岡部伊都子(おかべ・いつこ)
1923年大阪市生まれ。大阪相愛高女病気中退。1954年以来、原稿生活。『抄本・おむすびの味』、『女人無限』など暮らしに息づく日本伝統を、こまやかな筆致で描く。1972年『二十七度線―沖縄に照らされて』以降、戦争・環境破壊・差別への筆はいっそう厳しくなる。百冊近くの著作から精選した『岡部伊都子集』(落合恵子・佐高信編、全5巻、岩波書店、1996年)がある。
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沖縄に着いた時から、ずっと骨沈む道、骨うめく道を歩いている。…不当な戦争で殺され、埋められ、くずれゆく骨の声を聞かずにはいられない。…「人殺しはするな。軍事基地を無くせ、差別を無くせ」と生死を越えて骨たちが叫んでいる。…
この骨の魂(まぶい)を安らかにすることは、本来の風土から自然に育ち創られた美の文化、熱い情愛が、真の自立となって尊ばれなくてはならない。…これまで「骨かなしむ沖縄」と言いつづけてきたが、この「骨かなしむ」は、生きている自分が「無念に殺された骨をかなしんでいる」という思いだった。
しかし今回、はじめてその摩滅の骨から、こちらの方の、成り行きがかなしまれているのではないか、と思い当たった。くだけゆく骨が、まだ生きている骨たちの行方がどうなるかを心配されているという、かなしみの実感。
(『沖縄の骨』より)
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※トピックは自由に立ててください。よろしくお願いします。