「トンプソンの今度の相手はおかまだった。ある事業家の倅をかどわかした。だから殺る」
マンシェット一番の著名作である『狼が来た、城へ逃げろ』の、最初の文章だ。“暗黒小説”と呼ばれる小説ジャンルに、若き狼・マンシェットが颯爽と登場した瞬間である。
(この後、殺し屋トンプソンはおかまの心臓を八つ裂きにする)
ジャン=パトリック・マンシェット Jean-Patrick Manchette
1942年12月19日-1995年6月3日
大学卒業後、様々な職を転々とする。その中にはポルノ映画の助監なども含まれていたらしい。
大勢でやる仕事には向かない、と悟り小説家に転向。
71年に2本書いているが、邦訳されておらず。
しかしタイトルからしてマンシェット節はこの時から健在だった事が分かる。
『死体なんざ日干しにしとけ』『死体置場は満員』だ。
72年、『狼が来た、城へ逃げろ』がフランス推理小説大賞を受賞。
その後、『地下組織ナーダ』(名翻訳家・岡村孝一氏により、フランス女の一人称が“あたい”に!)、『危険なささやき』、『殺しの挽歌』、『殺戮の天使』、『眠りなき狙撃者』ほかにも2本執筆しているようだが、翻訳されているのは上記の作品だけである。
いくつかの作品は映画化されている。『地下組織ナーダ』はクロード・シャブロルの手によって。
マンシェットはその生き様も面白く、一時期、広場恐怖症(引きこもり?)になり外に出れなくなってしまった。しかし外に出て好きな映画が見たい…。マンシェットは幼い息子に託した。映画を見てきてもらい、息子が語る(記憶が曖昧になり虚実入り混じった)感想から映画を再構築。新たな、架空の映画の批評を書き、雑誌に掲載したところ、これが評判になった、なんて話もある。
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