ーヴェンの作曲した23番目の番号付きピアノソナタである。「熱情(アパショナータ)」として有名で、ベートーヴェンの三大ピアノソナタの1つに数えられる。ベートーヴェン中期の最高傑作のひとつとして名高い。
ベートーヴェンの32のピアノソナタの中における位置づけとしては、第21番(ヴァルトシュタイン)、第26番『告別』と並んでベートーヴェンの中期ピアノソナタを代表する作品とされ、また第8番『悲愴』・第14番(月光)と並んで、ベートーヴェンの三大ピアノソナタとされている。
ベートーヴェンの全作品中においても、燃えるような激しい感情と寸分の隙もない音楽的構成の一致から、最高傑作の中のひとつに数えられており、最も重要な作品のひとつとされる。
この曲は終楽章を短調で締めくくるものとしてはベートーヴェンのピアノソナタ中最後の一曲であり、この曲の完成以後、彼は四年もの間ピアノソナタを書かず、再着手後もついにこのような激情をあらわにした曲を作ることはなかった(この曲の後に書かれた短調のピアノソナタは第27番ホ短調と第32番ハ短調があるが、いずれも終楽章は長調で喜ばしく終止している)。このことから、第23番はベートーヴェンの闘争的な曲想のピークであり、かつ最終到達点と見なすことができる。
なお、「熱情」という通称は、ベートーヴェン自身がつけたものではない。後年ハンブルクの出版商クランツがピアノ連弾用の編曲版の出版に際してつけたものであるが、この通称は、この曲の雰囲気を的確に表したものだと言え、今日までそのまま通用している。
1806年秋のエピソード。リヒノフスキー公邸からウィーンに帰る途中、ベートーヴェンは突如雨に降られ、たまたま持っていたこの曲の原稿を濡らしてしまった。その原稿をマリー(ラズモフスキー公の司書ビゴーの妻で、優れたピアニストでもあった)に見せたところ、彼女は初見で完全に弾いてしまった。ベートーヴェンは大変喜び、出版後の原稿を彼女に贈った。この自筆楽譜は現在パリ音楽院に保存されている。
困ったときには