時々、蝶のようにとまれたら
小さな手のひらは
幾つかの虚飾と幾つかの欺瞞に
ふれることなく
母の後姿に似た洪大な光の終末を
決して 恐れはしなかっただろう
無数の刺は 邪悪な血を刻み
傷の深さは 愛情の疎遠を呼び
ぎこちなく はぐれ さまよい
朽ち荒らんだ翅を隠すこともできず
翔ぶことのない希望を 胸に突き刺す
時々、蝶のようにとまれたら
透き通るその瞳は
降り積もる塵と澱んだ風にかまうことなく
流れ落ちる星の閃きを想い描いただろう
あらゆる風景は時の未明で安息し
蔑みをも抱擁しようとした
何匹かの少年に似た偽少年と
少女に似た偽少女は ひからびたその蜜の不在へと群がってゆく
それは永遠にいやされぬ未来
幸福な未来には達すことのない純真な楽園の壊れた姿なのだ
時々、蝶のようにとまれたら
光と闇のすきまに潜んで
水と土の尊さを書き綴るであろう
はかない美しさを捕まえたその手が
故意であれ 事故であれ 淡い生命に触れ
にがしてしまった頃を懐かしみながら
五月三〇日 未明 シオ
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著者・飛来はゆくさんのブログ‘北摂グルメ’
困ったときには