エヌ氏は友人の誘いで初めて競馬場を訪れた。
馬の走り、客の歓声、何もかも新鮮な出来事だった。
友人「馬券を買いに行こうぜ」
エヌ氏「いや、馬券は買わずにどの馬が勝つか予想して楽しむことにするよ」
友人「そうか、まぁ、それもいいだろう。初めて来て一文無しになったら二度と来たくなくなるものな」
エヌ氏はギャンブルに興味のない人間なのだ。
友人「なぁ、どの馬が勝つと思う?」
エヌ氏「そうだな。じゃあ、一枠の馬かな。直感だけど」
友人「感で当たれば苦労しないよ」
と笑っていた友人だったが、エヌ氏の予想は見事に当たり、一枠の馬が一着でゴールした。
友人「ビギナーズラックってやつか。 じゃあ次のレースはどれが勝つと思う?」
その後も、エヌ氏は次々と一着の馬を当てていった。
友人「最後のレース、お前の予想した馬に賭けてよかったぜ。今日の負けを取り戻すことができたよ」
エヌ氏は嬉しかった。
予想が当たったからではなく、友人が喜んだからだ。
それから友人はたびたびエヌ氏を競馬場に誘うようになった。
ある日、いつものようにエヌ氏が予想をしていると、知らない男が話かけてきた。
社長「私はこの競馬場の社長だ。君が勝ち馬を当てる才能を持っていると噂で聞いたよ。どうかね、うちの競馬場で予想屋として働かないか?」
予想屋とは、競馬場に来た客に勝ち馬の予想を教える仕事だ。
もちろん、よく当てる予想屋ほど人気が高い。
エヌ氏は、「自分の予想で多くの人が喜ぶのなら」と言い、競馬場の予想屋となった。
『エヌ氏の予想は当たる』
このことは、働き始めて一月もしないうちに競馬場で話題になり、競馬ファンはこぞってエヌ氏の予想を聞くようになった。
エヌ氏は嬉しかった。
金のためとはいえ、自分がこんなにも人に必要とされるとは思ってなかったからだ。
しかし、そんな日々も長くは続かなかった。
競馬場に来る客がどんどん減っていったのだ。
そして、エヌ氏は社長から通告を受けることとなる。
社長「エヌ君、すまないが、君はクビだ」
エヌ「なぜですか!? 私は予想屋として完璧な仕事をしているのに」
社長「あぁ、君の仕事は完璧だ。 しかし、完璧すぎたんだ」
社長「客の全員が君の予想する馬を買うようなってしまった」
「倍率1倍の競馬の何が面白いのかね」
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