「李禹煥美術館」
現代美術家の李禹煥(リ・ウファン)氏の初めてとなる個人美術館。
現在ヨーロッパを中心に活動している国際的評価の高いアーティスト・李禹煥と建築家・安藤忠雄のコラボレーションによる美術館です。
直島には、アンディ・ウォーホルやデイヴィッド・ホックニーらによる現代アートを滞在しながら観ることのできる美術館「ベネッセハウス」や、クロード・モネ、ウォルター・デ・マリア、ジェームズ・タレルの作品を恒久設置する「地中美術館」などの美術館があるが、いずれも建築家・安藤忠雄氏の設計によるもの。「李禹煥美術館」も安藤忠雄氏が設計を担当し、地中美術館とベネッセハウスのちょうど中間に位置する谷あいに設けられている。
半地下構造となる安藤忠雄設計の建物のなかには、李禹煥の70年代から現在に到るまでの絵画・彫刻が展示されており、安藤忠雄の建築と響きあい、空間に静謐さとダイナミズムを感じさせます。
海と山に囲まれた谷間に、ひそりと位置するこの美術館は、自然と建物と作品とが呼応しながら、モノにあふれる社会の中で、我々の原点を見つめ、静かに思索する時間を与えてくれます。
李禹煥美術館へのアプローチは、ちょうど海をのぞむことができる谷の上部から、階段状になっている。そこには、あえて海への眺望をさえぎるように大きなコンクリー卜壁があり、その壁を左に感じながら、訪れる者は一歩一歩、下へと降りて行くことになる。
李禹煥氏は、1970年前後における日本の現代アートのムーブメント「もの派」の中心的作家として知られている。80年代より欧米でも精力的に作品発表を行っており、日本、韓国のみならず、世界的評価を受けている。
館内に入ると、まず最初に70年代から現在に至る絵画・彫刻の「出会いの間」を経て、「沈黙の間」へと入っていく。ぐっと暗い「沈黙の間」の中には、四角く切り取られた窓からの光が、作品「関係項‐沈黙」(2010年)と呼応するように差し込んでいる。壁に立てかけた鉄板と床に置かれた石による作品は、観る者に内省を促すような威厳に満ちている。
「沈黙の間」を出ると、そこは「影の間」。スペースとしては小さいが、ここには非常に存在感のある作品「関係項‐石の影」(2010年)が展示されている。プロジェクターによる映像を石の影となる部分に美しく投影した作品だ。自然と人間の普遍的な営みを凝縮した映像と、実体である石の佇まいの対比に、時間を忘れたかのように見入る人も多く見受けられた。
最後の空間は、一転して明るい「膜想の間」だ。真っ白に塗られた空間、その明るさに目を奪われる。そこには、三面の壁に作品「対話」(2010年)が掲げられており、その作品に呼応するかのように白い空間は弧を描いている。
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