わたしたちが暮らす世界には、絶対だと言えるものなど
ひとつとしてありません。
それは、ひとそれぞれが、情報に対して、
自分の感覚器官を通して受け入れ、
それらを頭の中で再構築をし、経験によって関連付けて、
再構築したものを現実と呼ばれる外界に投影するという、
そうした態度をとるからかもしれません。
共有しているものがあるとすれば、
それはわたしたちの中に届く前に存在しているものだけで、
でもそれらはわたしたちが見た瞬間に、
もうわたしたちの中を通ってしまい、
わたしたちの感覚によって存在してしまい、
その時点でわたしとあなたの見ているものは、
本当の意味で同じものではなくなってしまったのです。
目にするものも、耳にする音も、手に触れる感触も、
あらゆる感覚は、ほんとうは、ひどく個人的で、
ともすれば孤独なものなのかもしれません。
・・・・・・・・・
夜毎、ここに二人の人間が集います。
彼らは、多くの出来事を共に経験してきた二人です。
とはいえ、やはり、彼らが目にした幾枚もの絵画も、
彼らの前に置かれたスピーカーから流れた音楽も、
きっとそれぞれに違う色彩や音色で彼らに届いたのでしょう。
だからこそ、二人はある試みを企てました。
共に目にしたもの、耳にした音楽のことを、
ここで語り合うことが、
本当の意味で共有していた、
そのもの自体にたどり着くための道なのではないかと。
彼らの旅の、はじまりです。