チョウチンアンコウ
生板本番ショーでアクロバットセックスを観た。男優は終始ファックしながら微笑続け、射精することはなかった。
僕はすぐさま外に出て、混沌とする人ごみの前で、笑いながらオナニーショーを演じたが、
射精してしまって、と同時に人々は僕の周りから立ち去っていった。
僕は心身ともに吹きっさらしの空き家になった。ファックしていた男優も、孤独のマントを背負い彼方へ消えた。
空虚から駆け上がれ!ものすごい呼吸の乱れ!誰もいなくなった校舎の屋上まで一気に上りつめ、
にやけた家々の窓から零れる町明かりに向かって、「くそやろー!!おまんこやろー!!」と叫んでみた。
僕は僕の自由に触れて歓喜した。そしてサメザメと泣きながら、昨日より人が恋しくなっていた。そしてどこかで、しまった、と思った。
人を切れ!女を切れ!子供を切れ!友人を切れ!素振りを繰り返す。空中にあるものすべてを断ち切るように、
夢の中であっても素振りを繰り返した。ある朝、刀が折れた。
僕は自分を切り忘れていたことに気がついた。
リンリンリン、自転車をこぎながら、リンリンリン、鳴らしつづけた夏。リンリンリン
リンリンリン、リンリンリン、リンリンリン、リンリンリン、リンリンリン、リンリンリン、あははは。
アブサンをラッパのみしながら、人ごみに蛇行して逆らった。足元が宙を舞うので、チラチラと降り始めた雪の中を空へ、酒を探しに。
たぶん今日はクリスマスだ。
目が覚めると56人の少年に取り囲まれていた。意識が飛ぶ寸前で起こされて、また殴られて、蹴り倒された。
そのあと僕は簀巻きにされて、大阪湾に投げ込まれた。沈んでゆきながら、生板本番ショーの夢をみた。
そうだ!僕は深海でチョウチンアンコウになろう。