人々の多くは、お金に関して誤解をしています。
お金には、「それ自体に価値がある」と信じ込んでいるのです。
あるいは、紙幣というお金は、「金(きん)」を担保に
発行されていると、本気で思っている人も少なくありません。
先日、あるご婦人から、
「現金は日本銀行が発行していますが、担保の金
(きん)はどこに貯蔵されているのですか?」
と、真顔で質問され、戸惑ってしまいました。
何しろ、お金とは「債務と債権」の記録であり、貴金属でも
なければ、貴金属を担保に発行されているわけでもありません。
なぜ、この種の間違った「金属主義」が蔓延しているのか。
経済学が「金属主義」をベースにしているのに加え、
以下、三つの要因があると思います。
(1) インフレ恐怖症。貴金属の担保なしでお金を発行すると、即座に「インフレになる!」と思っている。
インフレ、デフレは、供給能力と需要のバランスで決まります。
例えば、日銀が1000兆円分の現金紙幣(今の十倍!)を発行し、
河原(どこでもいいです)に積み上げておいたとして、果たして
インフレになるでしょうか?なるわけがありません。生産された
モノやサービスが買われない以上、どれだけお金を発行しても、
物価は上昇しないのです。
それにも関わらず、「お金の発行=インフレ」と
勘違いしている人が、それはまあ多いこと、多いこと。
(2) 貴金属のお金ならば、お金という「物」自体に価値があるため、
いざという時に持って逃げることが可能。
大陸諸国は、ある日、突然、地平線の向こうから騎馬軍団が襲来し、
村や町を捨てて逃げださざるを得ないかも知れません。
というわけで、遠く離れた国や町まで逃げ延び、その地で暮らす
ためには、お金は「貴金属そのもの」である方が都合がいいのです。
滅びた国の紙幣でモノやサービスを売ってくれる人はいませんが、
「金(きん)」「銀」であれば、大丈夫、という話です。
(3) 領主(シニョール)がお金における貴金属の含有率を勝手に変えてくる。
例えば、領主の三橋が1万円の金(きん)で1万円金貨を発行した
としましょう。ある日、お金が入用となった三橋は、1万円金貨を
回収し、金(きん)の含有率を1000円分に落とし、1万円金貨
を再発行しました。すると、三橋は金貨一枚当たり9000円、
儲けることができます。
これが、いわゆるシニョリッジ(通貨発行益)の元祖でございます。
シニョリッジのシニョは、シニョールからきているのです。
シニョリッジに腹を立てた人々は、やがてはジョン・ロック的な
「超」金属主義を生み出すことになりました。いずれにせよ、
金属主義は供給能力が不足しがちで、いつ地平線の向こう側から
「敵軍」が襲来するか分からず、さらには領主が通貨発行益を
得るため、貴金属の含有率を落とす世界の賜物なのです。
つまりは、中世です。
ケインズは、金本位制について「未開社会の遺物である」と
看破していますが、実際問題として「お金発行に際しては、
担保として貴金属がなければならない」といった金属主義は、
少なくとも現代文明から見ると「遺物」以外の何物でもないのです。
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