淡水巻貝スクミリンゴガイは南米原産で、1980年代 前半に食用のためアジア各国に持ち込まれました。しかし、販路が拓けず今はほとんどの国で商品価値をなくしています。一方、野生化した貝が生育初期の稲を加害し、各国で大きな問題になっています。日本でも九州など西南暖地の水田で被害が生じています。
広東住血線虫Angiostrongylus cantonensisという熱帯地方に多く見られる寄生虫が沖縄のスクミリンゴガイからみつかり(Nishimura and Sato, 1986)、大きな問題になったことがあります。広東住血線虫は、ネズミを終宿主とし、アフリカマイマイやナメクジなどの貝類や甲殻類、両生類などを中間宿主とする寄生虫です。これら宿主となる動物を生や不完全な加熱調理後に食べたり、宿主に触れた手を口に入れることにより、人体に感染する可能性があります。感染すると発熱、頭痛、嘔吐などの症状が出ます。人間は本来の宿主ではないため、人体に入った線虫は増殖できずに数週間後には死滅しますが、まれに脳に移動し、感染した人が死亡した不幸な例もあります。
スクミリンゴガイは中間宿主の一種にすぎず、しかも国内では沖縄県以外のスクミからこの線虫が見つかったことはありません(ただし、ネズミやナメクジからは本州でも発見されており、本州のスクミからも今後見つかる可能性はあります)。リスクの判断基準には個人差があり、一概に「安全である」あるいは「危険である」とは言えませんが、少なくとも貝などの生物を触れたら必ずよく手を洗うという基本的な習慣を守って欲しいと思います。
困ったときには