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詳細 2013年8月20日 09:00更新

小説を「聴く」こと

この本の最大の「売り」は、なんと言っても、すべて著者自身が読んだ朗読CDである。
作者がそれぞれ自分の代表的な短篇を読んだCD、というのは英語圏でもそうざらにないと思う。

....と、なんだか、有り難さの押し売りみたいな書き出しになってしまったので、急いで付け足しておくと、僕はべつに、小説を(たとえ作者自身による朗読であれ)「聴く」ことの方が、紙の上の文字を「読む」ことよりも、体験として格が上だとは思っていない。
たとえば、これはほかのところでも書いた事だが、僕の訳している作家のなかでも、T.R.ピアソンなどは文章などは、文章自体は暇なおっさんが変てこな話をえんえん語っている幹事を彷彿とさせるにもかかわらず朗読は自分でするのも他人のを聴くのも好きではないと言っている。シェークスピアが朗読をしに来ると言われても行く気はないね、と初めて会った時に言っていた。
  もちろん、朗読嫌いでも、新刊が出れば朗読ツアーに送り出されるのがアメリカでは普通であり、ピアソン氏の朗読ビデオなどもちゃんと残っている。見せてもらったら、いやほんと、全然楽しくなさそうにものすごい早口で読んでいて、「あーっさっさと終わらせてトイレに行きてぇ。」と思っているみたいな顔をしていた。
  そもそも、二時間の作品であれば二時間で観るしかない映画とは違って、文章の場合、1ページを1分で読む事もできれば、5分かけてじっくり読むのも自由である。たしかにビデオやDVDになって、あるシーンをもう一度観たりすることも可能になったが、10秒のシーンは依然として10秒で観るしかないわけで、読むスピードが読者に委ねられている文章とはやはり違う。
 それにまた、たとえば登場人物の声にしても、文章ならそこからどのような声を想像しようと自由だが、映画ではとにかくもう物理的に声を与えられてしまい、想像の余地はない。
  要するに、文章というのは、受け手が実に多くをカスタマイズできる媒体なのである(もちろん、たとえ同じ映画を観ていても、結果的に観ているものは一人ひとり違う事は確かだけれども)。朗読を聴くというのは、だからある意味では、そういう文章の自由さを、すべて放棄することとも言える。そんなことやりたくないね、というピアソンのような人がいても、実は少しも不思議はないのである。

以下、略。

上記は柴田元幸さんのまえがきです。
Barry Yourgrau, Rebecca Brown, Kelly Link, Stuart Dybek, Steven Millhauser,Paul Austerの代表的短編小説を朗読したCDと小説を収録した本書を使用して英語学習、読書、興味をお持ちの方は是非語ってください。

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カテゴリ
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