【妻よ!松本サリン事件犯人と呼ばれて・・・】
発生からまもなく15年になる松本サリン事件は捜査、報道のあり方に重い教訓を残した。警察による家宅捜索、身に覚えのない疑惑報道の数々……。河野義行さんが、それらと立ち向かい、潔白を主張し続けることができた原動力は何だったのか。ドラマとドキュメンタリーで再現するフジテレビの「妻よ!松本サリン事件」(26日午後9時)がスポットを当てるのは「家族の絆(きずな)」である。【岩崎信道】
■事件の経緯
94年6月27日夜、長野県松本市北深志の住宅街に刺激臭のするガスが漂った。午後11時9分、河野さんは第1通報者として消防に異変を伝えた。2匹の飼い犬が倒れ、妻の澄子さんもけいれんを起こしていた。自らも中毒症状に苦しみ始め、澄子さんとともに病院へ運ばれ入院。翌日早朝までの間に、付近住民7人が死亡した。
28日、長野県警松本署捜査本部は、殺人容疑で河野さんの自宅を家宅捜索。薬品類を押収した。趣味の写真現像や陶芸をするために保管していたものだったが、事件とのかかわりを疑う報道が始まった。
翌月3日、河野さん宅近くでサリンが検出されたことが判明。30日、退院した河野さんは事件関与を否定する会見を開いた。同日から2日間、捜査本部による事情聴取も受けた。その後、河野さんは聴取を拒否している。
こう着状態の捜査が解決に向かったのは、発生から約1年後だ。
捜査当局が、当時のオウム真理教幹部らによる犯行と特定。毎日新聞など主要メディアは事実に反する報道があったことを認め、各媒体上などで河野さんに対する謝罪を伝えた。