漂流ネットカフェ　押見修造

妊娠中の妻とケンカしたサラリーマンの耕一は、会社帰りに、ふとネットカフェに立ち寄った。
そこで偶然、出会ったのは、初恋の人・果穂。よみがえる甘酸っぱい思い出。“この夜がずっと続けばいいのに”。
その願いは突然かなう。なんと耕一たちは、ネットカフェごと、どことも分からぬ時空に漂流してしまったのだ。

ここで思い出すのは、楳図かずおの名作『漂流教室』。
そこでは、現実に対応できずに理性をなくし、エゴや欲望をむき出しにした大人と、プラグマティックに状況に対応し、成長していく子供たちが対照的に描かれていた。
しかし、ここに登場するのは、たまたまネットカフェに居合わせただけの大人のみ。
極限状態に置かれた彼らの理性は、襲い掛かる不安と他人への疑心暗鬼から次々に崩壊。
むき出しの暴力と性欲に支配されていく。氷漬けになった理性を誰もが取り戻す時はくるのか、それとも……！？

作者は『ユウタイノヴァ』『デビルエクスタシー』など、特殊な設定において、欲望と純粋な思いの間で揺れる、思春期の主人公の意識の流れを巧みに描いてきた押見修造。
３０歳目前、生活の疲れから“ここではないどこか”を渇望した耕一が、初恋の人を通じて自分を再認識し、どうやってこの現実と折り合いをつけるのか。
そこから、どうやってこの異常な世界をサバイブしていくのか。
手に汗握りつつ見守りたい。

　　　
「漫画アクション」に連載中。４月から連続ドラマに。


漂流ネットカフェ 1 (1) (アクションコミックス)

著者：押見 修造

出版社：双葉社　　

価格：￥ 630


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