伊藤公象(1932−)は石川県・九谷の窯元に弟子入りの後、茨城県・笠間に工房を構えた当初は、器のデザイナーとしての仕事を模索していたという。
その後はいったん陶芸から離れたが、70年代のはじめからは素材を陶に限定し、土の性質を巧みに作品に取り入れたシリーズを次々と発表、器作りにとどまらない陶の造形や、陶のインスタレーションなどの分野に新たな地平を拓いた作家として知られている。
生の陶土に力を加えると、どんな形にも変形させることができる可塑性という性質に着眼した「多軟面体」、生土が乾燥の過程で収縮することに注目した「褶曲」、また凍った生の土をそのまま焼成し、氷の結晶を土に移して見せる「起土」などが代表的なシリーズだ。
また作品は、建築装飾やパブリックアートとして制作される点においても、実用としての器や室内鑑賞品としての領域に安住せずに制作を続け、それを長く意識し実践してきた作家ともいえる。