「お前の手牌・・・。全部当ててやろうか・・・?」
「俺には、牌が透けて見えるんだよ・・・。」
昭和22年、東京・新宿。
多彩な芸と、超人的な思考・判断力に裏打ちされたその麻雀の腕前から、新宿随一の玄人(バイニン)とも囁かれ始めていた哲也。
麻雀牌背面の竹の目や傷等の特徴を記憶し、背面から牌種を識別する「ガン牌」を操る玄人となっていた印南。
少年時代に浅からぬ因縁を持つ二人は、戦後の復興目覚しい新宿のとある雀荘で再会することとなった。
「ガン牌」を駆使する印南は、新宿界隈の雀荘を渡り歩き、得意のガン牌で勝ちまくっていた。いとも容易く手牌を見破られる不気味さとその風貌から「死神」と呼ばれ、周囲からは忌み嫌われていた。
しかし、人間の能力を明らかに超越した印南のガン牌には裏があった。
ガン牌への集中力を高めるためにヒロポン(覚醒剤の一種)を常用するようになっていたのだ。麻雀に勝つための手段だったはずの薬が、いつしか麻雀を打つ目的へと変わり果てていた。
紆余曲折を経て麻雀で雌雄を決することとなった哲也と印南。しかし、対局においては黒の練り牌を使用する条件(背面に竹の目がなく、ガン牌できないため)が哲也から提示される。
ガン牌ができない黒の練り牌での勝負に、隠しようのない絶望を抱きながら打牌する印南。
しかし、彼のガン牌は死んではいなかった。
困ったときには