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次 の 停 車 駅 は 月 で す 。コミュの「この汽車は月に行きますか?」 と、見目麗しい女がプラットホームから車掌の私に尋ねた。 「はい。参ります。」と私は答え、 客車の扉を開けながら、 「月までの乗車券でよろしいですか?」と尋ねた。 この汽車は自動販売機や自動改札などのような無粋なものはなく、 車掌の私が鞄を開けてその場で乗車券に鋏を入れ、 客車への扉もこの手で開くことになっている。 しかし「乗車券はもう持っていますわ」と女は答え、 私の眼の前に小さな小石を差し出した。 「これは今からあなたが連れて行ってくれる月の小石。 これでよろしいでしょう?」 私はその女の真摯な目に捉えられ、その小石を受け取り、 魔法にかかったように扉を開き、 女を客車の中に引き入れたのだった。 「今宵は、他にお客様はいらっしゃいません。」と私がいうと、 「ええ、承知していますわ」と女は答え、 客室の扉が閉じた途端、 女の体が私に近づき女の顔が眼の前に迫り、 私は女の体を抱いてか抱きしめられてか、 熱いくちづけを交わしていたのだった。 「この汽車は自力では走りません。お客様の協力が必要です。」と、 私は女を抱きしめながら、唇が離れたあとため息のように囁いた。 「それも承知していますわ。さあ私を連結して。」 汽車の客室なのにそこにはベッドがあり、 私たちはそのまま倒れこみ、女は唇から溢れる油を、 私の連結器に塗りつけて、やがて完全に連結した。 どちらが駆動車かはわからない。 ただ二人でしっかりと連結し、月への線路を登り出したのだ。 女の大きな汽笛のような叫び声とともに。 その時まだ私が月の石を握っていることを思い出した。 それは月の石。 つまり女の「意思」という意味だったことを、 私はものすごい速度で走るベッドの上でその時気がつく。 その意思を大切にしよう、 さあ、月まで行こう。 その後の乗車券は、きっと定期券になると信じて。

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「この汽車は月に行きますか?」
と、見目麗しい女がプラットホームから車掌の私に尋ねた。

「はい。参ります。」と私は答え、
客車の扉を開けながら、
「月までの乗車券でよろしいですか?」と尋ねた。

この汽車は自動販売機や自動改札などのような無粋なものはなく、
車掌の私が鞄を開けてその場で乗車券に鋏を入れ、
客車への扉もこの手で開くことになっている。

しかし「乗車券はもう持っていますわ」と女は答え、
私の眼の前に小さな小石を差し出した。
「これは今からあなたが連れて行ってくれる月の小石。
これでよろしいでしょう?」

私はその女の真摯な目に捉えられ、その小石を受け取り、
魔法にかかったように扉を開き、
女を客車の中に引き入れたのだった。

「今宵は、他にお客様はいらっしゃいません。」と私がいうと、
「ええ、承知していますわ」と女は答え、
客室の扉が閉じた途端、
女の体が私に近づき女の顔が眼の前に迫り、
私は女の体を抱いてか抱きしめられてか、
熱いくちづけを交わしていたのだった。

「この汽車は自力では走りません。お客様の協力が必要です。」と、
私は女を抱きしめながら、唇が離れたあとため息のように囁いた。

「それも承知していますわ。さあ私を連結して。」

汽車の客室なのにそこにはベッドがあり、
私たちはそのまま倒れこみ、女は唇から溢れる油を、
私の連結器に塗りつけて、やがて完全に連結した。

どちらが駆動車かはわからない。
ただ二人でしっかりと連結し、月への線路を登り出したのだ。
女の大きな汽笛のような叫び声とともに。

その時まだ私が月の石を握っていることを思い出した。

それは月の石。
つまり女の「意思」という意味だったことを、
私はものすごい速度で走るベッドの上でその時気がつく。

その意思を大切にしよう、
さあ、月まで行こう。

その後の乗車券は、きっと定期券になると信じて。