98年6月にTipoで記事が掲載されて以来、一生のどこかで手に入れたいと夢見る、私的に至上の1台。
Gilletはベルギーの自動車メーカー。
2000年代初頭にはワンメイクレースも行われていたので現在の量産体制は申し分ないのであろうが、当初は創始者ジレットおじさんが夢を共にするスタッフを率いるそれほど大きくはない企業だったのではないだろうか。
Vertigoとは『眩暈』という意味。
当時の雑誌に書かれていた記事で思い出されるこの言葉の使い方としては→
戦闘機を操るパイロットが、戦闘中あるいは訓練中の激しいGやロールアウトの中で、上下の感覚がなくなる(これを空間識失調という)状態の時、無線で他の機体のパイロットに『Vertigo!!(ヴァーティゴ!!)』と叫ぶなどして危険を伝え、機体の向きや取るべき行動などを伝えてもらい、回復をはかるのだという。
そんな眩暈という言葉を名前に与えられたクルマであるから、その刺激的な走りはさぞ乗るものを魅了したに違いない。
ケイターハム スーパーセブンを思わせるフォルムであるが、やはりその思想はエバーグリーンで、私は現代版スーパーセブンというようなイメージでこのクルマを捉えていた。
2シーターFR、NSXと同じアルミのボディで車重は750kg、当時のスペックでもエンジンは4.6lだったか3.4lだったか、いずれにしてもハイエンドなパワートレーンを与えられていたから、良質なスポーツカーが産まれ難かったこの頃のレースマニアにはたまらない1台であったろう。
ちなみにスーパーセブンの同時期のハイエンドモデルJPEやスーパーライト、R500Rなどはその変遷、進化(?)の中で車重470kg程にまで達したものも生まれていたが、走りのために不要なものはすべてを排除して…というやり方が(燃料計までオミットしたとかあったような)、もちろんセブン好きや限界を極めるもの好きには受け入れられたとしても、なんだか不健康な域にまでイってしまったような感があったのは否めない。
750kgが健康かどうかはともかく、エバーグリーンな思想のまま現代の技術で究極のスポーツカーを作った、と感じさせたところにこのクルマの良さがあったと思う。
果たしてそれから12年以上が過ぎた。
当時はおそらく日本には1台もないだろうと思わせた(そして叶うなら最初にその1台を手に入れたいと思っていた)ヴァーティゴであるが、現在の日本国内ではどうなのだろう。
グランツーリスモ3においてヴェルティゴ レースカーとして登場したときには、まずパッケージの裏の登場メーカー一覧にGilletの名があったことに心躍らせたが、厳密な自分の心境では日本の多くの人にはこのクルマを知られたくない(誰かに手に入れられたくはないから)本心があった(それは今も同じで、mixiのコミュがなかったことに半ば歓び(ヨロコビ)を感じてすらいた)。
だからギトギトしい赤と黒が支配するカラーリングの、余り魅力的には映らない見た目の登場の仕方と、ヴァーティゴではなくヴェルティゴという覚えづらくてカッコよくもない名前で出てきたことは、ある意味(レーシングモディファイしていない市販車バージョンはなかったから、このクルマの良さを知っているのは自分だけでありたいという自尊心を満たすためには)自分にとって都合が良かった。
価格は当時のエンジンスペックの排気量の小さい方(3.4lと記憶)で1,400万円だったが(オプションのことはわからないので一番安いモデル)、ベルギードルだったかフランだったか既に貨幣価値のわからない単位だったので、現在の円高ユーロ安の状況ではいくらなのだろう。
画像検索をしても、当時HPに掲載されていた画像(カッコよくてそれを携帯の待ち受けにしていた)は出てこなかったが、今でも美しいフォルムは変わっていないようだ。
とかく現代のスポーツカーは大排気量だが車重は重くなっていく一方で、普段履く靴を選ぶときにも手に持って軽いと感じないときは即候補から外すくらい、軽いということにメリットを感じている自分にとって欲しいと思わせるクルマは少ない。
いつまでも自分の中に輝き続ける存在であって欲しいという願いを込めて、ここにコミュニティーを作成する。
画像やスペックなどの情報をあげて、あとはこのクルマが好きな人と大々的ではない範囲で愛でていられたらいいな、と思う。
困ったときには