チャンパ王国の歴史は、東南アジア沿岸部に興亡した典型的な政治・民俗集団の一つのモデルを提示しており、その歴史的特徴は以下4点に集約されます。
1 政治的条件:ベトナム・カンボジア・中国の近隣強国を相手に約1300年にわたり常に戦闘を交えてきたこと。
2 自然環境:自然の障壁チョンソン(安南)山脈と峠・隘路で外界から遮断され、国土防衛が容易であったこと。
3 経済的条件:この自然環境が逆に肥沃な後背地の欠落となり、国力の充実に限界を与えてしまったこと。
4 交流条件:チャム人は海洋・河川に強い民族であり、東南アジア各地の沿岸や大河川の河畔に小拠点を保持し、森林の物産等の収集と各地への送達に従事していたこと。
そして、最後には1471年に亡国という悲劇があり、その後の末裔たちが祖先の栄光ある歴史を忘却してしまったのです。
チャンパ史再発見は、1887年のE.エイモニエの遺跡調査からはじまります。
チャンパ史の研究は史料的な制約があり、一応1928年のH.マスペロの著作によりまとめられます。
現在は王朝年代記や海岸交易史などの分野から研究が進められています。
チャム美術史研究は、カオ・スアン・フォ教授が指摘されているように、Ph.ステルンが美術様式の体系的な枠組を提示し、J.ボワスリエがその様式論をさらに補正・発展させ、今日に至っております。
チャム美術館作品は、ダナン市のチャンパ美術館、ホーチミン市博物館、パリのギメ美術館で展示されています。
「チャム彫刻/ベトナム社会科学院編」より