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2016年01月03日12:42

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A-10攻撃機の話を少し。

■中国、「人工島」の滑走路で試験飛行 ベトナムが抗議
(朝日新聞デジタル - 01月03日 01:33)
http://news.mixi.jp/view_news.pl?media_id=168&from=diary&id=3786570

例によって、記事は借りただけで、内容は別物です。(書いておかないと怒る人が時々いる)

A-10、サンダーボルト�供�2)は、アメリカ空軍が運用している攻撃機です。
1970年ごろの開発当時からアナログな方向性で設計され、ジェット機であるにもかかわらず音速も出ないし、高性能レーダーも積んでいないという、変な機体でした。

他に類を見ない30mmという大きな機関砲を持ち、装甲の厚い戦車であっても、上面から攻撃することで撃破でき、反面、誘導ミサイルなどはあまり得意ではないなど、現代機としてはちょっと変わった能力を持ち、ナチスドイツの変態撃破王、ルーデルが開発に関わったとされ一部で絶大な(変な)人気を誇ります。

ルーデル
http://matome.naver.jp/odai/2133214499661356901
A-10
http://matome.naver.jp/odai/2139333204612582501

A-10は、陸上部隊を支援する「近接航空支援」という目的のために作られました。要するに、敵と味方が地上で戦っている時に、わーっと飛んできて、敵の陣地や戦車を攻撃してくれる役割ですね。

最近はいろんなものがデジタル化していますので、一般的な戦闘機・攻撃機であれば、姿も見えないような高空から、ミサイルで敵の部隊を狙い撃ちできるのですが、A-10はそういう高性能兵器はあまり使えず、見える距離から狙い撃ちというよりはばらまくように砲弾や爆弾を撃ちまくっていく、という感じで、ちょっと方向性の違う、稀な機体となっています。そのために前線の兵士からは絶大な信頼を得て、度々引退がささやかれるもののそのたびに生き延びているのだ、などと言われることもあります。


個人的にA-10の面白いところは、その開発秘話にあります。

A-10は「空軍」機で、支援するのは陸上兵、つまり「陸軍」です(または海兵隊)。知っている人は知っていますが、アメリカ空軍は高慢ちきで、特に開発当時の1970年代以前は「核兵器さえあれば陸軍いらねーよねー」という風潮だったため、核兵器の運用ができる空軍は他の3軍(陸・海・海兵隊)を雑魚扱いしており、(若干海軍には敬意を払っている節はあるような気もしますが)、ベトナム戦争当時でも、墜落した空軍パイロットを陸軍に探させる一方で、近接航空支援を要求されてもやりたがらない、真面目にやらないなど、かなり仲が悪い状態が続いていました。

「近接航空支援?大型爆撃機で本拠地ごと吹っ飛ばせばいらなくねー?」

当然ながら、「陸軍を支援するための飛行機」を持つ気など、さらさら無かったと思われます。


ところが、これを覆す、「空軍的にヤバイ」事態が発生しました。あまりに空軍が近接航空支援をしたがらないので、陸軍が「自前で航空機を持とう」と動き出したわけです。ここで皆さんにひとつご教示申し上げたいのですが、ある組織、そしてあらゆる組織にとって、唯一にして絶対の存在意義とはなんでしょうか。経営者はピンときますね(笑。

予算です。予算の獲得こそが、あらゆる組織の唯一にして絶対の命題であり、予算が獲得できない組織など無価値です。・・・でしょう?

で、空軍も大慌てで、

 「陸軍を支援するための飛行機」を作ります!!
 あなた、陸軍でしょう?飛行機って管轄じゃないでしょう?
 いりませんよね!?だからこのプラン、もらいますね?

という感じで、横から強引に引っこ抜いてでっち上げたのがこのA-10なのでした。


当時のアメリカ空軍は、あるいは今も、かなりテキトーなことをしています。特に、WW2が終わってから1970年代まで、まともな戦闘機を作っていません。戦闘機と名のつく飛行機はあるのですが、基本的には真っ直ぐかっ飛んで行ってミサイルばーん!十分でしょ?みたいな感じ。特に、当時ようやく音速を超えましたので、最高速度が上がる→新型機導入という感じでカタログスペックにばかりうつつを抜かすようになります。

