
私の程度の頭脳ではもう形容詞が見つからないのだ。
あぁ〜、美味い。
美味いぞよ。
とにかくもう「何じゃ、こりゃ?」な美味さのかき揚げに、私は感動を覚えるのであった。
うわっ !?
来たぁーっ!
巨匠の「水腰蕎麦」だぁーっ!
その「打ちたて」を一番最初にいただけるのは「開店攻め」且つ Pole Position の特権!
本日最初の巨匠の蕎麦をいただきます。
んっ…?
おぉ !?
おぉ〜〜っ!
こっ、これが Michelin Guide も認めた「水腰蕎麦」の味わい…?
あぁ〜。
またしても私の頭脳は混乱し始めた…。
十割蕎麦だというのに…。
私の頭脳はこの「あり得ない細さ」を否定している。
そんな訳ねぇ〜だろうが、バーカ! …と完全否定しているのだ。
けれども、現実は異なる。
確かに、この細さで驚きの歯応え、驚きの喉越しを今、私は楽しんでいる。
もう、支離滅裂…。
こんな十割蕎麦がこの世に存在していたのか…。
最初の一口は、正直に Shock だった。
その驚きから漸く我に帰り、落ち着きを取り戻すと言葉に表現できないような感動を覚える。
こんなに細いのに、何故…?
その疑問が、更に私を興奮させる。
そうそう、意地悪を企み、蕎麦屋さんには「最も過酷な時期」に足を運んだ筈の私だった。
ところが、どうだ?
芳醇とは言わないが、この時期、しかも多加水で打たれた蕎麦なのに、蕎麦の甘味が嬉しいのに驚かされる。
香りは全く期待していなかったのに、仄かでも蕎麦のイイ香りが口に広がる。
適度な水切れ加減もお見事。
でも一番驚いたのは、こんなに細いのにも関わらず、蕎麦が凄く瑞々しいのだ。
あぁ〜、そういうことだったのか…。
巨匠が何故に巨匠であり続けるのか?
その答えがやっと解ったような気がした。
おぉ、イカンイカン…。
巨匠のおつゆも試さなくては…。
では、巨匠のおつゆもいただきます。
あっ…。
あぁ〜。
ん〜〜、そう来ましたかぁ〜。
基本「すっきり辛口」を好むこの私なのだが、コレは私好みのソレに上質な「ざるつゆ」をちょいとだけ足した感じ、と言えばイイのだろうか?
いやはや、この上質な甘味が「ほんのちょいと…」加減がこりゃまた絶妙!
この極細の十割蕎麦とも合う合う!
しかも出汁の Performance は屈指の Level で、その「存在感」は凄い!
濃厚、且つ極めて上質で、しかもほとんど「魚臭さ」を感じさせない。
手間が掛かってるぞ、コレ!
ん〜、巨匠のおつゆにも感服。
この「非の打ち所の無さ」が流石の巨匠だった。
いや〜もう、After が楽しみだぞ。
蕎麦を楽しんだらば、この天つゆで「へなへな〜」な天ぷらを楽しむ。
こういう天ぷらの食べ方も蕎麦屋さんならではのお楽しみだったりする。
では「へなへな〜」もいただきます。
あぁ〜。
もう「へなへな〜」なのに、桜海老がしっかりと歯応えを楽しませてくれる。
しかも前述の素晴らしい香りに、巨匠の出汁の香りも加わっちゃって、もうもう…。
こんなにも素晴らしい巨匠の蕎麦と天ぷらを、我が家からちょいと車に乗って来れば、いただけちゃうなんて…。
幸せだぁ〜。
巨匠が群馬県富岡市のご出身であったことに感謝だよ、本当に…。
さぁ〜、After を楽しもう。
では、蕎麦湯をいただきます。
くぁ〜〜!
熱い蕎麦湯で割ると、巨匠の出汁が容赦なく香る香る…。
とにかく、濃厚なのに上品。
素晴らしい。
イイね、イイねぇ〜。
よぉ〜し、遊ぶぞ!
半分を残したところで、漸く薬味の出番である。
おろしをおちょこに Install する。
間違っても山葵を Install したらアカンでな。
山葵は蕎麦湯の「おつまみ」で楽しまなぁ〜。
おっ !?
この山葵のおろし加減も素晴らしいではないか。
いやはや、山葵のひと摘みですら巨匠の Message が伝わって来るんだから凄いよ。
では、蕎麦湯をおちょこに追加!
では、いただきます。
あぁ〜。
やっぱり「そうなのか」だったよ。
こういう出汁のおつゆはね、どんなに蕎麦湯で薄めても、出汁の香りと旨味を楽しめる。
その典型だよ、コレ!
しかも、大根からの香りと辛みがイイ感じに Punch を効かせてくるからまた楽しい。
で、また山葵を摘む。
その香り、甘み加減も申し分なし。
さぁ〜、蕎麦湯遊びもそろそろ Finish と行きましょうかネ。
では、いただきます。
あぁ〜。
もう言うこと、ありません。
いや〜もう、ご馳走様でした。
堪能しました。
感動しました。
50年以上を生きて「うどん」で感動したことは一度も無いが、本当に美味い「蕎麦」には感動を覚えてしまう私である。
ん〜、こりゃ〜9月が楽しみになって来たぞ。
そして新蕎麦の時期も…。
巨匠っ!
またお邪魔しますからネ!
身も心も満たされた私は意気揚々で上州富岡駅方面へと戻る。
その途中、お気に入りの Cafe で冷たいのをいただきたくなった。
早速、ご主人に無理難題をお願いしたらば、あっさりと断られてしまったばい(泣)
その無理難題とは「濃厚で上質な苦味」と「適度な酸味」を Blend して Ice でねぇ〜!
…だったのだが、そもそも「苦味」と「酸味」は相反するもの。
そりゃ〜、あっさり断られちゃうわ〜ね。
で、なんだ〜かんだ〜で Ice Coffee が登場。
あぁ〜。
Ice なのに、しっかり香ってくれるんだから嬉しいぞよ。
では、いただきます。
んっ?
あれれ…?
あぁ〜ん、もう…。
ちゃ〜んと「濃厚で上質な苦味」で「適度な酸味」しているじゃん!
Base は Colombia 産とのことなのだが…
苦味は深煎りの Colombia で
酸味は浅煎りの Colombia で
…という、お見事な匠の技で私からの無理難題を実現。
同じ原豆でも「煎り加減」も含めて使い分ける、流石に「この道」の Professional の1杯に感服。
いや〜、こりゃ〜イイぞ!
ご馳走様でした。
あぁ〜。
何だか「富岡」に移住したくなってきちゃったぞよ。
あの狭い路地は(夜も含め)面白いお店がわんさかだし…。
ちょいとブラブラするだけでも楽しいし…。
この「駅前通り」辺りにイイ物件はないの?
あっ !?
あった!
どうしよう?
買っちゃう…?
まさかのまさか、駅前通りにこんな看板があったぞ。
ん〜、いくらなんだろ?
富岡と言えば「赤レンガの倉庫」も数多く点在する。
耳をすませば、工女さん達の下駄が奏でる足音が聞こえてくるような佇まいだった。
では、我が家へ戻ろう。
復路も Miles を聴きながら快走するのであった。
あぁ〜、空が青いぜ〜。
あぁ〜、何から何もがイイこと尽くめの素晴らしい平日休暇になったぞ。
よしっ、明日からの仕事も頑張ろう!
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