[春と消えた] 遥奈
裸になったその枝に
何が咲いていたのだろう。
地面に落ちた灰色は
生きた心地がしなかった。
「いつかは終わりが来るんだ」と
誰かが小さく ため息ついた。
あなたを見上げた この視界は、
間もなく色を亡くすだろう。
春の寿命は短すぎた。
散ってしまうなら、咲かないで。
悲しくさせないで。
夢もみせないで。
私に命は重すぎた。
私にあなたは綺麗すぎた。
切られてしまったその枝に
何かが咲いていたのだろう。
踏み潰されても あなたの色は
幸せそうで、怖かった。
きっと終わりが来たんだと
私は小さく ため息ついた。
春の歩幅は大きすぎた。
散ってしまうなら、咲かないで。
置いていかないで。
ひとりにしないで。
私に命は重すぎた。
私にあなたは綺麗すぎた。
「また会える?」って泣いた私に
「また会える」って あなた 笑った。
春の終わりは優しすぎた。
いつか
消えてしまうなら、咲いていて。
悲しくならないように
夢もみるよ。
ここでみるよ。
散ってしまっても、
ひとりになっても、
ここで待つよ。
あなたを待つよ。