これが裏目に出たのがベトナム戦争で、当時アメリカ空軍が誇ったセンチュリーシリーズという駄作戦闘機シリーズは(空軍は駄作とは思っていなかったようですが)、旧式のロシア機であるMigシリーズを相手に一機も撃墜できず、海軍機(=格闘戦に強いことが多いです)に助けてもらうという有様でした。

現在、F-15、F-16、F-18というベトナム戦後世代の戦闘機がアメリカの中枢を担っていますが、(新型のF-22はごく少数、最新のF-35はまだ)、これらは同一の発案者(あるいはグループ)が開発に関わっています。戦闘機開発において、戦後のアメリカ空軍史上、「彼らだけがすぐれている」と言ってよく、その後のF22で遺産を食い潰し、F35では見る影もなくなっていると言って過言はないでしょう。

さて、A-10も、実は彼ら戦闘機開発陣の手による作品です。
そのため、コンセプトがくっきりとしており、
カタログスペックではなく実用性を重視して、使い易い攻撃機に仕上がったわけです。
「あの空軍が」、横から引っこ抜いてでっち上げた攻撃機にしては、です。

A-10の開発と運用は、様々な製品開発について重大な示唆を与えてくれます。

・まずは小さく鋭いコンセプトが必要であること。
「なんでもできる飛行機」なんて大風呂敷はダメです。
いいですか、そこのスマートフォン開発者さん!?

・続いて、開発陣にしっかりとした理論的な裏付けがあること。

F-15やF-16といった戦闘機開発の当時、航空機メーカーにも当然ながら、「実績のある設計者」は存在しました。特に、駄作機シリーズを設計した連中などがそうです。
彼らは飛行機の設計という積み上げは持っていましたが、実際の航空戦の分析などは怠っていました。怠っていましたが、一家言は持っていました。
我々が何かを作る時、「実績のある設計者」の言葉をどれほど無視できるでしょうか。

・開発陣に人間的な圧力を跳ね返す力があること。
F-15は当初、海軍機と同様、「開閉式の翼」を採用する予定でした。カタログスペック的にも見栄えがしますし、お偉方も半可な知識で「あっちの方がいいんじゃないかね」的なことを言ってきます。しかも、開閉式の方が高価★ですから、予算的にも美味しいわけです(笑。
そういうものを跳ね返す能力がなければ、いくら素の能力が優れていても、ダメだったでしょうね・・・。
ちなみに海軍の開閉式翼の戦闘機(F-14)は、20年も前に引退してしまいました・・・。

・一方で、現場の意見を聞くこと。
この現場も、「その辺の人々」ではダメなようです。彼らが選んだのは、WW2の敵国ドイツの撃破王でした。その結果、戦場での耐久性について、「革新的な」アドバイスを得られました。この「革新的な」アドバイスが生まれたのは、開発よりも30年前のことです。
どれほど、ものの開発をしている人が、現場の声を聞かないか、ということを如実に示しています。
しかし、ケータイユーザーのアドバイスに従っていては、スマートフォンの生まれはもっと遅かったかもしれません。必ずしも、現場=使っている人の意見の集約という意味ではないようです。
しかしさらに一方で、ドイツ空軍がドイツの撃墜王に「どんな飛行機が欲しいか」と聞いたところ、
「敵国イギリスのスピットファイアっすねえ」
などと言われて閉口した、というエピソードもあります。聞き方もまずいが、聞いた相手もまずかったようです(笑。単純に、過去の現場のエリートだから、というわけにもいきませんね。

・そして、専門機の寿命は短い
しかし結局、A-10は同世代のF-15やF-16、F-18よりも20年ほど早く、引退することになりました。主な理由は予算で、F-15などが対空攻撃も地上攻撃もできるにもかかわらず、
A-10が対空攻撃をできないこと、従って、F-15は単独でも行動できますが、A-10は常に味方の援護を必要とします。
その結果、コストが割高なのが理由になってしまいました。
F-15等もそれほど長い寿命を残しているわけではないのですが、何にでも使える以上、最新鋭機が浸透するまでは、存在し続けるわけですね。これは、iPadに対するKoboなどにも言える関係性で、絶対性能に優れていても、汎用機が浸透すれば割高になってしまうわけです
それでも、A-10の40年という寿命は、十分長いのですけどね。


新年一発目から長くなりました。偏った性能と唯一無二の外観で人気のA-10ですが(人気なのか?)、開発話はもっと面白いよ、というお話でした。

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